コラム
» 2008年06月23日 12時50分 公開

勝手に撮れるが自由度が少ないRICOH AUTO35Vの撮影-コデラ的-Slow-Life-

オートでしか撮れないカメラの修理は難しい。自動機能が上手く働かなくなったときにまったく役に立たなくなるからだ。「RICOH AUTO35V」も、なんとか撮影できるようになったのだが……。

[小寺信良,ITmedia]

 なんとか普通に動くようになった「RICOH AUTO35V」。改めて動作確認のために撮影に出かけた。

 シャッターを半押ししたときに露出計の針が弾かれないかどうか、確認しながらの撮影だったが、露出OKの時は何も気にする必要はないという設計のため、針の動きが見えづらい。こういうものは、ちゃんと動くときは手間いらずだが、動きが怪しくなるとユーザーがなんとかする手段がほとんど無い。

 たぶん今のデジカメには、その反省が生かされているのではないかと思う。本当にオートでしか撮れないカメラはほとんど無いんじゃないかと思うが、それは自動機能が上手く働かなくなったときにまったく役に立たなくなるのを回避するため、ある程度マニュアルでも撮れるようになっているのではないだろうか。RICOH AUTO35Vが生まれた時代は、またAUTOであること自体が驚異的だった頃で、その発想に至るにはまだ十数年の歳月が必要だったのだろう。


photo ストロークが深いシャッターレバー

 フィルムの巻き上げは、すでに定評ある方法なので楽だが、やはりこのシャッターレバーは、デザイン的なポイントではあるものの、実際の撮影では難物だ。レンズ脇に付いているため、本体を両脇からホールドすると結構遠い。中指を伸ばして下げることになるが、結構手ブレしやすい。

 この当時、シャッターを作るメーカーはカメラメーカーとは別だった。当時シャッターのメーカーとして有名だったのは、国内ではSEIKOSHAすなわちセイコー、ヨーロッパではCOMPURブランドのDeckel社がよく知られている。シャッター部分だけは別途組み込みになるから、レンズ脇にシャッターレバーがあるわけだ。シャッターレバーがボディ上部に付くようになるのは、それなりに凄いことなのである。

一応直ったが…


photo 妙に濃い発色がポイント

 さて実際に現像から上がってきた物を見てみると、順光で撮った物はそれなりに露出が合っているが、室内の逆光気味のものはあまり上手くない感じがする。どうも点光源のような物に対しては、露出がきちんと計れない傾向があるように思う。こればかりはセレンの特性なのかもしれない。

 最短距離がいくつなのか、はっきりしたデータはないのだが、やはり80センチから1メートルぐらいと考えた方が良さそうだ。一応3段階のゾーンフォーカスだが、もしかしたら距離調整がズレている可能性もあり得る。


photo エッジが立たず、ふんわりした描写

 ただ分解して分かったのだが、これの距離調整をするには、何か別のノウハウを入手しないと無理である。というのもオートしかないこともあって、このカメラにはバルブモードがない。シャッターを開きっぱなしにしておくことができないのである。

 バルブモードが無くても、レンズの後玉の後ろにシャッターがあれば、何かを挟み込んで開けたままにすることもできるのだが、AUTO 35Vのシャッターはレンズ群の中間にあるので、どうしようもない。


photo やはり最短は80センチ〜1メートルぐらいと考えるべきか

 描画には、独特の味があると評価する人もあるようだが、おそらくこのような描写を求めるならば、この後に出た「RICOH AUTO HALF」のほうが、カメラとして優れている。大きさ半分で2倍撮れて、同じような描写だ。

 このRICOH AUTO 35Vはあまり売れなかったようだが、それは同年発売されたキヤノンの「Canonet」が爆発的にヒットしたということもあるだろう。これも以前1000円で転がっていたジャンクを修理したことがあるが、機能的にはほぼ同じ、ただCanonetは距離計連動である。AUTO 35Vの当時の価格が分からないので単純な比較はできないが、やはりこのスタイルは少しだけ、未来すぎたのかもしれない。

 しかしこれがなければのちに大ブームとなり、最近でも少しブーム再燃したRICOH AUTO HALFは誕生しなかったわけである。今後これにも言及することはあろうかと思うが、フィルムの巻き上げさえゼンマイでやってしまうと言う、スーパーフルオートカメラだ。

 この自動化に賭ける情熱が日本の産業を動かし、のちのPCやロボット大国へつながったと言っても、言い過ぎではないだろう。

小寺 信良

photo

映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。


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