コラム
» 2008年05月19日 13時46分 公開

「ザ・マジックアワー」+D Style 最新シネマ情報

三谷幸喜の映画監督4作目となる「ザ・マジックアワー」。巨大セットの街で希代の役者バカ(けど大根)が繰り広げる“勘違い”が、物悲しくもあり、なんともおかしい。映画監督デビュー作「ラヂオの時間」以来の傑作で、あっという間の136分!

[本山由樹子,ITmedia]
photo (C) 2008 フジテレビ 東宝

 コンスタントに作品(テレビ含め)を世に送り出し、オリジナル・ブランド力で人気を得られる数少ない日本の映画人といえば、三谷幸喜。そんな彼の「THE 有頂天ホテル」に続く映画監督4作目が「ザ・マジックアワー」。これが、三谷監督のデビュー作「ラヂオの時間」以来の傑作であった。

 舞台は架空の町、守加護(すかご)。ギャングの子分・備後(妻夫木聡)は、ボス(西田敏行)の愛人・マリ(深津絵里)に手を出したことから、2人とも捕まってしまう。昔のギャング映画に出てくるような、ビシッとスーツをまとった強面の部下(寺島進)と、やたらと調子のいい手下(甲本雅裕)にリンチを受け、海に沈められそうになる。命が助かる唯一の条件としてボスが出したのは、凄腕の殺し屋、デラ富樫を連れてくること。デラは、守加護で勢力を伸ばしつつあるライバルのギャング(香川照之)が雇った殺し屋で、誰もその素顔を見たことがなく、伝説と化していた。

 期日が迫ってもデラは見つからず、窮地に陥った備後が思いついたアイデアは、売れない役者・村田(佐藤浩市)を「殺し屋役で自主映画に出演してほしい」とだまして、デラに仕立てあげること。何も知らない村田は、映画初主演、しかも憧れのギャング映画とあって、有頂天。マネージャー(小日向文世)の心配をよそに、乗り気で守加護にやって来るが……。

 映画セットの雰囲気溢れる町。どこか芝居がかった住人たちとギャングの一味。そこへやって来た希代の役者バカ(これがものすごく大根)。彼は、架空のカメラを意識したまま、延々と伝説の殺し屋を演じ続ける。勘違いから転がる、何とも物哀しいおかしさ。やはり最大の見どころはこの佐藤浩市で、日本が誇る名優が、キャリアの危機を恐れずに大根役者を演じるのだから、面白くないわけがない。

 タイトルの「マジックアワー」とは、映画の専門用語で、夕暮れのほんの一瞬のこと。太陽が地平線の向こうに落ちてから、光が完全になくなるまでのわずかな時間にカメラを回すと、幻想的な画が撮れるという。映画は、この言葉からイメージした、“人生のマジックアワー”をモチーフにしている。つまり、信念を曲げず、自分の理想を貫こうとする人には、その姿がカッコよかろうが悪かろうが、いつしか輝く一瞬がやってくるということ。ベタなようでいて、グッとくるんですよ、その姿が。ラストもスカッと、あっという間の136分です!

photophoto (C) 2008 フジテレビ 東宝

ザ・マジックアワー

監督・脚本:三谷幸喜

出演:佐藤浩市、妻夫木聡、深津絵里、綾瀬はるか、西田敏行

配給:東宝

2008年6月7日より全国ロードショー



筆者プロフィール

本山由樹子

ビデオ業界誌の編集を経て、現在はフリーランスのエディター&ライターとして、のんべんだらりと奮闘中。アクションからラブコメ、ホラーにゲテモノまで、好き嫌いは特にナシ。映画・DVDベッタリの毎日なので、運動不足が悩みの種。と言いつつ、お酒も甘いものも止められない……。


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