日本の「造船業」は復活できるのか 国交省が「かつてない規模の予算」で挑むフィジカルAI(1/2 ページ)
人手不足と国際競争の激化に直面する日本の造船業。政府は2035年に国内の船舶建造量を倍増させる目標を掲げ、AIやロボティクスの活用を支援する。造船現場の生産性を高め、熟練技能者の技術を次世代につなぐ取り組みを追う。
「これまでにない大規模な予算を用意し、造船業の再生・強化を進めていく」――国土交通省 海事局 大臣官房技術審議官を務める今井新氏は、10月6日に開催されたシンポジウムでこう述べた。
日本の造船業は、かつて世界トップの建造量を誇った。1956年に世界シェア1位となり、1990年代初めまで世界の建造量の約4〜5割を占めていたが、韓国や中国の台頭によってシェアが低下。足元では建造量シェアが約2割、世界3位となっている。
加えて、人手不足も深刻化している。造船現場では、鉄板の加工や溶接などに熟練した技能が必要だが、従事する人材は減少傾向にある。
こうした状況を受け、政府は「造船業再生ロードマップ」をまとめ、2035年に国内の建造量を倍増させる目標を掲げた。今後10年間で官民合わせて1兆円を超える投資を実施し、競争力の強化を目指す。その復権を担う鍵が「フィジカルAI」だ。日本の勝ち筋について、キーパーソンらが語った。
本記事は国立研究開発法人海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所、日本能率協会コンサルティングが開催した「造船業界におけるAI・ロボティクス普及に向けたシンポジウム」内の講演の一部を記事化したものです。
2035年に建造量を倍増へ 政府が技術開発を支援
政府は造船業の再生に向け、技術開発への支援を進める。その1つが研究開発の成果を社会実装や事業化につなげる国のプログラム「BRIDGE」事業だ。造船分野には150億円の予算が配分され、AIやロボティクスを活用した技術開発を進める。
今井氏は、造船業について「海上輸送に不可欠な船舶を供給する産業として、日本の経済を支える重要な柱」と説明する。海上輸送が滞れば、日本の経済や人々の生活にも大きな影響が及ぶ。
熟練技能者の減少が進む中、限られた人員でより多くの船を建造できるよう、現場の生産性を高める必要がある。そこで期待されているのが、AIやロボットの活用だ。
造船現場で求められる「フィジカルAI」
近年、生成AIが急速に普及し、文章作成や情報整理など、さまざまな業務で活用されている。一方、造船現場では、画面上で情報を処理するAIだけでは対応しきれない。海上・港湾・航空技術研究所 海上技術安全研究所の平田宏一所長は「実際にロボットや機械などを動かして作業させる、いわゆるフィジカルAIが必要とされている」と説明する。
フィジカルAIと従来のロボットの違いは、周囲の状況を認識し、それに応じて動作を変えられる点にある。例えば、造船現場で周囲の状況に合わせて動きながら溶接するロボットなどがフィジカルAIの活用例だ。
造船現場では、粉じんや夏場の暑さなど、作業者にとって厳しい環境が少なくない。高所や狭い場所での作業もある。溶接などには熟練者の経験や技術が求められる。こうした作業をロボットが担えるようになれば、人手不足の緩和につながる。
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