コラム
» 2007年10月10日 14時14分 公開

「自虐の詩」+D Style 最新シネマ情報

伝説的な4コマ漫画に「ケイゾク」「トリック」の堤幸彦監督が挑んだのが「自虐の詩」。前半は堤ワールド炸裂、後半は一転して感動の嵐。楽天的な空気感が映画の魅力となっている、どん底夫婦の奇跡のラブストーリーだ。

[本山由樹子,ITmedia]
photo (C) 2007「自虐の詩」フィルムパートナーズ

 ここ数年、漫画の映画化が流行っているが、いよいよ4コマまでもが映画になった。かつて週刊宝石で連載され、“涙なしでは読めない”と熱狂的なファンを生み出した業田良家の伝説的な4コマ漫画に「ケイゾク」「トリック」などで知られる堤幸彦監督が挑んだのだ。

 幸江と内縁の夫・イサオは、大阪・通天閣のふもとのオンボロアパートで暮らしていた。イサオは無口で働かず、ギャンブル三昧のヒモ男。そして、少しでも気に入らないことがあれば、ちゃぶ台をひっくり返す。ちゃぶ台をいくらひっくり返されても、隣に住むオバちゃんに別れなさいよと諭されても、パート先の食堂のオヤジからしつこくプロポーズされても、幸江はイサオを健気に愛し続ける。しかし、幸江の不幸&不運体質は今に始まったことではなかった。

 宮城県・気仙沼で生まれた幸江は、幼い頃に母親に捨てられ、父親は愛人との旅行費用を稼ぐため、銀行強盗をして捕まってしまう。独りぼっちになった幸江を唯一励ましてくれたのは、極貧の同級生・熊本さんだった。熊本さんに背中を押され、中学卒業と同時に上京した幸江に、それまで以上の不幸が怒涛のごとく押し寄せる。

 前半はいわゆる堤ワールド炸裂。パンチパーマの阿部寛が「でぇ〜い」と、ちゃぶ台をひっくり返すと、ご飯や味噌汁がスローモーションで鮮やかに宙を舞う。中谷美紀は「嫌われ松子の一生」の松子さんに続く薄幸役。鼻の脇にホクロをつけスッピンで登場し、この人はどこまで行ってしまうのかと少々不安に陥るほどの忘れがたい熱演をみせる。

 一歩間違えると辛気臭い話になりかねないが、幸江とイサオの様子も、幸江とダメ親父の関係も不思議なほどに楽天的。その空気が映画の魅力となっている。次々と繰り出される無茶な笑いの後、幸江の過去をフィーチャーする後半は感動の嵐。裏切りを通して浮かび上がる愛情や友情、そして人情がとても優しい眼差しで描かれ、幸も不幸も乗り越えた人生模様に泣かされるのだ。

 高校生たちが抱える心の傷を描いた青春群像劇「包帯クラブ」(公開中)、そして本作、来年には天才スシ職人が活躍する「スシ王子!銀幕版」が控える堤監督。どんなジャンルをも料理してしまう、そのふり幅の広さに驚かされる。

 どん底夫婦の奇跡のラブストーリー。原作は未見ながらベストセラーの理由が分かる気がする。

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(C) 2007「自虐の詩」フィルムパートナーズ

自虐の詩

監督:堤幸彦/原作:業田良家/脚本:関えり香、里中静流

出演:中谷美紀、阿部寛、遠藤憲一、カルーセル麻紀、竜雷太、名取裕子、西田敏行

配給:松竹

2007年10月27日より渋谷シネクイント、シネ・リーブル池袋ほか全国ロードショー



筆者プロフィール

本山由樹子

ビデオ業界誌の編集を経て、現在はフリーランスのエディター&ライターとして、のんべんだらりと奮闘中。アクションからラブコメ、ホラーにゲテモノまで、好き嫌いは特にナシ。映画・DVDベッタリの毎日なので、運動不足が悩みの種。と言いつつ、お酒も甘いものも止められない……。


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