アットホーム、Copilot利用率が2カ月で1.5倍に 「元営業マネジャー」の推進役が仕掛けた秘策とは?(1/2 ページ)
不動産情報サービスのアットホームが社員の生成AI利用率を加速させている。週3日以上生成AIを利用する社員の割合を、3月時点の46%から5月末には70%へ、2カ月で1.5倍に引き上げた。「AI活用プロジェクト」を率いる“推進役”に秘訣を聞いた。
業務で週2日以上、生成AIを利用する人は18.4%──。パーソル総合研究所が2025年10月に行った調査の結果だ。「もうAIなしに仕事ができない」という先進ユーザーがいる一方、大多数の社会人はまだ活用しているとは言えない。
そんな中不動産情報サービスのアットホームは、週3日以上生成AIを利用する社員の割合を、3月時点の47%から5月末には70%へ、たった2カ月で1.5倍に引き上げた。
全社員1870人を対象とした「AI活用プロジェクト」の成果だが、注目すべきは、これを1人の元営業マネジャーが推進している点だ。
培ってきたマネジメント力と生成AIを駆使して一人事務局をこなす小出敏之さん(システム開発支援部 AI・イノベーショングループ長)に、成功の秘訣を聞いた。
プロジェクトは初速が大事
2022年後半にChatGPTが公開されたとき、小出さんは生成AIに関心を持った。営業所長として、Excelで営業実績や成果のデータを分析し、戦略・企画立案に役立てていた小出さんは、ChatGPTで簡単にExcel関数やマクロを作れると知り「これを使えば、自分のやりたかったことができる」と可能性を感じた。
実際に業務で活用し、営業所のメンバー向けに紹介資料も作ったが、当時は全く反応がなかった。小出さんは「最近になって『あの当時の資料、見せてもらえます?』と聞かれることがあるんです」と笑う。
その後、社内のデジタルイノベーションプロジェクトに手を挙げて参画し、営業現場の業務改善やAI活用を推進。それがきっかけで、AI活用プロジェクトの推進役に抜擢(ばってき)された。求められた役割は「全社員のAIスキルのボトムアップ」と「先端人材をより伸ばす」ことの2軸だった。
小出さんはまず全社員のスキル底上げに着手し、Microsoft Copilot(以下、Copilot)の有償版を全社員分導入。週3日以上業務で利用する社員の割合を、3月時点の46%から5月末に70%、8月末に80%、12月末に90%へ引き上げるという数値目標を設定し、8月末の目標も同7日時点で前倒しで達成した。
「初期段階でドカンと上げることが大事だと考えました。こういうものは直線的に上がっていくものではなく、最後はどうしても『AIはあまり好きじゃない』という人たちが残る。じっくり時間をかけて、じわじわと浸透させていく仕組みが必要だと考えています」
「AIアンバサダー」 あえて初心者を集めた理由
「初期の段階でドカンと上げる」は、どうやって実現できたのか。
プロジェクト立ち上げ後まず実施したのが「AI推進マネジャー」の任命と「AIアンバサダー」の募集だ。
「なにか新しいことをトップダウンでやれと言ってもなかなか動かない。逆に現場から『やりたい』と声が上がっても、上長の理解がなければ話が進みません。そこで上長にはAI推進マネジャーを選出してもらい、現場からはAIアンバサダーという形で有志に集まってもらう。トップと現場の両方から動く仕組みを作ろうと考えました」
AI推進マネジャーは各部から1人以上の管理職を選出するよう依頼し、40人がその役割を担っている。
AIアンバサダーは完全に手挙げ制で、スキルの有無は問わず、生成AIを自ら使ってみて社内に発信する意志のある人であれば誰でもなれる。現在534人が活動しており、約55%が営業系、それ以外にも事務系、管理系、企画系など幅広い職種の社員がいる。
未経験者や初心者でも可としたのには理由がある。
「AIに限らず、初級者には初級者なりの、上級者には上級者なりの悩みがあります。ですが知識や経験が増えて上級者になると、自分が初級者だった頃に何に困っていたのかをどうしても忘れてしまうものです」
「上級者だけでなく初級者にもアンバサダーになってもらい、今分からないことを発信してもらって社員同士で解決するのがいいだろうと考えました」
結果、AIアンバサダーの8割以上を初級レベルの人が占めることになった。社内公開のグループチャット「AIやってみた!(成功も失敗も)」では、狙い通り「やりたいけれどうまくいかない」という悩みと、それに対するアドバイスがやり取りされている。
例えば「Teamsから起動したCopilotでパワーポイントを作成したが良い出来ではなかった」という投稿に「PowerPoint内のCopilotなら良いものができた」という返答があり、利用するCopilotの選択が重要だと分かった例もある。
「Excelのデータ資料をAIに渡して分析を依頼したがうまくいかない」という投稿から「人には見やすいが、AIには見づらい構造」だと判明したこともある。こうしたやり取りが公開の場でなされることで、投稿者本人だけでなく他の社員のためにもなっている。
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