アート作品から検索エンジンまで、ジャンルにとらわれることなく自由な発想で新たなライフスタイルを提案する「チームラボ」。最近ではau design projectのコンセプトモデルをデザインし、話題を呼んでいる。足りないものは自分たちで作る“DIY”精神を持つこの会社は、自分たちのオフィスインテリアも独自にデザインし、販売もしているという。
東京本郷、春日通りを少し外れた閑静な住宅地にあるチームラボのオフィス。扉を開けると、棚にディスプレイされた社員たちのCDジャケットが出迎えてくれた。
「社員が入社すると、それぞれのジャケットを作ってここに飾るんです。会社のエントランスって、ロゴが“ドン!”とあるのが普通だけど、チームラボの社風は“ひとりひとりの個性で1個の集合体ができる”ところにある。このCD棚は、それを表現しているんです」。
教えてくれたのはチームラボのオフィスプランニングを担当した、建築家の河田将吾さん。オフィスに入ると、その遊び心ある空間に、訪問時の緊張感はたちまち消え去っていく。インターネット時代にふさわしいフラットなコミュニケーションを目指す、同社の考え方が詰まった空間だ。
短針が1時間ごとに12本ある不思議な時計が、「世界がひとつの世界時計」。各短針には“TOKIO”“LONDON”“BAGDAD”と世界各地の地名が書かれている。分針と秒針は普通の時計と同じ1本ずつだ。
「例外もあるけど、基本的に時差は1時間ずつずれるだけで、分と秒は同じなんです。よく世界の時刻をたくさんの時計で表示したりするけど、あれだとそれぞれの時間がどうしても秒とか分単位でずれちゃう」。長さや重さの単位がどこでも同じように、時間も1つの単位としてリンクさせたい――そんな思いがこの作品を生み出した。
「時間は本来どこにいっても同じはずで、調節する必要はないほうがいい。その点でこの時計は世界で1番正確な時計。電波時計ではないから世界同時に時間はずれるけど(笑)」。なお、同じコンセプトのブログパーツを制作中で、無料で公開する予定とのこと。完成が楽しみである。
「“ユーザーがサーチしてマッチングすれば、自然と良いものが生まれる”という考え方を、猪子さん(チームラボ社長)は持ってる。だから初めて会ったとき、建築家の僕への態度はひどかったです。あっちいけみたいな(笑)。建築家はアーキテクチャ(構造)ありきの世界ですから。ユーザーが動かしたり、いじくったりするのはタブーの世界なんです」。
それでも、猪子さんと仕事を始めた河田さん。理由は「オモシロそうだった」から。「僕は僕なりに建築を信じてたし、向こうは“きらい”ときてる。これはモチベーションになりますよね」。
ユーザーによるマッチング――そのテーマが表れている「東京絵巻棚」は、小さなユニットの集合体で棚ができている。ひとつひとつの棚には東京をイメージした絵が描かれていて、これらを自由に組み合わせれば自分なりの東京を作ることが可能だ。「六本木が作りたければビルとタクシーの絵をたくさん繋ぎ合わせればいいし、皇居が作りたいなら木の絵を並べればいい。オフィスではパーテーションごとに違う町を作れば、面白いんじゃないかと思います」。
Web2.0が代表する、人それぞれがカスタマイズできるユーザー参加型のライフスタイル。それをバーチャルだけでなくリアルでも生かそうとする姿勢が、「東京絵巻棚」には表れている。
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