無重力空間で食べる日本食は、どんな味がするのだろうか……。
JAXA(宇宙航空研究開発機構)は7月10日、「JAXAシンポジウム2007」を開催した。今回で3回目となるシンポジウムでは「探る宇宙 食べる宇宙」をテーマに、8月16日に打ち上げ予定の月周回衛星「かぐや(SELENE)」のミッションを説明。また、国際宇宙ステーション(ISS)に建設される日本実験棟「きぼう」での宇宙生活について語られ、クルーのために開発された「宇宙日本食」の試食体験会が行われた。
JAXAはISSに滞在する宇宙飛行士へ供給するための認証基準を整備。「宇宙日本食」は、日本の食品メーカーが開発し、JAXAの基準に適合したもので、実際にISSの滞在期間中のメニューに加えられている(関連記事参照)。
JAXAにより認証された全12社29品目の宇宙日本食は、ワカメスープや赤飯、カレー、サンマの蒲焼き、粉末緑茶、ようかんなど、日本人にはおなじみの食品ばかり。2008年後半に予定している、若田光一宇宙飛行士のISS滞在からの導入を目標としている。


日清食品のカップヌードルは、湯戻しした後にもブロック状の形が崩れない“塊状麺”を採用。スープに粘性を持たせることで無重力でも飛び散らず食べやすい工夫がなされている。とろりとしたスープと麺のマッチングが絶妙で、ぜひそのまま市販してもらいたいところスープや米製品など、お湯が必要な食品をISSで調理する際には「ギャレー」という加水機を使う。食品パックの注ぎ口にギャレーを差込み、約75度〜80度のお湯で調理できるという。沸点に満たない温度でもおいしく調理できる工夫を各社が行っており、市販食品に勝るとも劣らない味わいを保っていた。
また宇宙空間では味覚が鈍くなる現象があり、市販のものより濃い目の味付けをしたという宇宙食品も。宇宙酔いや無重力での「体液シフト」現象の影響など諸説あるようだが、医学的にはまだ立証されていないという。

尾西食品は低温での湯戻しに適した「低アミロース米」を使用した白米に加え、おこわ、赤飯などを開発。赤飯にはごま塩がほしいところだが、「飛び散って機内を汚染する可能性があり、やむなく除外した」(同社)。もっちりとした食感が特徴

理研ビタミンのワカメスープは、パックの吸い口が詰まらないようにワカメを細かくカット(左)。マルハグループ本社の定番、サンマの蒲焼きも宇宙食になった。魚の匂いを抑えるため蒸気加熱を施しており、いつもと変わらぬおいしさにおもわずビールが欲しくなってしまう(中央)。ハウス食品はビーフ/ポーク/チキンのカレーを開発。クルーの栄養を考慮しカルシウムやウコンを多く含ませ、それらの苦味を抑えるためにスパイシーな仕上がりに。日本のレトルトカレーは他国の宇宙飛行士にも好評だという(右)栄養や長期保存性はもちろんのこと、水分などが無重力空間で飛び散って宇宙船にダメージを与えないといった厳しい審査基準をクリアした最先端の食品たち。けれどその中にはISSで日本のクルーたちを元気付けるであろう、昔ながらの日本の味が詰まっている。

会場で行われた楠田枝里子さんとJAXA 福田義也氏とのトークセッションでは、宇宙食の歴史や、今後の宇宙日本食の展望についても語られた。なんと鮮魚を使った寿司などの宇宙食化も模索されているという。「ゆくゆくは100品目以上の宇宙日本食をISSに供給したい」(福田氏)
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