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アットホーム、Copilot利用率が2カ月で1.5倍に 「元営業マネジャー」の推進役が仕掛けた秘策とは?(2/2 ページ)

不動産情報サービスのアットホームが社員の生成AI利用率を加速させている。週3日以上生成AIを利用する社員の割合を、3月時点の46%から5月末には70%へ、2カ月で1.5倍に引き上げた。「AI活用プロジェクト」を率いる“推進役”に秘訣を聞いた。

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企画のブラッシュアップ AIと人の両方に「壁打ち」

 立ち上げ期にはプロジェクトのマスコットキャラクターを生成AIで創るコンテストも実施。188件の応募があり「いいね」による投票は合計3140件に上るなど、社内での注目度も高かった。

  「人に動いてもらうには、何が相手の動機になるのかを考えます。参加が自分のメリットになる場合もあれば、みんながやっているのに自分はやっていないという危機感が動機になる場合もある。その中でも『楽しい』は重要な動機のひとつです。動機に働きかけて自分ごとにしてもらい、さらに楽しくするには?  と考えながらやっています」


コンテストで選ばれたマスコットキャラクターと生成プロンプト

 企画そのものも、他の社員や生成AIとの会話でアイデアを磨き上げている。

 「まずアイデアをCopilotに投げて『どう思う?』と聞いてみます。特に『この企画で感動してもらえないとしたら、どういう原因がある?』と懸念事項を潰したり『他にいい案ない?』と思考を展開したりするために使っています。そこで出てきた案を他の人にも見てもらい、さらに意見をもらってアイデアを詰めていきます」

 キャラクターコンテストでは、デザインだけでなく生成時のプロンプトも一緒に提出してもらい、公開した。

 「Copilotが『プロンプトも投稿させた方がいいですよ』と提案してくれたんです。プロンプトも一緒に見せることで『こういうプロンプトでこういう画像ができるんだ』という経過が見え、自分もそれに倣ってやってみようというきっかけになります」

「定着」から「質」へ コア業務に効く『虎の巻』づくり

 初心者でも気軽に楽しく触れてもらうという狙いが奏功し、生成AIの利用者は順調に増えている。次のフェーズでは、利用回数を増やし、より効果的な使い方にシフトしていくことが重要になる。

 そのための施策として、現在は独自の「AI仕事術『虎の巻』」を作る企画が進行している。

 業務における生成AI活用というと、文書要約やメール文章作成、議事録作成といった汎用的な作業の代替がイメージしやすい。しかし、そこにとどまっていては真価を引き出せているとは言えない。アットホームであれば不動産関連の「コア業務」の精度やスピードを上げるところまで活用レベルを上げていきたい。そこで、コア業務に直結する活用事例や生成プロンプトを社員から収集し、『虎の巻』としてまとめて共有しようというわけだ。

 各現場からは、実際に機能しているさまざまな事例が集まっている。新卒の社員でも契約までのプロセスが描ける営業用ヒアリングシートを作成する技、営業実績のExcel表を月/グループ/作業カテゴリごとに可視化したダッシュボードに変換する技──といった具合だ。

 現時点で『虎の巻』に掲載された業務は、合計4860分(81時間)の手間削減が見込まれるという。

「一人事務局」の実行力 人を動かせた理由は?

 生成AIは既存業務をそのままスピードアップするだけでなく、業務プロセス自体を大きく変えていく可能性がある。

 そうした変化が起きたとき、小出さんが長年携わってきた営業という領域で、社員には何が求められるようになるのだろうか。

 「営業に大切なのは、顧客が気付いていない課題に気付かせてあげること。そのためには、顧客といかに関係性を築いて顧客理解や情報収集ができるかが重要です。また、相手の心を動かすには『何を言うか』と同じくらい『誰が言うか』が大事。より相手の感情に寄り添い『この人の提案ならやってみようかな』と思ってもらえるスキルが重要になります」

 世の中には営業プロセス全体をデジタル化して効率を高めようとする会社もある。しかしアットホームは、従来からの強みである「Face to Faceのコミュニケーション」を、AIを使ってさらに追求していくのだという。

 ここまでのプロジェクトの成果は、単に「生成AIという便利なツールを導入したから」生まれたものではない。小出さんが営業所長時代から培ってきた「人間の心理に働きかけるマネジメント力」と、業務の精度とスピードを上げる「生成AIの活用力」が掛け合わされたからこその結果だ。

 「AIを導入しても社内に広がらない」という声はよく聞こえてくるが、そこには「どうしたら人が動くのか」という視点が欠けているのかもしれない。まず社員や顧客という人間を理解すること、それが生成AIという強力なツールを生かす鍵ではないだろうか。

やつづかえり

コクヨ、ベネッセコーポレーションで11年間勤務後、独立。2013年より組織に所属する個人の新しい働き方、暮らし方の取材を開始。『くらしと仕事』編集長(2016〜2018)。「Yahoo!ニュース エキスパート」オーサー。各種Webメディアで働き方、組織、イノベーションなどをテーマとした記事を執筆中。著書に『本気で社員を幸せにする会社』(2019年、日本実業出版社)。


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