紀伊國屋書店はなぜ「本が売れない時代」に独り勝ちできたのか? 5期連続増収増益を支える戦略:長浜淳之介のトレンドアンテナ(6/6 ページ)
書店の閉店が相次いでいる中、唯一好調を維持しているのが紀伊國屋書店だ。その理由は、一体何なのか?
利益率を高める取り組みも実施
紀伊國屋書店は2023年10月、CCC、日販と共同で、書店が出版社から直接仕入れる「ブックセラーズ&カンパニー」を設立し、書店主導による出版流通の改革に取り組んでいる。
従来の出版流通では、出版社と書店の間に取次が入り、書籍や雑誌の仕入れや流通を担ってきた。書店には、売れ残った商品を取次を介して出版社に返品できる委託販売制度があり、在庫リスクを抑えられるメリットがあった。
一方、近年は出版社がコミックを電子書籍として販売するなど、書店はおろか取次も介さない販売方法が定着してきた。スマホの普及などを背景に雑誌を読む人も減り、消費者の時間はデジタルコンテンツや動画へと流れている。
紀伊國屋書店によると、「出版社から直接書籍を仕入れることで、取次を経由するよりも利益率が高くなるのがメリット。意思疎通や販売促進の取り組みが強化しやすいという側面もある」と話す。
出版社から直接仕入れて利益率を高めるとともに、出版社との連携を深めて販売力を高めることで、さらなる成長を目指しているのである。
B2CとB2Bのバランスが成長のカギ
このように紀伊國屋書店は、書店というB2Cのビジネス、法人外商というB2Bのビジネス、日本文化の発信基地としての海外店をそれぞれ強化しながら、出版社との直取引を通じて販売力そのものを高める取り組みも進めている。
本が売れず、書店の閉店が相次ぐ慢性的な出版不況の中で、同社が独り勝ちを続ける背景には、こうした複数の事業を組み合わせた綿密な戦略があるのだ。
著者プロフィール
長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)
兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。
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