「Netflix」「U-NEXT」を追う4位「ディズニープラス」 “会員数争い”ではない独自の勝ち筋:ディズニーの戦略に迫る(2/2 ページ)
国内SVOD市場でシェア4位(8.4%)のディズニープラスは、王者Netflixらとの会員数争いに終始せず、映画・パーク・物販・イベントを横断する「ディズニー経済圏」のハブとして動画配信を再定義している。IP軸でリアルとデジタルを回遊させ顧客生涯価値(LTV)を最大化する独自の戦略を展開。「THE SEVEN」や「TVING」との協業、他社バンドル展開など柔軟なパートナーシップで狙う持続的成長の全貌に迫る。
日本市場は最重要拠点 「ローカライゼーション」の作法
同社は、日本と韓国を、アジア太平洋地域における二大ストーリーテリング拠点(魅力的な物語を生み出し、発信する基地)と位置付けている。ザメコウスキー氏は「日本にはアニメだけでなく実写作品にも豊かな創造性がある」と評価し、そのケーススタディーとして、日本発のオリジナル・ローカルコンテンツ『ガンニバル』を挙げた。同作品のシーズン2は、日本のディズニープラス配信開始から過去最速で100万時間視聴を達成するほどのヒット作品だ。
日本のアニメは、すでに世界へ輸出されている。同氏は「ディズニープラスを通じて日本の実写作品も世界へ届けたい」という。海外の人気IPを日本に持ち込むだけでなく、日本発のコンテンツを世界へ展開するプラットフォームとしてディズニープラスを活用したい考えだ。ディズニープラスはローンチ以降、APAC地域で155本のオリジナル作品を制作してきた。
キャリア決済の導入や価格設定など支払い面でのローカライズも意識している。コンテンツとサービスの双方を現地市場に合わせているのだ。この姿勢は、海外企業が日本市場で事業を展開する上でも参考になる。
今後はスポーツも重要な柱の一つとして育てていきたい考えだ。ESPNは米国のほか、30年の実績を持つ豪州・ニュージーランドでも高い人気を誇る。一方、日本ではまだ十分に知られたブランドではないのが現実だ。日本、韓国、香港、台湾でも展開を始めたものの、現状のコンテンツは米国スポーツ、特に大学スポーツが中心となっている。
ザメコウスキー氏は「日本にはアニメだけでなく実写作品にも豊かな創造性がある」と評価。日本発のオリジナル・ローカルコンテンツ『ガンニバル』を成功事例に挙げた((C) 2025 Disney and its related entities)
顧客接点を広げるためのパートナーシップ戦略
日本の制作会社や放送局との協業について尋ねると、ザメコウスキー氏はまずパートナーシップの全体像をこう整理する。
「パートナーシップには2種類あります。1つはコンテンツパートナーシップで、良い例が『THE SEVEN』との提携です。この提携については非常に期待しています。ディズニープラスを日本の視聴者にとって、より身近なものにする助けになるからです」
THE SEVENとの提携は、実写のローカルコンテンツ強化として位置付ける。THE SEVENはこれまでに『今際の国のアリス』や『幽☆遊☆白書』などを手掛けてきた。今回の提携は、実写のローカルコンテンツ強化として位置付けており、今後、日本発の実写オリジナル作品を制作も計画している。
また、同じくコンテンツパートナーシップの例として挙げられたのが、TVINGとの提携だ。TVINGが有する人気の韓国ドラマは「TVINGコレクション」 として、ディズニープラスの専用枠で、現在放送中の作品とライブラリー作品を組み合わせて提供している。自社で一からIPを育てるのではなく、他社のコンテンツをそのまま呼び込む発想は、フルラインアップを自前でそろえることの難しさを踏まえた現実的な選択だ。
コンテンツパートナーシップは、THE SEVENやTVINGのような制作・配信元との連携にとどまらない。ザメコウスキー氏はHulu Japan、DMM、ABEMAといった国内の有力SVODとの提携にも触れ「基本的には2つのサービス間でバンドルをすることで、より幅広い顧客層をターゲットにしています」と説明した。
単独のサービスでは届きにくい顧客層にも、バンドル提供を通じてリーチを広げる狙いだ。競合とも見なされ得るサービスとタッグを組むことをためらわない姿勢は、市場全体でのパイの奪い合いよりも、自社の顧客接点をどう広げるかを優先する発想だといえる。
2つ目の軸が、配信パートナーシップだ。ザメコウスキー氏はNTTドコモやケーブルテレビ最大手のJCOMとの提携を例に挙げ「そうしたパートナーは、ディズニープラスのリーチ拡大に貢献してくれています」と話す。
コンテンツそのものを充実させるコンテンツパートナーシップと、届ける経路を広げる配信パートナーシップ。この2つを使い分け、両輪として組み合わせている点は、コンテンツ事業者にとって、外部連携の設計の在り方として参考になる。
ザメコウスキー氏へのインタビューから見えてきたのは、他社との加入者数争いに終始するのではなく「独自のレース」を貫くというディズニーの経営姿勢だ。ディズニープラスは単なる動画配信サービスではない。映画やテーマパーク、スポーツ、商品など、ディズニー全体のエコシステムをつなぐデジタルの中心地だ。IPを軸にリアルとデジタルを連動させ、ファンとの長期的な関係を築きながら、グループ全体の価値を高める。
「独自のレース」とは、ディズニーならではの強みを生かして持続的な成長を目指す戦略といえるだろう。
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