優秀な社員だったのに――なぜ「静かな退職」をするのか、どうしたら救えるか:AI・DX時代に“勝てる組織”(3/3 ページ)
指示通りに動くものの、最低限の仕事しかしない「静かな退職」。では、静かな退職状態になった社員は、二度と会社に対して心を開かないのか。本稿では、静かな退職が広まった6つの要因と実際に心を閉ざす「6つのペルソナ」をひも解き、健全な貢献を取り戻すための「5つの復活ジャーニー」を提示する。
組織への健全な貢献を取り戻す「5つの復活ジャーニー」
一度「静かな退職」状態に陥った社員は、二度と心を開かないのでしょうか。結論から言えば、適切なアプローチで復活が見込めます。
ただし、ここでいう復活とは、昔のように無限定に長時間働く社員に戻すことではありません。「本人が納得した役割と期待値の中で、再び主体性、発言、改善、協力、学習意欲を取り戻すこと」です。実務において、彼らがどのようにして健全な貢献を取り戻し得るのか、5つの復活例を紹介します。
復活例1:評価不満型が、評価の透明化で戻る
若手Aさんは、追加案件を何度もこなしたにもかかわらず評価されず、会議で発言しなくなっていました。上司が1on1で「何が評価されなかったと感じたか」を深く傾聴し、過去の貢献を棚卸ししました。
次に、今期の期待成果を「(1)通常業務」「(2)改善提案」「(3)後輩支援」の3つに分け、どれが評価(昇給・賞与)に反映されるかを明確にしました。3カ月後、Aさんは自分から改善案を出すようになりました。
ただし、以前のように何でも無尽蔵に引き受けるのではなく、「優先順位はどちらですか?」と確認するようになりました。出力をコントロールしながら主体性を発揮する、これは健全な復活です。
復活例2:異動ミスマッチ型が、社内公募(調整型キャリア)で戻る
中堅のBさんは、希望しない管理部門へ異動させられてから静かな退職状態でした。人事が本人の強みと希望を改めてヒアリングし、社内公募制度を活用してデータ活用プロジェクトチームへ異動しました。本人は水を得た魚のように再び自律的な学習を始め、横断プロジェクトで高い成果を出しました。
「会社員だから我慢しろ」という会社主導の押し付けキャリアから、社員との「調整型キャリア」へ方針を転換したことでエンゲージメントを取り戻した好例です。
復活例3:バーンアウト防衛型が、業務負荷の改善で戻る
元ハイパフォーマーのCさんは、周囲の火消しを引き受け続け、突然会議で発言しなくなりました。上司は最初「仕事に冷めた」と誤認しましたが、実際には深刻な睡眠不足と疲弊がありました。
直ちに業務の棚卸しをして、Cさんだけが抱えていた暗黙の業務をチームに分散しました。そして1カ月の業務軽減と休暇取得を認めました。
復帰後、Cさんは以前ほど長時間労働をしなくなりましたが、重要案件では質の高い判断を下すようになりました。「出力の最大化」から「持続可能な高貢献」へとフェーズを移行した形での復活です。
復活例4:損得重視型が、専門職(プロ)契約で戻る
Dさんは昇進に全く興味がなく、副業もしており、会社からは「冷めている」と見られていました。上司は無理に管理職への昇進意欲を引き出すことをやめて「この専門領域では社内の第一人者として責任を持つ一方で、管理職としてのピープルマネジメントは求めない」という内容で合意しました。Dさんは管理職候補としては復活しませんでした。
しかし、専門職としての誇りを取り戻し、後輩への技術レビューや社内勉強会でのナレッジ共有には極めて積極的に関与するようになりました。
復活例5:無関心型が、意味付けと小目標で少しずつ復活
Eさんは安定志向で、出世にも新規事業にも関心がありませんでした。上司は「もっと挑戦しろ」と大きなビジョンを語るのをやめ、Eさんの日々の業務が顧客満足や現場の安全にいかに貢献しているのかを具体的に伝え続けました。
あわせて、改善提案のハードルを大きく下げ「月1件の小さな業務効率化」を設定しました。Eさんが劇的に熱血化することはありませんが、無理のない範囲で業務改善に少しずつ参加するようになりました。
全員をイノベーターにする必要はありません。「静かなる復活」もまた、組織の生産性を確実に底上げします。
「静かな退職」をひとくくりにせず、個別の背景に応じた対話を
本稿では、静かな退職が広がる6つの要因と、心を閉ざしていく6つのペルソナ、そして再び健全な貢献を取り戻すための5つの復活ジャーニーを解説しました。
同じ「発言しない」「追加業務をやらない」という事象であっても、その裏にある評価への不満、業務や役割のミスマッチ、価値観の違い、バーンアウト、組織への不信など、根本原因はそれぞれ異なります。これを十把ひとからげに「モチベーション問題」として扱い、的外れな精神論をぶつければ、彼らは二度と心を開かなくなるかもしれません。
著者紹介:小出翔
GrowNexus代表取締役
デロイトトーマツコンサルティングにて14年間のコンサルティング経験を経て、GrowNexusを設立。
多様な業界の大手企業・官公庁・自治体に対し、人事・組織改革、新規事業創出、業務効率化の戦略策定から実行・伴走支援まで幅広く手掛ける。近年はDX推進に加え、デジタル人材戦略から採用・配置・育成・評価・処遇に至る一貫した支援を実施。経産省・IPAのデジタルスキル標準策定も支援しており、デジタル時代の人材・リスキリングに特に強みを持つ。GrowNexusの代表として、伴走・成長支援型のサービスと、テクノロジーを融合した新しいサービスを提供。
著書に『未来のキャリアを創る リスキリング』『地銀”生き残り”のビジネスモデル 5つの類型とそれらを支えるDX』『働き方改革 7つのデザイン』など多数。近著に『誰もが成長し活躍する会社のしくみ「スキルベース組織」という新しい人材マネジメントの実践法』。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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