2015年7月27日以前の記事
検索
コラム

「AIがデータセンターを作る」 サム・アルトマンが明かす“AIが自ら増える”構想とは?(2/2 ページ)

「AIがAIを作る」再帰的自己改善(RSI)の波が物理世界へと波及している。米OpenAIのサム・アルトマンCEOは、AIが半導体やロボットを自ら設計し、データセンターを大量建設する「自己複製の循環」が現実味を帯びていると明かした。AIの進化を阻む電力や半導体の物理的な限界を、AI自身がハードウェアを増殖させて突破する未来が迫る。製造業や建設業をも巻き込む「物理世界のAI競争」の幕開けとは?

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena
ExaWizards
前のページへ |       

ハードウェア設計まで 広がる「RSI」の評価領域

 AIの自己改善をモデルの研究開発だけで捉えるのではなく、周辺技術にまで広げようという動きは、RSIの評価基準にも現れている。

 Vals AIのクリシュナン氏は10月26日の対談で、同社が開発する「RSI Index」について説明した。この指数は、AIが次世代AIの研究開発をどこまで自動化できるかを客観的に測るものだ。現在は、モデルの事前学習、事後学習に加え、AIに外部ツールを使わせたり、複数の作業を実行させたりする仕組みを開発する「ハーネスエンジニアリング」も評価対象にしている。

 クリシュナン氏は、その対象をさらに広げる考えを明らかにした。「カーネルエンジニアリング」や「ハードウェアエンジニアリング」など、現在は対象外の領域も、今後評価していくという。

 カーネルエンジニアリングとは、GPUなどの半導体で計算処理を最も効率よく実行するための基盤プログラムを開発・改善する高度な作業だ。ハードウェアエンジニアリングには、半導体そのものや関連機器を設計する仕事が含まれる。

 つまり、AIがモデルの学習方法を改良できるかだけでなく、計算を極限まで効率化する低レイヤーのソフトウェアや、計算を実行する物理ハードウェアの開発まで担えるかを測ろうとしているのだ。

ものづくり企業を巻き込む 「物理世界のAI競争」へ

 クリシュナン氏が示したのは、研究開発能力の評価範囲を広げる計画であり、アルトマン氏が語ったようなデータセンターの自己複製を直接測るものではない。それでも、AIの自己改善をモデルの内部だけで完結させず、モデルを取り巻くインフラ技術全体で捉えようとしている点では、両者の発想は明確に重なり合っている。

 これまでAI開発の競争では、優れたモデルを作る研究能力と、必要な計算資源を調達する資金力が勝敗を分けてきた。しかし、AIが計算資源を作り出す仕事そのものに参加するようになれば、半導体設計、電力設備、産業ロボット、データセンター建設までが、AIの進化を加速させるための技術開発の主戦場となる。

 RSIをめぐる競争は、AIモデルの開発企業によるソフトウェアの競い合いを超え、物理世界のものづくりやインフラを担う企業をも巻き込む、新たな次元へと突入しつつある。

本記事は、エクサウィザーズが運営するAI新聞内の記事「『AIがAIを作る』の次は『AIがデータセンターを作る』 RSIは物理世界へ」(2026年11月2日掲載)を、ITmedia ビジネスオンライン編集部で一部編集の上、転載したものです。

著者プロフィール

湯川鶴章

AIスタートアップのエクサウィザーズ AI新聞編集長。米カリフォルニア州立大学サンフランシスコ校経済学部卒業。サンフランシスコの地元紙記者を経て、時事通信社米国法人に入社。シリコンバレーの黎明期から米国のハイテク産業を中心に取材を続ける。通算20年間の米国生活を終え2000年5月に帰国。時事通信編集委員を経て2010年独立。17年12月から現職。主な著書に『人工知能、ロボット、人の心。』(15年)、『次世代マーケティングプラットフォーム』(07年)、『ネットは新聞を殺すのか』(03年)などがある。


© エクサウィザーズ AI新聞

前のページへ |       
ページトップに戻る