「AI、結局使えないじゃん」問題 セールスフォースが431万件対応で導いた正解(2/5 ページ)
AIエージェントの導入が進む一方、全社的な利益改善に至る企業は4割弱にとどまる。そんな「AI導入の壁」を破り、自社実践(カスタマーゼロ)で431万件の顧客対応を完了、商談数を4〜5割増加させたのがセールスフォースだ。同社はなぜ明快なROIを生み出せるのか。データやKPIが整う領域の選定や「シンプルで高頻度な業務」から任せる鉄則など、AI投資を成果につなげる運用の方法論を田中遼太COOに聞いた。
431万件を自律対応 なぜ日本語だけ「人への引き継ぎ」が増える?
――営業活動以外でも、こうしたエージェントを活用しているのでしょうか。
はい。ここまでは営業活動の入り口としての活用が中心でしたが、既存顧客へのサポートという観点でも活用が進んでいます。「help.salesforce.com」というサポートサイトがあり、これは英語表示が基本ですが、日本語にもローカライズされています。従来のカスタマーサポートは電話やメールが中心でしたが、ここではAIエージェントが直接対応しています。
対応件数は2024年10月の提供開始から、これまでに431万件の会話に対応しています。サイト上では、直近でどれくらいの件数に対応しているかをサイト訪問者が見られるようになっていて、週当たりでも相当数の会話が発生しています。そのうち多くをエージェント自身が完結させており、残りの一部は、最初はエージェントが対応したものの途中で人にエスカレーション(バトンタッチ)されたケースや、会話が途中で終了したケースなどに分かれます。
これは言語によっても傾向が異なり、日本語での対応は、英語に比べるとエージェントのみで完結する割合がやや低く、人へのエスカレーションがやや多いという特徴が見えています。この背景を、社内の現場とカスタマーゼロの担当者が一緒に議論しているところです。
日本語化しているコンテンツの量が十分でないために回答し切れず、人に引き継がれているのか、あるいは人に引き継いだ結果として顧客満足度が上がっているのかなど、要因を切り分けた上で、さらに改善していくための取り組みを社内で進めています。
――最初から人による対応を求められた場合と、途中でエージェントから人に切り替わった場合とでは、扱いが分かれるのでしょうか。
分かれます。最初にユーザーがエージェントに問い合わせた時点で、最初から「人に対応してほしい」と要望されるケースが一つです。もう一つは、最初はエージェントが対応していたものの、途中で「エージェントでは対応しきれないので人にお願いしたい」となるケースです。
いずれにしても、フロント側の営業活動とサポート側の顧客対応の両方を通じての実践が、当社におけるトップダウンでの組織改革・営業改革、そして経営改革の事例になります。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
AIが破壊するIT業界の“人月商売” 「SIerの死」後に“生き残る者”の正体
米Anthropicの機能発表で約8300億ドルの時価総額が消し飛んだ「AIショック」。画面の使いやすさで稼いできたSaaSや、時間と人数を積み上げるSIerの「人月商売」が崩壊の危機に直面している。だが、業界ルールにのっとった複雑な計算(ビジネスロジック)を握る企業は依然として強い。真の構造変化はどこで起きているのか。AIに仕事を任せるための「安全管理」の難所と、「現場派遣型エンジニア」(FDE)の正体に迫る。
NEC森田社長が語る「脱・人月商売」の行方 組織の壁を破るAI人材育成法
NECはAI時代に、いかにして稼いでいくのか。「BluStellar」(ブルーステラ)の収益構造、防衛・安全保障や海底ケーブルといった注力領域の戦略について、森田隆之社長がグループインタビューで語った。
なぜIT多重下請けは起こるのか? 日米“外注構造”とDXの違いから考える
日米のIT業界の違いは何か。DXなど技術部門への考え方の違いについて、SHIFTの技術顧問を務める川口耕介氏とクレディセゾンの小野和俊CTOに聞いた。
製造現場の「AIアレルギー」をどう払拭? 日立・新卒デジタル人材「3カ月奮闘記」
日立製作所は、AIやデータ解析の専門スキルを持つ新人データサイエンティストを、製造現場へと送り込んでいる。いかにして現場の「AIアレルギー」を払拭し、現場とのコミュニケーションを通じて業務時間を短縮する生成AIツールを定着させたのか。実習に参加した若手女性データサイエンティストの禹周賢(ウ・ジュヒョン)さん(デジタルアナリティクス推進部)と、受け入れ先の現場担当者にインタビューした。
「会議はまず笑わせろ」――28万人企業・日立副社長が明かす「逃げない」リーダー論
かつての失敗で落ち込んだ時、「命までは取られない」という先輩の言葉に救われた日立製作所の阿部淳副社。知られざる過去の経験から、副社長として背負うプレッシャーの正体まで。技術の日立を支える人間・阿部淳のリーダー論に迫る。
日立・阿部副社長に聞く“最高益”更新の舞台裏 巨額赤字から組織を復活させた変革とは?
グローバル市場が投資に慎重になる逆風下で、なぜ日立は過去最高益を達成できたのか。米NVIDIAや米OpenAIといった世界的リーダーとも即断即決で提携を結ぶスピード感は、巨大企業・日立のどこから生まれているのか。阿部淳副社長に、激動の2025年を振り返ってもらいつつ、組織変革の手応えを聞いた。
日立が狙うフィジカルAI「20兆円市場」 Google Cloudとの連携で描く勝ち筋
日立製作所が、「フィジカルAI」を成長戦略の柱に据えようとしている。AI研究の蓄積を武器に「世界トップのフィジカルAIの使い手を目指す」方針だ。日立の戦略を追った。
YouTuber、コンサル、ビール醸造 日立の社員はどんな副業をしているのか?
日立の社員は、どのような副業をしているのだろうか? 副業推進と合わせて、利益相反や情報漏洩(ろうえい)を防ぐためのルールも整えた日立。副業制度の利用実態と、それを支えるルール整備について、人事担当者にインタビューした。
日立が踏み出した「副業解禁」 “試行1年”で磨き上げた制度設計の「4つの承認基準」とは?
2024年10月に、社外副業制度を本格導入した日立製作所。そこに至るまでには周到な準備があった。全従業員を対象としながら、いかにして「本業への支障」や「情報漏えい」といった大企業特有のリスクを管理しているのか。本格導入までのプロセスと、日立独自の4つの承認基準について聞いた。
