DXの反省を生かせ AIで「月間9万時間」「4.7億円相当」の業務削減をしたレゾナックの「共創モデル」とは(1/3 ページ)
AIツールを配布しても、全社的な業務変革にまで結びつかない企業は少なくない。レゾナック・ホールディングスは、AIライセンスの全社への導入から約半年で、活用率95%を達成し、月9万時間の業務削減に成功した。現場発のアイデアを全社資産へと変える「独自の共創モデル」の全貌に迫る。
「DXの時と同じ過ちを、AIでは絶対に繰り返すまいという強い思いがあった」――そう語るのは、レゾナック・ホールディングスの執行役員であり、最高デジタル情報責任者(CDIO)の能丸実氏だ。
AI半導体のパッケージング(組み立て)に必要な半導体材料を提供し、急拡大するAI市場における重要なプレーヤーである同社は、自社業務におけるAI活用も積極的に推し進めている。
2025年10月の全社での本格導入から約半年で、社内のAI活用率は95%に達し、製造、研究開発、間接部門など幅広い領域で定着した。結果として、月当たり約9万時間、金額換算で約4.7億円相当の業務削減を達成したという。
注目したいのは、単にAIツールを導入しただけではない点だ。現場の従業員が自ら生み出したAIエージェントを全社へ展開する独自の循環モデルを構築し、業務プロセスそのものを構造的に変革している。
「AIを個人作業のアシスタントとしてだけでなく、業務プロセスそのものを根底から変える道具にしたい」と能丸氏は話す。全社を巻き込んだ、レゾナック・ホールディングスの変革の全貌に迫る。
「DXと同じ過ちは繰り返さない」 レゾナックAI活用の「4段階ロードマップ」
同社が全社にAIライセンスを配布し、AI活用に本腰を入れたのは2025年10月のことだ。旧昭和電工と旧日立化成の統合で誕生した同社では、以前から蓄積されたデータや文書を対話形式で活用できる社内AIシステムなどを利用しており、特に研究開発部門などでの活用実績があった。
しかし、世の中のAI技術の急速な進歩を受け、より本格的なAIを前提とした変革が必要だと決断したのがきっかけだったと能丸氏は振り返る。
同社がAI推進において強く意識したのが、過去のDX推進時における反省だ。かつてRPA(Robotic Process Automation)やBIツールを導入した際、現場が独自のツールを作り乱立させる、いわゆる「野良システム」「野良データ」が発生した。データが分散し、使われないツールが放置される状況は、企業の競争力向上につながっているとは言い難かった。「DXの時と同じ過ちを、AIでは絶対に繰り返すまいという強い思いがあった」と能丸氏は強調する。
同社は、AI推進のステップを4つの段階に分けて取り組んでいる。
- ステージ0:全員がAIを身近な道具として使いこなし、風土を作る
- ステージ1:AIエージェントを連携させ、業務のプロセス全体を変革する
- ステージ2:ITやデータと統合し、現場やサプライチェーン全体を高度化する
- ステージ3:上記のステージの先にある、企業の競争力・価値向上に貢献するAI活用
まずは「ステージ0」で土台を作りつつ、業務プロセス自体を変える「ステージ1」、そして事業貢献へ直結させる「ステージ2」や「ステージ3」へと段階的かつ同時並行で進めるという明確なロードマップを描いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
巨大テックのAI開発を停滞させない レゾナックが証明した「後工程」という日本の武器
生成AIの普及により、AI半導体の需要が急拡大している。その競争力を左右するのはチップそのものだけではない。複雑化する構造を支える「後工程」材料の重要性が高まっている。こうした中、レゾナック・ホールディングスは共創を軸にした開発体制を構築し、存在感を高めている。その戦略の背景と、日本企業の勝機を探る。
2年間で「1万時間」削減 「1円の誤りも許されない」ソニー経理が“まず試してみる”DX集団に化けたワケ
「経理DXを進めたいが、現場の抵抗が強い」「ツールを導入しても活用が広がらない」――こうした悩みを抱える企業は少なくない。経理部門は正確性や継続性が求められるため、変革が難しい領域とされてきた。ソニーグループの経理部門は、約2年間で150件を超えるDXプロジェクトを推進し、累積1万時間以上の業務時間を創出した。会計・税務の専門家集団は、どのようにして変革を実現したのか。
AIで月「400時間」「紙6000枚」削っても「そんな数字どうでもいい」 町工場が1億円規模のシステム内製で得たもの
「業務時間を何時間削減したか」は、AI活用の真の目的ではない――。金沢市の町工場、岡田研磨が進めるのは、AI時代の競争力となる「会社の記憶」の蓄積だ。
