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需要が消え、設備が老い、人が減る――西武鉄道、144両更新の裏側 「大手なのに恥ずかしい」を受け入れたワケは(1/3 ページ)

需要が落ち、設備が老い、人が減る――逆風にさらされる鉄道会社。西武鉄道は、課題を解決すべく従来とは違う方法で車両の刷新に挑んでいる。

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 「鉄道を長年やってきた人からすると、まず『大手なのに恥ずかしい』と考えてしまう」――こう吐露したのは、西武鉄道(埼玉県所沢市)の町田明氏(取締役 常務執行役員 鉄道本部長)だ。省エネルギー(省エネ)対応が求められる中、省エネ性能が高い車両を他の鉄道会社から譲り受けるという社内からの提案に対する言葉だった。

 いま、鉄道会社は強い向かい風にさらされている。労働力不足が加速する中、老朽化した設備の更新投資は待ってくれない。乗降客数も減少傾向にある。

 西武鉄道も例外ではない。定期輸送人員は、コロナ禍で大幅に落ち込んだ。回復傾向にあるが、2025年度の定期輸送人員は2019年度比で13%減ったままだ。従業員は50歳以上の比率が高い。国土交通省からは、省エネ型の車両への全面転換を2035年度までに完了するよう求められている。

 そこへ、2000年にデビューした主力通勤車両「20000系」144両が大規模更新の時期を迎えた。既存作業の対応で手いっぱいだった西武鉄道が選んだのは、自前主義を手放し、単なる延命でも終わらせない更新だ。

 人口減少による鉄道需要の変化、環境への対応、人手不足や高齢化、設備の老朽化――多くの企業が抱えるこうした課題を、西武鉄道はどう解決したのか。

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西武鉄道の町田明氏(撮影:筆者)

本記事は、日立製作所が主催したイベント「Hitachi Social Innovation Forum 2026 JAPAN」(9月3〜4日開催)のセッションから「既存アセット×デジタルで拓くサステナブルな鉄道運営」を取材したもの。


テレワーク拡大で通勤需要減 西武鉄道が直面する3つの課題

 西武鉄道は、前身である武蔵野鉄道の設立から114年を数える。同社の町田氏は、持続可能な鉄道事業運営に向けた課題として3点を挙げた。

  1. 需要変化:人口減少と行動変容への対応
  2. 環境対応:社会要請としての脱炭素
  3. 人手不足:採用環境の厳しさと労働人口の減少

 最も影響が大きいというのが需要変化だ。コロナ禍でのテレワーク拡大で通勤需要が落ち込んだ。地方移住や人口減少などによって、沿線の生産年齢人口も2050年には約10%減る見通しだ。町田氏は「出社回帰といわれるが、テレワークを併用した働き方の中で、必ずしも定期券を購入するお客さまばかりではない」と述べる。

 同社が選んだのは、事業を小さくしながら収支のバランスを維持する「縮小均衡」ではなく、沿線価値の向上による需要創出だ。踏切をなくす連続立体交差事業では、2015年に事業が完了した池袋線の石神井公園駅で乗降客数が全線平均を上回る6.3%増となった。1999年まで車両工場だった跡地を使い、西武グループが商業施設「エミテラス所沢」を開業した所沢駅でも、乗降客数は全線平均を大きく上回った。

「大手なのに恥ずかしい」 固定観念を破った“車両更新の妙案”

 課題の2つ目である環境対応で軸になるのは、車両の省エネ化だ。国土交通省は鉄道分野のGX(グリーントランスフォーメーション)に向け、消費電力を抑える「VVVFインバーター制御」への転換を2035年度までに全列車で完了させることを目指す。だが西武鉄道の更新は遅れ、2025年度末時点でも2割強が非VVVF車両のままだった。

 そこで同社はVVVF化100%の目標を、国の目標より5年早い2030年度に設定し、車両の新造に加えて他社からの譲受車両を「サステナ車両」として活用する道を選んだ。環境負荷の少ない譲受車両を指す同社独自の呼称で、小田急電鉄の「8000形」や東急電鉄の「9000系」に更新・改造を施し、西武線での運用に適合させている。

 このアイデアは、コロナ禍で投資余力が問われる中、鉄道部門の外から出てきた。

 「鉄道を長年やってきた人からすると、まず『大手なのに恥ずかしい』と考えてしまう。他社の車両を持ってきても無理だと、固定観念で見てしまう」と町田氏は振り返る。一方、部門外からは「同じ電圧で同じ性能で同じ車体長で走っているのだから、載せ替えれば動くだろう」という声が上がった。

 実際に着手すると誤算もあった。「各社の車両はそれぞれの会社に合わせて、想定以上にカスタマイズされていた」と町田氏は語る。他社では4両を1セットとして扱う「4両固定編成」で運用していたが、西武鉄道は4両+4両+2両で10両編成を組んでいた。こうした違いから、改造や運用変更が必要な箇所は当初の想定を上回ったが、新たな車両の製造と合わせることで、車両の更新を加速させている。

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環境対応のサステナ車両(出所:西武鉄道の講演資料)

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