目新しいものだけがDXじゃない 三井倉庫HD、DXに投じた200億円の“意外な配分”(1/3 ページ)
「DX銘柄」に初めて選ばれた三井倉庫ホールディングス。同社はどのような考えのもとで、DXを進めてきたのか。物流業界ならではのDXの難しさや青写真について、上級執行役員・情報システム担当の佐野直人氏に聞いた。
物流はバトンリレーだ。「1社のDX」から「業界全体のトランスフォーメーション」へ移行していく必要がある──こう訴えるのは、総合物流大手の三井倉庫ホールディングスのIT戦略を率いてきた、上級執行役員・情報システム担当の佐野直人氏だ。
同社は2026年4月、経済産業省などがDXの取り組みで優れた成果を挙げた企業を選出する「DX銘柄」に初めて選ばれた。経営戦略とDX戦略の一体化、社内効率化にとどまらない社会課題解決への取り組み、経営トップのコミットメントなどが評価された。
初選出について、佐野氏は「2021年から段階的に取り組んだ結果で、最初から順風満帆だったわけではない。形になってきたのはここ2年だ」と打ち明ける。5年間でDXに投じた予算は約200億円。この間、サイバーセキュリティの対策など、対策を打つべき項目が増え、計画は変更を重ねたという。成果に結び付けるための投資配分にも頭をひねった。
同社はどのような考えのもとで、DXを進めてきたのか。そしてこれからの物流業界に必要なDXの在り方とは。IT部門が経営と協働して取り組んできたDXの5年の軌跡を、佐野氏に聞いた。
5年間でDXに投じた予算は約200億円 大半を投じた領域は?
──DX銘柄に初選出されました。
DX銘柄は急に取れたものではありません。2022年に経済産業省が定めるDX認定制度に基づく「DX認定事業者」に認定され、その後、2025年には「DX注目企業」にも選ばれました。少しずつ積み上げてきた取り組みが、今回評価されたという認識です。
特に評価されたのは、経営戦略とDX戦略が一体になっている点だと思っています。最初は別々に動いていたものが、中期経営計画の中で一つの方向性として整理されました。また、取り組みだけでなく、それが経営にどのような効果を生んでいるかも統合報告書などで発信してきました。
もう一つは、社内の効率化だけではなく、自動運転のプロジェクトやコンテナターミナルの効率化など、社会課題の解決につながる取り組みにも投資してきたことです。さらに、社長や経営陣が継続的に関わり、AI推進室など実効性のある体制を整えてきたことも評価につながったと考えています。
──5年間でDXに投じた予算は約200億円です。どのように投資配分を決めてきたのでしょうか。
DXというと、新しいことへの投資が注目されますが、実際には古いシステムを新しくするモダナイゼーションも非常に重要です。私たちも投資のかなりの部分をレガシーシステムの刷新に充てています。
ただ、単に古いシステムを新しいシステムへ置き換えるだけがDXではありません。業務そのものをどう変えるのかがセットになります。例えば、紙の申請をデジタル化したり、人が目で確認していたコンテナのダメージチェックをカメラに置き換えたりといった改革を同時に進めています。
一方で、5年前に立てた計画をそのまま実行してきたわけではありません。
特に、サイバーセキュリティは当初想定していた以上に重要性が高まりましたし、AIもこの数年で急速に普及しました。そうした変化を受けて、投資配分も機動的に見直しています。
2026年度からはDX投資を独自に「挑戦型」「成長貢献型」「必要改善型」「運用型」「リスク型」の5つに分類し、最適なバランスでリソースを配分しています。計画通りに進まなかったというより、時代に合わせて変えてきたという方が近いですね。
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