「目玉クリップ」を筆につないだ 創業310年の老舗が、なぜ“左利き用の筆”をつくったのか:インタビュー劇場(不定期公演)(1/5 ページ)
「書道は右手で書くもの」という考え方は、いまも残っている。そんな中、創業300年を超える老舗筆メーカーが、左利き用の筆を開発した。なぜ今までなかったのか。開発のきっかけから、実際に左手で書いてみて分かったことまで聞いた。
駅の改札、エレベータのボタン、PCのエンターキー。これらに共通することは、何か。
「うーん、何だろう? 何も浮かばないなあ」と思った人は、ひょっとしたら右利きかもしれない。というのも、これらはいずれも、右利きの人が使いやすいように設計されているからだ。「左利きの人は人口の約1割」といわれているが、それに比べると世の中には右利きの人向けのモノばかりがあふれている。
例えば、書道の筆もその一つである。学校では「自分の書きやすいように書いてもいいよ」と声をかける先生もいるそうだ。とはいえ、左利きの人にとって、筆を使ってきれいに文字を書くのは簡単なことではない。
書道では、左手で筆を持つと、筆先や書いた線が手に隠れて見えにくい。とめ・はね・はらいなど、筆を思い通りに動かすのも難しい。横線やはらいでは筆を押すような動きになり、筆圧の調整にも苦労する。さらに、無理な持ち方になったり、姿勢が崩れたりすることもある。こうした左利き特有の「書きにくさ」を解消する製品が登場した。
老舗筆メーカー「あかしや」(奈良市)が開発した「書写楽LEFTY」(レフティー、細筆880円、太筆1320円)である。
この製品の大きな特徴は、軸の2カ所が折れ曲がっていることだ。左手で持っても、右手で持ったときと同じような角度で筆先が向くように設計している。そのため、筆先や書いている線を確認しながら筆を運べるというわけだ。
それにしても、気になることがいくつかある。あかしやの創業は1716年で、今年で310年を迎える。江戸時代の中期から続く老舗が、なぜいまになって左利き用の筆を開発したのか。しかも「左利き用の筆は、これまで世の中になかった」(同社)という。
前例のない筆を、どうやって開発したのか。製品開発に携わった、毛筆生産技術担当(部長)の中井慎也さんに話を聞いた。聞き手は、ITmedia ビジネスオンライン編集部の土肥義則。
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