コラム
» 2007年04月16日 10時00分 公開

ボルベール〈帰郷〉+D Style 最新シネマ情報

若い頃の母へのわだかまりと、今だから理解できる母の無償の愛。どこかユーモラスで、ちょっぴり怖い家族愛の物語をペネロペ・クルスが熱演。

[本山由樹子,ITmedia]
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 女性の美しさには色んなタイプがあるけれど、ペネロペ・クルスの場合は華奢なのに豊満で、少女のように頼りなく、大きな目は何かすがるかのように潤んでいる。とにかくフェミニン。最近ではハリウッドでの活躍が目立ち、健気さ、可憐さを強調したスター男優の添え物的存在の役が多かったが、故郷スペインに戻って久しぶりにペドロ・アルモドバル監督と組んだ「ボルベール〈帰郷〉」では、本領発揮といわんばかりに、地に足の着いたたくましきヒロインを好演。惜しくも受賞は逃したが、本年度アカデミー主演女優賞にノミネートされた。

 ライムンダは、失業中の夫と15歳の娘のために日々忙しく働いていた。ある日、肉体関係を迫る父親を刺し殺してしまった娘のために、死体を隠すハメになる。一方、彼女の姉ソーレは、火事で死んだはずの母親の幽霊と再会(!?)し、一緒に暮らし始めるが、ソーレは母の存在をライムンダには伝えられずにいた……。

 若い頃の母へのわだかまりと、今だから理解できる母の無償の愛。深刻なストーリーのはずが、どこかユーモラスで、ちょっぴり怖い家族愛の物語だ。

 若き母親ライムンダ、その娘、ライムンダの姉、とうの昔に死んだ母、隣人……登場人物はすべて女性。それぞれ悩みと秘密を抱えているが、幽霊も含め、まるで実在の人物のように深みがあり、キャラクター描写も緻密で、アルモドバルの演出は今回も絶品。現代スペイン映画界を牽引する映像作家の余裕すら感じられる。もしスペイン映画というだけで敬遠したらもったいない。今までのアルモドバル作品の中では最も理解しやすく、純粋に楽しめるはず。

 それにしても、スペイン女性たちの活気があること。どんなピンチに陥っても、前向きに生きるその姿勢は眩しくもあり、羨ましくもあり。男性からは「やはり女性は強い」そんなため息がもれそうだが……。

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ボルベール〈帰郷〉

監督・脚本:ペドロ・アルモドバル/製作総指揮:アグスティン・アルモドバル

出演:ペネロペ・クルス、カルメン・マウラ、ロラ・ドゥエニャス、ブランカ・ポルティージョ、ヨアンナ・コバ、チュス・ランブレアヴェ

配給:ギャガ・コミュニケーションズ

2007年6月30日 TOHOシネマズ六本木ヒルズほか全国ロードショー



筆者プロフィール

本山由樹子

ビデオ業界誌の編集を経て、現在はフリーランスのエディター&ライターとして、のんべんだらりと奮闘中。アクションからラブコメ、ホラーにゲテモノまで、好き嫌いは特にナシ。映画・DVDベッタリの毎日なので、運動不足が悩みの種。と言いつつ、お酒も甘いものも止められない……。


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