旭化成が経費精算で「年間6.5万時間」を削減できたワケ “勘に頼らない”DXの実践(2/2 ページ)
多角的な事業を展開する中で、ツールの現場定着とデータ活用に挑む旭化成。徹底した可視化と適切なハンドリングでバックオフィス業務の効率化を実現した「勘に頼らないDX」の取り組みに迫る。
PCログで課題特定 経費精算で「年間6.5万時間」を削減
同社はデータ基盤の構築とともに、SaaSをはじめとするツールを効果的に活用できるよう、環境整備も強化。デジタルアダプションプラットフォーム(DAP)である「WalkMe」を戦略的活用する方針を掲げる。
WalkMeの運用は各事業部へ任せるのではなく、あえてIT部門に集約する「中央集権型」の組織体制を採用。専門チームがノウハウを集約し、高品質なユーザーサポートを提供することで、現場の満足度向上とスピーディーな仕様変更への対応を実現した。
その成果が表れた事例が、経費精算システム「SAP Concur」の利用改善だ。コロナ禍後の出張が増加したタイミングで、同社では約1万3500人の社員が1人当たり月に2.5時間、SAP Concurを使用していた。
WalkMeの全社展開を担う松山氏らは、的確な操作ガイドをSAP Concurに実装。操作に悩む時間や入力ミスによる手戻りを減らした。その結果、1人当たりの利用時間は月に2.1時間に減少。これは社内全体で年間約6.5万時間の業務削減という計算になる。
さらに、ユーザーの「慣れ」による自然な時間短縮などをデータを用いて除外し、WalkMe導入による効果を分析したところ、削減時間は年間約3.5万時間に上ったという。
どのシステムにWalkmeを導入するかを判断する上でも、データドリブンな意思決定をできるよう意識してきた。
「現場の“勘”ではなくデータで判断しました。利用状況を可視化するWalkMeの『ディスカバリー機能』などを使い、社員のPCログから『多くの人が時間を費やしているシステムや機能』を特定し、優先的に導入して操作ガイドの適用などを実施しました」(松山氏)
社内システムの適切なハンドリングと定着化を進めてきた旭化成。松山氏は、バックオフィス業務を企業同士がノウハウを共有できる「非競争領域」と捉えていると話す。
どの業務を改善し、誰が運用を担い、効果をどう確かめるか。旭化成が向き合ってきた問いは、他の企業にも通じる。削減時間という成果だけでなく、そこに至る判断や試行錯誤を共有することが、各社の改善を前に進める手掛かりとなるだろう。
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