「今日の注文はフライパン1枚だけ」 毎月「500万円の赤字」だった町工場が、年商6.8億円へV字回復できたワケ(1/4 ページ)
毎月500万円の赤字を抱え「1日の注文がフライパン1枚だけ」という日もあった町工場が、世界22カ国で製品を販売するブランドへと成長した。藤田金属のV字回復を支えた経営改革に迫る。
「当時は、1日の注文がフライパン1枚だけの日も。することがないから、丸一日、工場の掃除をしていた時もありました。社員の給料を払うのもお金をかき集めて、売掛金が入ってこなければ払えないような状態でした」
1951年創業、大阪府八尾市でフライパンをはじめとする金属製品を手掛ける町工場・藤田金属では、かつて毎月500万円の赤字を抱えるといった厳しい時代があった。
年間わずか4733個しか売れていなかった同社の鉄フライパンは、ある出来事をきっかけに“爆売れ”。2025年には年間28万217個を販売するまでに大きく成長した。
売上高は6億7000万〜6億8000万円規模へと拡大し、製品は世界的なデザイン賞である「Red Dot Award 2021」「iF design award 2021」をはじめとする国内外のさまざまな賞を受賞。今や世界22カ国で愛されるブランドを確立している。
藤田金属のV字回復は、単なるヒット商品の出現によるものではない。商品力の見極めや、工場を通したブランド力の育成、テクノロジーを活用した「売って終わりにしない」仕組み化など、ヒットに頼らない経営戦略の結果だ。
中小企業がさらされがちな価格競争から脱却し、自社の強みを生かしたものづくりへ――。代表取締役社長の藤田盛一郎氏に、V字回復までの道のりを聞いた。
毎月赤字500万円の町工場を救った、最初の決断
かつての藤田金属は、ホームセンターや量販店向けの製品製造が中心だった。しかし、待っていたのは過酷な価格競争だ。
「売れる商品を作っても、半年後には模倣品がより安い価格で出てくる。このままの事業だけをやっていたら確実に倒れる、という状態でした。2010年頃は毎月赤字で、従業員の給与を払うためにお金をかき集めるような、切実な苦しさがありました」――藤田社長はこう振り返る。
仕事がない日は丸一日掃除をし、機械のペンキを塗り直す日々。従業員数は8人に減っていた。
転機は、通販事業者から「鉄のフライパンを作ってほしい」と依頼が入ったことだった。同社は過去に鉄フライパンを扱っていたが、フッ素コーティングフライパンの台頭により一度廃番にし、約35年間、鉄製調理器具は製造していなかった。
藁をも掴む思いで引き受けたこの案件をきっかけに、鉄製調理器具の製造を復活。売り先と製品そのものの方向転換を決意した。
その後、同社はカスタマイズフライパン「フライパン物語」を立ち上げる。素材、サイズ、持ち手、色などを自由に選べる仕組みはBtoCで話題となった。当時、世の中で鉄製調理器具が再注目される流れがあったことも追い風となった。
しかし、量産に慣れた現場では1個ずつ作るのは困難で、注文が滞留し、現場がパンクする危機に直面した。そこで藤田社長が打った次の一手が「BtoB向けのオリジナルフライパン」(半OEM)への舵切りだった。
同社の半OEMというビジネスモデルは、他社や個人のオリジナル商品を小ロットから受託製造する仕組みだ。個別の依頼に沿って製造するため、不当な値切り交渉が発生せず、適正な価格と高い利益率を確保したまま自社のラインを効率よく稼働させられる。
半OEMを開始したところ、テレビショッピングでの1万セット受注をはじめ、大手食品メーカーの景品、YouTuberやインフルエンサーのオリジナルグッズとしての依頼などが集まった。
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