ウェブ時代を生きる僕らの、“コミュニケーション・インテリア”+D Style デザインインタビュー(2/2 ページ)

» 2007年08月28日 11時49分 公開
[山田祐介,ITmedia]
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書いてちぎれる机

photo 「めもですく」

 見るものを楽しませるデザインと、ひねりの効いた機能。しかし、そのコンセプトは決して奇をてらったものではなく、“目的に対して愚直”に作った結果生まれたものだ。

 机の天板がそのままメモ帳になっている「めもですく」は、会議中にノートを取ったりホワイトボードを使ったりすることの延長線上から発想されている。実際に、ミーティング中の「めもですく」を見せてもらうと、お互いのアイデアを共有する便利なツールとして、きちんと活躍していた。「“見せるため”にコンセプトを無理やりひねり出したりはしません。必要性や機能性があって、そこを愚直に追求する」。


photo 「ホワイトボードだと情報の伝達は一方通行。めもですくは、会議中に机を囲む参加者がアイデアを書き込んでいく情報共有型の打ち合わせに役立ちます」(河田氏)。使用方法はごらんの通り

 メモがいっぱいになれば1枚破り、使い切ったら新しいメモ天板を補充する――こうした“可変性”のある作品を作ることに最初は抵抗があったと、河田さんは振り返る。「建築の世界では完成してから変化する作品は評価されにくいし、僕もそう教えられていた。でもそれは海の向こうの評価軸であって、日本の価値観はそうじゃない」。朽ちるもの、変わっていくものにも価値を見出すのは、“木の文化”を持つ日本ならではの考え方でもある。

扉のない茶室

 帯状のゴムバンドで全面が覆われている「やわらか茶室」も、日本的な感性を取り入れた作品。中には2畳の畳が敷かれている。「決まった扉から入るのって、息が詰まる。どこからでも自由に入れるようにしたくて、考えたのがゴムだったんです。これならどこからでも入れるし、クリップで留めれば、好きな大きさの窓になる。日本の襖とかって、窓と扉の両方の役割を持っているけど、そういうエッセンスを取り入れています」。


photophotophoto “無礼講ルーム”に、いざ潜入。中には2畳のスペースが。もし、会社に訪問した際に「やわらか茶室」に通されたら……ちょっとドキドキしそうである

 オフィスに茶室というのも驚きだが、その目的は「無礼講ルーム」を作ることだと河田さんは語る。「茶室って、地位や身分も関係なくなるフラットな部屋なんです。武士も刀を外さないとは入れない。しかも少ない人数しか入れないし、会話は外に漏れないから、密なコミュニケーションをとることができる。茶室は戦国時代に一気に広まったけど、あの時代って戦に勝つために情報を得ることが重要だったから、茶室での腹を割った意見交換が重要だったんじゃないかと思います。そういう空間って、ビジネスの世界でも必要とされると思うんです」。

飾らず、溶け込ませるアート

photo 「四コママンガデスク」

 アーティスト「MUSTONE(マストワン)」のイラストが描かれた「四コママンガデスク」。日本には、襖に作品を描くなど“空間に作品をなじませる”文化があると考える河田さんが、「オフィスで“なじませられる”場所はどこかなって考えた時、まっさらな机が思いついた」結果生まれた作品だ。

 “四コママンガ”とある通り、1つの机に1コマが描かれ、4種類並べると4コマになる。「マンガは、作者より作品の名前が浸透する。それはメディアよりも先に大衆が評価するからだと思うんです。権威ではなくユーザーから評価されるスタイルは、チームラボが目指すものでもあるのと思うので、マッチングしやすい」。

 机ごとに違う絵が描かれているのは、“個”を大切にするチームラボらしい特徴だ。それぞれ毛足の長さを変えて、異なった肌触りを楽しめる椅子「はだいす」にも、そんな特徴が表れている。


photophotophoto それぞれ座り心地もちょっと違う「はだいす」。ほかにもいろいろなバリエーションがある

 コミュニケーションを活性化し、人の想像力を高めてくれるような空間を目指す――それがチームラボのオフィスに一貫するデザインフィロソフィーだ。そして、日本的な“移ろい”を持たせたインテリアには、カスタマイズの楽しさがあり、さまざまな空間にフィットする柔軟性がある。それらはインターネット社会という流動的で可変的な時代にマッチする、新しいインテリアのかたちでもあるのだ。

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