コラム
» 2008年05月02日 08時00分 公開

二眼カメラの普及モデル、RICOHFLEX Holiday-コデラ的-Slow-Life-

ブローニーフィルムを使う二眼レフカメラ「RICOHFLEX Holiday」が手元にある。買ったわけではない。叔母の形見が、巡り巡ってやってきたのである。廉価版とは思えぬ作りに驚かされる二眼カメラの普及機を紹介。

[小寺信良,ITmedia]

 フィルムカメラというのはある意味終わりつつある文明なのであるが、カメラというものの試行錯誤と進化の過程すべてに製品が存在すると言っても過言ではない、幅の広い世界である。そんなことだから、多くの人は「こっから先に踏み込んだら帰ってこれないライン」というのを持っているように思う。

 筆者にとってのそういうラインは「フィルムが普通じゃない」というところである。そもそもフィルムカメラにはまったのは、価格がこなれた35mmフィルムをハーフで撮ればめっちゃお得、というようなところから始まっているので、そこにコストがかかるようならやってられない。

 しかし今ここにはブローニーフィルムを使う二眼レフカメラがある。買ったわけではない。叔母の形見が、巡り巡ってやってきたのである。


photo 紆余曲折を経て筆者のところに来たRICOHFLEX Holiday

 叔母が亡くなってもう7〜8年経つが、そのカメラは一応形見分けということで、義理の兄が引き取ったものだった。義兄が写真を撮るわけでもないので、そのままどこかへしまったままになっていたのだ。先日久しぶりに一緒に酒を飲んだときに、筆者が古いカメラをいじくっている話としたら、「そういえば古そうなカメラがあった……」と思い出したらしい。

 そんなわけで、使われなくなって何年経つやらわからないが、紆余曲折を経て筆者の元にやってきたのが、この「RICOHFLEX Holiday」である。

廉価版とは思えぬ作り


photo 2つのレンズの周囲をギヤにして連動させる

 リコーというメーカーはこれまでに何度か、カメラで大ブームを作ってきた。その最初が、二眼レフカメラのRICOHFLEXである。日本では戦後間もない昭和25年という早い時期に、二眼レフカメラブームが起こった。35mmフィルムが主流となる昭和32年頃まで、このブームは続き、RICOHFLEXは100万台以上が製造されたようである。

 ブームの要因はなんといっても、リコーが破格の安さで二眼レフカメラを製造・販売したからだ。昭和25年に発売され、ブームを作ったと言われる「RICOHFLEX III」が当時の価格で7300円。今の価格に直せば2万円から2万5千円ぐらいの感覚だろう。Holidayはそれから6年後の昭和31年に、競合他社の追従をかわすため、徹底したコストダウンで4900円という低価格で発売された。


photo フィルムボックスは全部がすっぽり外れる

 この年は、筆者の姉の生まれた年である。美容院を経営しながら生涯独身を通した叔母が、自分の娘のように姉をかわいがっていたことを思うと、おそらく姉の誕生に合わせて購入したものだろう。姉のアルバムを探せば、Holidayで撮影した写真が見つかるかもしれない。

 コストダウン以外にポイントがないと言われているHolidayだが、そこに至るまでの様々な工夫ポイントはそのまま引き継がれている。まず、ファインダレンズと撮影レンズをギヤで噛み合わせることにより、ヘリコイドを連動させてフォーカスを合わせるスタイルとした。これにより、ボディ構造が大幅にシンプルにできる。


photo 対面撮影もできるよう、蓋にスリットが設けられている

 ボディ部、ファインダ部、レンズ部、フィルムボックス部、裏蓋と完全に分離する、大胆なユニット構造となっている。各ユニットはシリーズ間で完全に互換性があり、ユーザーは自由に組み合わせる事ができた。

 さらにRICOHFLEX VIIで採用された、透視ファインダフレームの上蓋も、そのまま搭載されている。またアクセサリーシューも、前年に発売されたリコー35と同様、シュー内にフラッシュ接点を設け、コードレスとした。


photo 二眼では始めて接点付きのシューを採用

 レンズは従来機どおり、RHICOH ANASTIGMATの80mm/F3.5である。シャッタースピードは、B、1/25、1/50、1/100の4つしかない。絞りはF16までだが、レバーはそれ以上回る。おそらくF22ぐらいまでは絞れるだろう。絞りは9枚羽根で、これで廉価版なのだから恐れ入る。


photo シャッタースピードは1/100までしかない

 シャッターチャージは、真下にあるシャッターレバーを反対方向に少し倒すだけで完了する。カチャッと箱鳴りするシャッター音が軽快だ。

小寺 信良

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映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。


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