なぜGoogleは、OpenAIとAnthropicに勝てないのか? 「世界最大の計算資源」の使い道(1/3 ページ)
米Googleは次世代AIモデル「Gemini 4 Argon」を発表したが、第三者評価で米Anthropicや米OpenAIの後塵を拝した。Googleは世界のAI計算資源の約4分の1を握る最大手でありながら、なぜ首位に立てないのか。背景には、外部販売で稼ぐクラウド部門、検索部門、AI開発のDeepMindによる熾烈な「チップ争奪戦」がある。競合に計算資源を売る方が儲かるという経営の現実と組織力学の歪みを解き明かす。
米Googleは9月30日、次世代AIモデル「Gemini 4」の最上位モデル「Argon」(アルゴン)を発表した。
スンダー・ピチャイ(Sundar Pichai)最高経営責任者(CEO)が6月の公開を予告していた前世代の上位モデル「Gemini 3.5 Pro」は公開を取りやめており、数カ月遅れでの新モデル投入となった。
だが、AIモデル評価会社の米Artificial Analysis(アーティフィシャル・アナリシス)による第三者評価では、Argonは米OpenAIの「GPT-6 Astra」と並ぶ53点にとどまり、米Anthropicの「Claude Opus 5.5」の58点には届かなかった。
AI動向の調査機関である米Epoch AI(エポックAI)の推計によると、Googleは2025年末時点で、世界のAI計算能力の約4分の1を持つ最大の所有者だ。それなのに、なぜ首位に立てないのか。業界の専門家や報道からは、計算資源の不足ではなく、社内での奪い合いに原因があるとの見方が強まっている。
クラウド部門勝利が招いた劣勢
半導体・AIインフラ調査会社の米SemiAnalysis(セミ・アナリシス)の創業者兼CEOであるディラン・パテル(Dylan Patel)氏は、10月9日公開のポッドキャスト番組「Big Technology Podcast」で、Googleがこの半年に自社モデルの学習と運用に回した計算資源の割合は、2〜3年前より低いと語った。
Google全体の計算資源は年々大きく増えているが、AI開発部門の英Google DeepMind(ディープマインド)への配分はそれほど伸びず、比率では下がっているという。
同氏はこの状況を、Google Cloudを率いるトーマス・クリアン(Thomas Kurian)氏と、DeepMindの共同創業者で8月に経営の第一線を退いたデミス・ハサビス(Demis Hassabis)氏の争いにたとえ「クリアン氏が勝ち、ハサビス氏が負けた」と表現した。その上で「DeepMindとAnthropic、OpenAIの3社だけを比べると、年末にはDeepMindの計算資源が最も少なくなる」と予測した。
差は2027年に、さらに広がる可能性がある。ギガワット(GW)はデータセンターの規模を消費電力で表す単位だが、パテル氏は、OpenAIとAnthropicが2027年に、それぞれ5〜10GWを上積みする一方、Googleが自社向けに数GWの上積みにとどまれば、差はさらに開くと指摘した。
© エクサウィザーズ AI新聞
関連記事
OpenAI「Dots」に追随なるか Google「Gemini Agent」参戦で過熱するパーソナルAI競争
米Google Cloudは企業向けイベントでAIエージェント「Gemini Agent」を発表した。単なる指示ではなく目標を渡すだけで自律的に業務を完遂する。最大の特徴は、専用メールアドレスや名簿を持つ独立した「AI同僚」として機能する点だ。さらに業務に応じて米Anthropicの「Claude」などもモデルとして選択可能。米Metaや米OpenAIとのパーソナルAI覇権争いが一気に過熱している。
請求書は青天井 Microsoftトップが「AIモデル大手に主導権を渡すな」と叫ぶ真意
MicrosoftのナデラCEOらが相次いで「AIモデル大手に主導権を渡すな」と叫び、波紋を広げている。企業の独自ノウハウが汎用モデルに吸収されるリスクや、AIエージェント化に伴う「青天井の請求書」への恐怖が背景にある。しかし、脱モデル依存を煽る2大巨頭の正論の裏には、自社プラットフォームへ顧客を囲い込もうとする思惑も透けて見える。エンタープライズAIの最新の地政学を考える。
「学歴は無価値に」 米トップエンジニアが明かす、AI時代に“大化けする人材”の共通点
「履歴書の時代は終わった」──AIの普及によって、企業の採用や人材評価のルールが大きく変わり始めている。
売上高93%増のPalantirが独走 AI競争の主戦場「制御層」を奪い合う3陣営
AI競争の焦点はモデル性能から、企業の業務・データ・権限を管理しAIを現場で動かす「コントロールプレーン」(制御層)へと移った。20年前から「オントロジー」(業務の地図)を蓄積してきた米Palantir Technologiesは第2四半期決算で売上高93%増と異次元の成長を記録。この独壇場に対し、米Snowflakeなどのデータ陣営、Amazon Web Servicesなどのクラウド陣営、米OpenAIなどのモデル陣営が参入し「法人AIの覇権」を巡る最終戦争が始まった。
中国は敵ではない NVIDIAトップが警告する「米中共存」とAIインフラの盲点
米NVIDIAのジェンセン・フアンCEOは、中国をAIの脅威とみなして封じ込めようとする米国の現在の政策姿勢に、真っ向から異を唱えた。「中国を敵に仕立て上げることは最善の答えではない、彼らと対話することが最も安全な道だ」という。「競争相手と敵は違う」というファン氏のこの一言が、議論の出発点だ。
人間は「取締役」、AIが「CEO」 サム・アルトマンがAGI論争を終了させてまで語りたかった「ASI」の未来図
「AGI」(汎用人工知能)は、気付かないうちに到達してしまった――だから次はASI(超知能)の定義を決めよう」。米OpenAIのサム・アルトマンCEOは、AGIをめぐる終わりのない論争に決着をつけるかのような提案をしている。宣言を急ぐ裏には、Microsoftとの間に抱える“巨額契約の時限爆弾”があった。AIがCEOになる」衝撃の未来図とは?
「人間がコードを書く時代は終わった」 “Claude Code”が引き起こす「知能の価格崩壊」
AIがソフトウェアを書く時代が、いよいよ本格的に始まりつつある。「GitHub」の公開コミットの約4%が、米AnthropicのAIエージェント「Claude Code」によって書かれていて、2026年末には20%以上に達するという。この変化は、単なる「AIコーディングツール」の普及ではない。PCの使い方そのものが変わり始めている。
AIによる“社会崩壊”まで残り3年 トップ識者が警告する「地獄のシナリオ」
AIがもたらす生産性の爆発は、最終的には人類に豊かさをもたらす可能性がある。しかしその途中には、社会が崩壊しかねない危険な移行期があるという。
AI競争は「Googleの圧勝」で終わるのか? Gemini 2.5 Proの衝撃
米国のテック系人気ユーチューバーの何人かが、こぞって「AI開発競争はGoogleが勝利した」という見出しの動画をアップしている。これでGoogleの勝利が決定したのかどうか分からないが、少なくともOpenAIの首位独走の時代は終わったのかもしれない。
