AI活用で「脱コンサル」宣言、大阪・河内長野市長の真意は? 変わる自治体と事業者の力関係(1/5 ページ)
大阪府河内長野市の西野修平市長が記者会見で述べた「脱コンサル」宣言。AIは、自治体と事業者の力関係そのものを書き換えつつある。今回は経営学者ポーターの「ファイブフォース」(5つの競争圧力)を手がかりに、その変化を発注者(自治体側)の目線で読み解きたい。
著者プロフィール:川口弘行(かわぐち・ひろゆき)
川口弘行合同会社代表社員。芝浦工業大学大学院博士(後期)課程修了。博士(工学)。2009年高知県CIO補佐官に着任して以来、省庁、地方自治体のデジタル化に関わる。
2016年、佐賀県情報企画監として在任中に開発したファイル無害化システム「サニタイザー」が全国の自治体に採用され、任期満了後に事業化、約700団体で使用されている。
2023年、公共機関の調達事務を生成型AIで支援するサービス「プロキュアテック」を開始。公共機関の調達事務をデジタル、アナログの両輪でサポートしている。
現在は、全国のいくつかの自治体のCIO補佐官、アドバイザーとして活動中。総務省地域情報化アドバイザー。公式Webサイト:川口弘行合同会社、公式X:@kawaguchi_com
こんにちは。「全国の自治体が抱える潜在的な課題を解決すべく、職員が自ら動けるような環境をデジタル技術で整備していく」ことを目指している川口弘行です。
10月6日、大阪府河内長野市の西野修平市長が記者会見で、AIを活用し職員がさまざまな行政計画の策定に主体的に取り組む「脱コンサル」を宣言しました。
「ほぼ委託して進めてきたという現状があったが、コンサルティング会社も生成AIを活用した作成物を戻してくる。われわれがAIを使いこなすことができれば、数百万円とか数千万円かかる委託費用を支払わなくても済む」
システム関連であれば、計画策定の委託、システムの保守、毎年の更新費用など――。「この金額は妥当なのか」「AIを扱えるようになれば、このくらいは自分たちでもできるのではないか」と感じた経験のある自治体関係者は少なくないはずです。
河内長野市の宣言は、一つの市の話にとどまりません。AIは、自治体と事業者の力関係そのものを書き換えつつあります。
今回は、経営学者マイケル・ポーターの「ファイブフォース」(5つの競争圧力)を手がかりに、その変化を発注者(自治体側)の視点で読み解きます。
「5つの力」で見る発注者と事業者の力関係
ファイブフォースとは、業界の競争環境を左右する5つの力を分析するフレームワークです。5つの力が強ければ業界の競争は激しくなり、事業者の利益率は下がります。事業者はこの分析に基づき、自社に有利なポジションを探るわけです。
5つの力とは、それぞれ次のようなものです。
売り手の交渉力
原材料やサービスを供給する側(売り手)が、買い手に対して価格や条件を押し付けられる力の強さのことです。売り手が限られていて代替品がなければ、売り手の交渉力は高くなります。自治体でいえば、特定のベンダーにしか保守できないシステムを持っている場合、そのベンダーの交渉力は高くなります。
買い手の交渉力
製品やサービスを購入する側(買い手)が、売り手に対して価格引き下げや条件改善を要求できる力の強さのことです。買い手が集中していたり、代替品が豊富にあったりすれば、買い手の交渉力は高くなります。自治体でいえば、複数の自治体が共同で調達すれば、買い手としての交渉力は高くなります。
代替品の脅威
業界外から全く別のアプローチで同じ機能を提供する製品が登場し、既存の製品を置き換えてしまうリスクのことです。代替品が安価で品質が高ければ、既存の事業者は価格を上げられなくなります。自治体でいえば、クラウドサービスの普及により、これまで個別に構築していたシステムが汎用(はんよう)的なサービスで置き換え可能になるのがこの例です。
新規参入の脅威
新しい事業者が業界に参入しやすいことです。参入障壁が低ければ新しい競合が次々と現れ、競争が激化します。自治体向けのシステム開発において、AIによる開発支援が参入障壁を下げれば、これまで実績のなかった事業者が新たに参入しやすくなります。
業者間の敵対関係
同じ業界で競合する事業者同士の競争の激しさのことです。競合が多く、差別化が難しければ競争は激しくなり、利益率を押し下げます。自治体の公共調達において、競争入札で複数の事業者が同じ仕様で競い合う状況がこれに当たります。
5つを全て丁寧に扱うと長くなるため、今回はAIの普及によって競争環境が大きく変わりつつある3つの要因である「売り手の交渉力」「代替品の脅威」「業者間の敵対関係」に絞り、自治体の現場で何が起きているのかを見ていきます。
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