Anthropicへ宣戦布告 OpenAI「Astra」、PC自動操作と「AGI到達」の衝撃
米OpenAIは新型モデル「GPT-6 Astra」を発表した。人間と同じ画面を直接操作するPC自動化や各種ベンチマークで最高性能を記録し、グロッグ・ブロックマン社長は「AGI時代へ到達した」と宣言した。価格は前世代の2倍に設定。一方でサイバー攻撃能力が最高危険度「Critical」に達したため高度機能は限定提供とし、思考の監視逃れ能力が高まった点への懸念も残る。競合Anthropic追撃に向け実戦投入が進む。
米OpenAIは9月3日(米国時間)、新型AIモデル「GPT-6 Astra」を発表した。同社は「世界で最も賢く、最も整合したモデル」と位置付け、PC操作、ソフトウェア開発、サイバーセキュリティ、科学研究、専門的な知識労働で最高水準の性能を持つとしている。同社の安全性評価枠組み「Preparedness Framework」において、サイバー能力が最高区分「Critical」(重大)に達した初のモデルでもある。
提供は段階的だ。まずサイバー防御向けの審査制プログラム「Daybreak」に参加する企業から始め、対話型AI「ChatGPT」のPlus、Pro、Business、Enterpriseの各プランとAPI、米Amazon Web Services(AWS)などのクラウド経由でも提供している。API価格は入力100万トークンあたり10ドル、出力100万トークンあたり50ドルで、前世代「GPT-5.6 Sol」の2倍に設定した。
人間と同じ画面でPC操作 「タスク単価」で評価するエージェント革命
性能面では、数学の難問集「FrontierMath Tier 4 v2」で97.6%、汎用知能の指標「ARC-AGI-3」で99.9%、脆弱性攻撃能力を測る「ExploitBench」で100%の正答を記録した。
最大の目玉はPC操作能力だ。同社はPC操作の指標「OSWorld 2.0」の一部で、72.6%を1タスク平均約40分で達成したと発表。前世代のSolは、65.7%で約75分だった。オンライン申し込み書の記入、顧客管理システムの更新、表計算、Webサイトの作成とテスト、設計ソフトの操作まで、人間と同じ画面を通じてこなすという。
OpenAIのグレッグ・ブロックマン(Greg Brockman)社長は記者向け説明会で「この巨大な時代を通じて、私たちは人々がコネクターを書き、既存ツールへの接続を苦労して構築することに、ボトルネックを抱えてきた」と述べ、人間向けに作られた画面をそのまま操作できるAIエージェントがこの問題を解消すると強調した。トークン単価で比較する時代は終わり「タスク当たりの価格」で評価すべきだとも語った。
Stargateで「GPU10万基」投入 AIがAIを訓練する巨大エコシステム
訓練規模も過去最大だ。米テキサス州のデータセンター「Stargate」で10万基超のGPU(画像処理半導体)を使い、既存のモデルが新モデルの訓練を監督する手法を、本格的に採用した初のモデルとなった。研究者のエイダン・クラーク(Aidan Clark)氏は「SolからAstraへの能力の伸びは、それ以前のモデルからSolへの伸びより大きい」と説明した。
一方、安全面の懸念も大きい。最高区分の「Critical」(重大)とは、適切なツールとアクセス権があれば、人間が逐一指示しなくても、厳重に守られたシステムから未知の脆弱性を見つけ出し、新たな攻撃手法を開発できる水準を意味する。このためOpenAIは、最も高度なサイバー能力の提供先を、重要インフラを守る「信頼できる防御側」の組織に限定。外部提供でも、モデルの行動を常時監視する体制を敷く。
監視を逃れる「思考の制御」 Anthropic「Claude Mythos」追撃の舞台裏
システムカードには気になる記述もある。Astraは前世代より「思考の連鎖」(CoT)を自在に制御できるようになり、監視を逃れる能力が高まった。750〜1250トークンの推論において、指示通りに思考の内容を制御できた割合は、Solの16.1%に対しAstraは60.9%に達した。
ヤクブ・パチョツキ(Jakub Pachocki)最高科学責任者は「知能の進歩はアライメント(安全性・倫理観の一致)の進歩を保証しない」と述べ、監視能力の低下が一定の限度を超えれば、確信が持てるまで規模拡大を停止する方針を示した。
OpenAIは8月、AIエージェント群による米Hugging Face社への侵入事件を受け、Astraを含む一部の訓練を約2週間停止し、安全対策を強化した上で公開に踏み切った。
「AGI(汎用人工知能)に達したか?」との問いにブロックマン氏は「個人的には、もう到達したと思う」と答え、説明会を「AGI時代へようこそ」という言葉で締めくくった。今回の発表は、競合の米Anthropicが最新モデル「Claude Fable 5.1」「Claude Mythos 5.1」を公開した数日後のことだった。
本記事は、エクサウィザーズが運営するAI新聞内の記事「米OpenAIがGPT-6 Astra発表『AGI時代へようこそ』」(2026年9月4日掲載)を、ITmedia ビジネスオンライン編集部で一部編集の上、転載したものです。
著者プロフィール
湯川鶴章
AIスタートアップのエクサウィザーズ AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。17年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(15年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(07年)、『ネットは新聞を殺すのか』(03年)などがある。
© エクサウィザーズ AI新聞
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