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なぜ人は出世すると“残念な上司”に化けるのか? 日本企業をむしばむ「オールド・ボーイズ・ネットワーク」の正体河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/2 ページ)

パーソル総合研究所が「オールド・ボーイズ・ネットワーク」に関する調査を実施しました。調査結果を読み解きながら、令和の会社組織が直面している「見えない病巣」についてあれこれ考えてみます。

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日本企業はなぜ瀕死状態にあるのか

 企業は生き物です。生き続けるには、そこで働く全てのメンバーがいきいきと働いていることが大前提です。そのためには「能力発揮の機会」「意見が言える」「サポートが得られる」といった、いきいきと働くために不可欠なリソース(※)を、全てのメンバーが享受していなくてはなりません。

(※)リソースは、専門用語ではGRRs(Generalized Resistance Resources=汎抵抗資源)と呼ばれ、世の中にあまねく存在するストレッサー(ストレスの原因)の回避、処理に役立つもののこと。ウェルビーイング(個人の権利や自己実現が保障され、身体的、精神的、社会的に良好な状態)を高める役目を担っている。

 ところが、調査結果が示唆するのは、OBNという組織の中心かつ同質性の高い意思決定層によって、働くために不可欠なリソースが配分されないリアルです。「逆らわない」「危険を冒さない」という合言葉の下、上が好む既得権益を守り続けている。本来、組織が持つべき「多様なリソース」を、意図的に特定の身内にだけ配分し続けているという、極めて非生産的な「不都合な事実」が明かされたのです。

 一方で、件の調査結果の解釈には若干の違和感もあります。

  • 女性比率の上昇に伴い「深層の閉鎖性」が高い組織の割合は低下する傾向があるものの、女性管理職比率が5割以上でも、3割強の組織で「深層の閉鎖性」が高い状態が残っている

 としていますが、誰もがジジイ的なものを心の奥底に秘めており、女性でもジジイ化します。女性が男性を排除することだってあるし、そこには性差も年齢差も関係ありません。

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働くために不可欠なリソースが適切に配分されない(提供:ゲッティイメージズ)

強固な「ジジイの壁」 打破するには?

 「心は文化(習慣)によって作られる」と、米国の教育心理学者ジェローム・セイモア・ブルナー博士が説いたように「私」の心は周りの影響を強く受けます。

 例えば、経営層たちの閉鎖性を嘆き「現場の声を反映しよう!」「現場の力がもっと発揮できる組織にしよう!」「ジジイを撲滅しよう!」と意気込んでいた人が、出世した途端、“残念な上司”に成り下がることは往々にしてあります。ミイラ取りがミイラになる。それほどまでに「ジジイの壁」は強固なのです。

 「役職が人を作る」という言葉通り、階層社会の上に行くほど、高い知識やモラルが育まれます。一方で、怠惰、愚行、堕落などのマイナス面も同時に生じ、適応してしまいがちです。

 人間は変化を嫌う性質があり「新たに得る喜び」より「手にしたものを失う」ことに強く反応する心理的バイアスを持っています。「壁」=現状を打破するより、そこの「習慣」を受け入れた方が楽。その結果、OBNという悪習が時代を経て受け継がれてしまうのです。

 では、どうすればいいのか? 日常の会議の中に、あえて異論を唱える役割(デビルズ・アドボケイト)を、仕組みとして作ってしまうのも一案かもしれません。

 経営層の場合はこれがなかなか難しい。自覚できないからこその「ジジイの壁」です。

 できることがあるとするなら、現場を歩きまわって、社員の生の声を聞く。徹底的に聞く。毎日毎日聞く。そして考えてください。そこで交わされたものは「『コミュニケーション』だったかどうか?」と。

 コミュニケーション(communication)の語源は、ラテン語の「共通」を意味する「コミュニス」(communis)に由来します。この言葉から「分かち合う」「共有する」「伝達する」という意味を持つ動詞「コミュニカーレ」(communicare)が生まれ、現代の英単語へと発展しました。つまり、本来のコミュニケーションは「単に情報を伝えること」ではなく「互いの考えや気持ちを分かち合い、共通の認識を持つこと」を意味しているのです。

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河合薫氏のプロフィール:

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 東京大学大学院医学系研究科博士課程修了。千葉大学教育学部を卒業後、全日本空輸に入社。気象予報士としてテレビ朝日系「ニュースステーション」などに出演。その後、東京大学大学院医学系研究科に進学し、現在に至る。

 研究テーマは「人の働き方は環境がつくる」。フィールドワークとして600人超のビジネスマンをインタビュー。著書に『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアシリーズ)など。近著は『残念な職場 53の研究が明かすヤバい真実』(PHP新書)、『面倒くさい女たち』(中公新書ラクレ)、『他人の足を引っぱる男たち』(日経プレミアシリーズ)、『定年後からの孤独入門』(SB新書)、『コロナショックと昭和おじさん社会』(日経プレミアシリーズ)『THE HOPE 50歳はどこへ消えた? 半径3メートルの幸福論』(プレジデント社)、『40歳で何者にもなれなかったぼくらはどう生きるか - 中年以降のキャリア論 -』(ワニブックスPLUS新書)、『働かないニッポン』 (日経プレミアシリーズ) 、『伝えてスッキリ! 魔法の言葉』(きずな出版)など。

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