「DXなき事業には人も金も出さない」 住友商事、4800人を“デジタル人材”に変える仕組みとは(3/3 ページ)
SCSK完全子会社化や新組織の設立でDXを加速する住友商事。「営業が本業」だった商社パーソンをどうデジタル人材に変えるのか。デジタル・AI推進トップの巽達志執行役員に戦略を聞いた。
トップダウンは効かない 900社の現場からDXの種を掘り起こす
――商社ならではのDXの強みと難しさは。
当社には、900社を超える事業会社と、10万社以上の顧客がいる。こうした現場に、さまざまなデータが眠っている。デジタルやAIを使って実際に成果を出すには、こうした事業の現場が欠かせない。ソリューションを提供するIT企業にとっても、成果を出す「場」が必要になる。そこにわれわれへの期待がある。
一方で商社ならではの難しさは、扱う産業が幅広く、現場ごとに課題が異なることだ。そこで、この6年間、DXの案件を一つのデータベースに集めてきた。例えば、サプライチェーンの管理でも、化学品と鉄鋼、エレクトロニクスでは違う部分がある。しかし、似ている部分もある。過去の事例を参考にして、ほかの業界に生かせる。最近は、生成AIを使うことで、集めた情報をより幅広く引き出せるようになった。
ある業界の常識が、別の業界では非常識ということもある。事例を横展開することで、そうした気付きが生まれ、次の一手につながることもある。
――全社でDXを進めるコツは。
上から「これをやれ」と言ってもうまくいった試しはあまりない。現場が解決したいと考える課題を引き出すほうが、具体的に動く。社内コンサルのような部隊が各営業グループと対話し、案件が集まる窓口になっている。
――今後1年の課題は。
DXの案件数は足元で2〜3倍に増えた。社会へのインパクトが大きい案件に人とお金を集中し、いかに早く実装するかが勝負になる。
「若手には、たくさん現場を見てほしい」 DXの先にある商社パーソンの役割
――DXの浸透で仕事の進め方はどう変わったか。
経営会議の資料に不明点があった際、以前は担当者に確認しても回答までに1〜2日かかっていた。今は社内の生成AIに聞けばその場で分かる。会議での質問も「これはどういう意味か」から「この事業は戦略的に正しいか」といった本質的な議論に変わった。
一方で、若手がAIの答えをそのまま受け取ってしまう例は見られる。AIは過去のベストを持ってくることはできても、それを超える発想は出してくれない。新しい解決策は現場から生まれる。だから、若い社員には、できるだけたくさんの現場を見てほしい。
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