ヤマダ×エディオン「2.5兆円」統合で、あなたの街から「家電量販店を選ぶ自由」が消える? 公取委の判断に注目(1/3 ページ)
今回のヤマダデンキとエディオンの統合は、ベスト電器の事例をはるかに上回る規模だ。公正取引委員会による「企業結合審査」の結果が、統合の成否を左右する可能性がある。店舗網の再編以上に大きなハードルになりそうだ。
著者紹介:若杉優貴(わかすぎ ゆうき)/都市商業研究所
都市商業ライター。大分県別府市出身。
熊本大学・広島大学大学院を経て、久留米大学大学院在籍時にまちづくり・商業研究団体「都市商業研究所」に参画。
大型店や商店街でのトレンドを中心に、台湾・アニメ・アイドルなど多様な分野での執筆を行いつつ2021年に博士学位を取得。専攻は商業地理学、趣味は地方百貨店と商店街めぐり。
アイコンの似顔絵は歌手・アーティストの三原海さんに描いていただきました。
2027年秋の経営統合に向けて動き始めた、家電量販店大手の「ヤマダデンキ」と「エディオン」。この大統合が実現すれば、連結売上高は約2.5兆円、店舗数はフランチャイズを含め約1万店舗規模となる。名実ともに、世界有数の家電を中心とした大型流通グループが誕生する。
両社は西日本を中心に商圏が重複しており、統合後には店舗や物流網が見直される可能性が高い。前編では、ヤマダデンキとエディオンの経営統合によって避けられない店舗網の再編について取り上げた。
2012年にヤマダデンキ(当時は「ヤマダ電機」)が、かつての業界最大手だった「ベスト電器」を子会社化した際、公正取引委員会は「家電量販店の競争は地域ごとに行われる」として独占禁止法に基づく企業結合審査を実施した。そして、各店舗の商圏を半径10キロ程度と設定し、全国41地域で商圏が重複すると認定した。
そのうち埼玉県秩父地区、高知県宿毛・四万十地区(後にケーズデンキの新規出店により問題解消)、福岡県甘木(朝倉市)地区、佐賀県唐津地区、長崎県大村・諫早地区、長崎県島原地区、熊本県人吉地区、鹿児島県種子島地区(一部はフランチャイズを含む)については「大手家電量販店がヤマダデンキとベスト電器のみとなり、競争が著しく制限される恐れがある」と判断された。
その結果、ヤマダデンキとベスト電器のいずれか1店舗を第三者へ譲渡することが求められ、計7店舗を競合相手である「エディオン」に譲渡・継承することとなった。
ヤマダデンキ・ベスト電器側も、立地や建物の状況などさまざまな条件を考慮して、統合後に使い勝手が良い店舗を残したのであろう。実際、エディオンが譲渡を受けた建物に居抜き出店したものの、数年後に閉店(新築移転を含む)したケースが多いことからも明らかだ。中には、エディオン閉店後に再びベスト電器へと戻った店舗もある。
長崎県島原市では、ベスト電器の店舗がエディオンへ譲渡されたのちに閉店。結果として、市内の家電量販店はヤマダデンキ1店のみとなった。
エディオンに譲渡する直前の「ベスト電器島原店」。中心市街地で唯一の大手家電量販店だったが、公取委の指導により譲渡したのち結局閉店。空き店舗となっている。市内唯一の大手家電量販店であるヤマダデンキまでは約3キロもある(写真:若杉優貴)
今回のヤマダデンキとエディオンの統合は、ベスト電器の事例をはるかに上回る規模だ。公正取引委員会が地域ごとの市場シェアや商品仕入れに関する支配力などを、より厳しくチェックする可能性がある。
特に、エディオンが地盤とする西日本は、現在ヤマダデンキグループの店舗ブランドとなったかつての大手「ベスト電器」や「マツヤデンキ/CaDen」の地盤でもある。これらの2ブランドの店舗、もしくはそこからヤマダデンキへと転換した店舗も非常に多い。
そのため、西日本の主要都市(人口10万人以上)だけを見ても、2026年時点で「大手家電量販店がヤマダ(ベスト電器、マツヤデンキ含む)とエディオンの2グループしか存在しない(FC含む)」都市は、鳥取県米子市、島根県松江市、広島県呉市、山口県下関市、山口市、山口県防府市、福岡県大野城市、福岡県筑紫野市、長崎市、大分県別府市、宮崎県都城市、沖縄県浦添市など数多い。
その代表例といえるのが、松江市だ。
消費者の選択肢がなくなるリスクも
松江市は2000年代にベスト電器、ヤマダデンキ、マツヤデンキ、デオデオ、100満ボルトの大手家電量販店5社が出店し、激しい競争を繰り広げていた。競争が激化する中、2008年に開店したコジマは、わずか6年後の2014年に撤退している。
その後の企業再編によって、前者3社はヤマダグループへ、後者2社はエディオングループへ集約された。さらに今後ヤマダとエディオンの統合が進めば、かつて5社が競争していた市場が、企業再編の積み重ねによって実質的に1グループへと集約されることになる。
また、隠岐諸島、五島列島、奄美大島、種子島、石垣島、宮古島などの島しょ部でも「大手家電量販店は、ベスト電器を含むヤマダとエディオンの2グループのみ(FC含む)」という地域が少なくない。こうした、他商圏へ買い物に行きづらい地域で消費者の選択肢がなくなることは、特に大きな論点となりそうだ。
仮に、今回もベスト電器を統合した際と同様の基準で店舗譲渡が求められるとすれば、その対象店舗は相当数に上る可能性がある。結果として、第三者の家電量販店チェーンが思わぬ「漁夫の利」を得る展開も考えられるだろう。また、先述した島原市のように、居抜き店舗の使いづらさから「結局1社のみとなってしまう」「大型空き店舗が生まれる」というリスクもある。
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