強いネコ顔が印象的な近年のプジョーだが、その流れを継承し、より鮮烈な強さを持った308が日本に上陸する。約80年前に誕生した201以来、3ケタの数字を車名に持つモデルとして初めて第8世代に駒を進めたのが308だ。 308は、プジョーが言うところの「Feline」(猫科の動物の意)デザインを最初に市場に送り出した207よりも、陰影を強調したフロントフェイスを持ち、その存在感はちょっと他に類を見ない。環境への配慮から、温暖化ガス排出量の少ない1.6リッター直噴エンジン+ターボが日本に導入されたが、本国でも2リッターエンジンの設定はない。フランス車もちゃんと、エコしているのである。 |
今回試乗したのは上級グレード「Cielo」に特別内装“インテグラル・レザー”を装備したモデル。 ドアを開けた瞬間から、匂いたつように上質なインテリアに目を奪われる。シートのみならず、インパネやドアショルダーにも贅沢に本革があしらわれていて、落ち着きがありつつ、しっとりと濡れたような質感が心地よい。メーターパネルは白の文字盤にシルバーのリング。このリングはエアコンの吹き出し口にも使われ、統一感ある美しさだ。 |
さらにこのエアコンの吹き出し口には207にも採用されたパフュームディフューザーが見られるが、ルーバーと一体化したデザインで、質感は207のそれより格段に上がっている。上質な空間に香りの演出……粋なことこの上ない。これが“エスプリ”というものだろうか。 ただ、試乗車で試した“スプリングフラワー”の香りはかなり強い。フランス人の好みに合わされているのだろう。 |
さて、試乗をして一番感動したのは、そのクリアなステアフィールである。 電動アシストとなった207とは違い308には電動油圧式が採用されたのだが、軽いのはもちろん、ドライバーの意思を読んだかのように応える滑らかさを持っている。速度を上げてコーナーに進入しても、ふくらむことなく美しくラインをトレースする。 |
307から継承されたプラットフォームもプジョーらしいしなやかさを保ち、ロールは大きめではあるが、コーナリング中に「おっと」と感じるような不安定さが排除されている。4輪がしっかりと路面をとらえる、いかにもフランス車らしい味付けで、かなり好感度が高い。 しかし走行時、気になるのは効きすぎるブレーキで、俗に言う“カックンブレーキ”になってしまうこと。慣れるまでは少し繊細な操作を意識したほうがいいだろう。 |
そして、進化を感じたのが4速ATである。 やはりユーザーが一番気になるところは、4速しかないオートマチックの静粛性や加速感だろう。確かにこれまでのプジョーの4速ATは変速のタイミングが早く、高い速度域で走行すると4速で頭打ちになるエンジンの音が車内に響いてしまっていた。都市部で走行するには問題ないが、高速道路の走行などでは振動・車内音に若干の不満が残ったことは否めない。 しかし、308ではその快適性が飛躍的に向上していた。 2速から3速まで不快でない程度に引っ張り、キチンと高い速度までつないでくれる。4速ATという先入観なく乗ってみれば、気付かないほどかもしれない。 また、10%向上したボディ剛性も、快適な走りを支えている。もともと剛性の高さには定評のあるプジョーだが、それをさらに改善したことにより、乗り味の上質感を醸し出すことに成功した。 |
さらにプジョーといえばシートの良さについても触れなければならないだろう。個人的にも同社のシート形状が一番気に入っている。新デザインだというこの308のシートに関しても、やはり期待は裏切られなかった。レザーでありながらサイドサポート性の高い、包み込まれるような形状は、コーナリング時に体がブレることなく疲れも少ない。プジョーならではの柔らかな座り心地も健在だ。フロントシートバックを削ったことにより、後席のニースペースの拡大を図る工夫もなされている。 |
308は207のお兄さんブランドであるが、そのお兄さんはずいぶん大人びて帰ってきた。207が弾けた若い印象だったのに比べ、308は明らかに熟成されている。307をベースに、より煮詰められた細部が印象的だった。 また余談だが、この流麗な308フェイスには、ハッチバックよりもクーペのほうが似合いそうだなぁ、と思っていたら、2+2のクーペモデルである308RCZが2009年フランクフルトモーターショーで発表になるという。 非常に速いスピードでラインアップを充実させてきているプジョー。こちらも楽しみである。 |
取材・文/今井優杏
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