旭化成が経費精算で「年間6.5万時間」を削減できたワケ “勘に頼らない”DXの実践(1/2 ページ)
多角的な事業を展開する中で、ツールの現場定着とデータ活用に挑む旭化成。徹底した可視化と適切なハンドリングでバックオフィス業務の効率化を実現した「勘に頼らないDX」の取り組みに迫る。
多角的な事業を展開する企業にとって、社内に散在する技術や知見を集約し、データやAIをいかに業務へ生かすかは大きなテーマだ。
旭化成は、全社データ基盤の整備とAI活用により、10年かかっていた素材開発期間を1年に短縮するなどの成果を創出している。
数万人の従業員を抱える同社は、どのようにデータ基盤を構築し、現場が迷わずに活用できるよう「適切なハンドリング」を実施しているのか。同社執行役員(DX推進) デジタル共創本部長の寺田秋夫氏と、IT統括部の松山毅氏の話から、その実践プロセスをひも解く。
本記事は、米WalkMeが9月10日に開催したイベント「WalkMe On Tour Tokyo 2026」におけるセッション「AIとデータで加速する、旭化成のDX戦略 WalkMeで実現する、全社のデジタル投資最適化」を基に構成。
「もはや化学会社にとどまらない」 複数事業をまたいだ「全社データ基盤」
旭化成が強化しているのが、自社が持つ技術や知見、ノウハウを貯蓄したデータ基盤を構築することだ。
1922年に創業した同社は、マテリアルだけでなく、住宅やヘルスケア領域など多角的に事業を展開しており「もはや化学会社にとどまらない」企業になっている。異なる領域の技術や人材、ノウハウを組み合わせることが、同社の成長を支えてきた。
しかし、社内にどのような技術や知見があるかを見つけ、事業に結び付ける過程では、人脈や個人の知識に頼る面があったという。そこで同社は、2021年から全社的なデータ基盤の整備を推進。社内に散在していたデータや知見を集約し、技術やノウハウを可視化・活用できる環境の構築を進めている。
現在ではRAG(検索拡張生成)などのAI技術を導入し、これまで10年かかっていた素材開発期間を1年に短縮するような成果も表れているという。
ツールを入れるだけでは不十分 現場を迷わせない「適切なハンドリング」とは
同社はデータ基盤の活用が、AIの利用で加速すると見ている。寺田氏は「単にAIを通せば必ず成功するわけではない」としつつ、人が長年かけて探してきた技術や事業の組み合わせを、選択肢として素早く提示できる点に期待を寄せる。
全社でデータやAIの活用を広げるためのルール整備も欠かせない。寺田氏はシステム利用を車の運転になぞらえて「アクセルとブレーキ、そしてハンドル」の重要性を指摘する。
「社員が自律的にAIやツールを使って『アクセル』を踏む一方で、野良ツールの乱立やセキュリティリスクを防ぐ『ブレーキ』が不可欠です。そして同時に、複雑なシステムでもユーザーが迷わず正しく操作できるよう『ハンドル』をうまくさばけるような支援が求められます」(寺田氏)
AIの活用の推進においても、日常的な社内システムの利用でも、現場がルールを守り、迷わず操作できるように導く「適切なハンドリング」が求められる。
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