「月90時間残業」「ミスで数千万円規模の被害」 建設現場を悩ます「工事写真の整理」はAIで解決できるのか(3/3 ページ)
「工事写真は手作業が当たり前」。長年放置されてきた月90時間もの泥臭い写真整理業務を、大幅に時間短縮したプロダクトがある。建設業界の不条理に挑んだ元・現場監督の取り組みを取材した。
AI読み取りだからこそ、工事黒板の文字は人間が正確に書く
一方で、デジタル化が進む中で避けて通れないのが「データ改ざん問題」だ。公共工事をはじめ厳格なエビデンスが求められる現場では、画像の加工や偽装を防ぐ「信ぴょう性確認」(改ざん検知機能)への対応が必須となる。「Cheez」でも撮影データの暗号化やハッシュ値による改ざん検知ロジックを備え、法的証拠力を担保する仕組みを構築している。
ただし、AIが高度化し、作業を自動化できたとしても、運用の根本で人間の注意が求められる部分がある。「黒板の記入」だ。
AIは、黒板に書かれたテキストを忠実に読み取る。だからこそ、現場で設置する黒板(物理黒板、電子小黒板問わず)に書かれた文字自体に誤字脱字や数値の間違いがあれば、誤った情報のまま自動処理されてしまう。たとえ高度なAIであっても、元の記入ミスまで正しい内容に書き換えることはできない。
「入力の手間を極限まで減らしたからこそ、最初の黒板に正しい情報を正確に書くことだけは現場の重要なルールになります。手入力の機会を減らしつつも、この起点となる記入の正確性を担保することは、デジタル化の恩恵を享受するために不可欠です」(森川氏)
400件超の反響 「人間らしい働き方」を取り戻す
「Cheez」への反響は2025年5月の正式ローンチ直後から大きく、口コミ中心の展開でありながら問い合わせ件数は400件を突破。受注企業も20社を超えている。
注目される最大の理由は、圧倒的な定量効果だ。従来、1つの現場で90時間以上かかっていた写真台帳の作業が大幅に短縮。20人規模の事業所においては、年間で約2880万円もの人件費や残業代の削減効果を生み出す試算だ。
さらに大きな変化は、現場監督たちの働き方そのものに表れる。深夜におよぶ残業や徹夜から解放され、本来注力すべき現場の安全管理や品質管理に集中できるようになり、QOL(クオリティ・オブ・ライフ)が向上したという声が相次いでいるそうだ。
「日本のインフラを支える現場監督が、写真の整理作業だけで忙殺される現状を変えたい」
現場の課題に徹底してフォーカスして誕生したアプリが、建設業界の長年の課題を解決し、職人たちの「人間らしい働き方」を取り戻そうとしている。
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