貧困のない公正な社会を目指すために、途上国からの輸入を生産者と直接行い、公正な対価を支払って取引するというのが“フェアトレード”。フェアトレード商品を選択することでショッピングそのものが社会貢献につながる――そんな意識の下、「どうせ買い物をするなら、フェアトレードのものを選ぼう」と、20代〜30代の間に一種の“ブランド”的価値を持った広がりを見せている。 フェアトレードに注目が集まる中で、今年5月に「おしゃれなエコが世界を救う 女社長のフェアトレード奮闘記」(日経BP社)を出版し、フェアトレードのパイオニアと呼ばれるサフィア・ミニーさんが代表を務める「ピープル・ツリー」は、日本で人気の高いフェアトレードブランドのひとつである。 |
サフィアさんがフェアトレード活動を立ち上げたのは、日本のバブル経済と深い関係がある。バブル時代にイギリスから来日したサフィアさんは、まだエコ情報を得ることが難しかった当時の日本の状況に一念発起し、1991年にNGO「グローバル・ヴィレッジ」を発足した。 当初の活動は、環境問題や国際協力についての情報発信を目的としていたが、93年にはオリジナルのフェアトレード商品を開発するようになり、95年にフェアトレード部門が法人化、98年には直営店オープン、2003年にはIFAT(国際フェアトレード連盟)からフェアトレード団体として認証を受けるなど、世界の環境問題への取り組みの活発化と歩みを同じくしてブランドの人気も高まってきた。 同ブランドの最大の特徴は、上記の著書の題名にある“おしゃれなエコ”が示す通り、アジアンやエスニックなテイストが多いという従来のフェアトレード商品のイメージを塗りかえる、トレンドを意識したおしゃれなデザインにある。 |
「エコロジーやロハスがメディアで多く取り上げられるようになり、消費者の方々の意識が高まっていますが、フェアトレードをご存知ない方にも手にとっていただけて、『ステキな商品を買ったら、知らずにフェアトレードに貢献していました』と言っていただけるクオリティの商品を提供していくのが、私たちの理想です」(広報・髙井藍子さん) 現在、同社の貿易パートナーは、アジア、アフリカ、南米などの15カ国、約50団体に渡り、6名の専属デザイナーによって開発された衣料品や雑貨、アクセサリーなどを発注している。昨年春には、ハイファッション雑誌である「VOGUE NIPPON」との誌上コラボレーション企画に、アメリカ、イギリス、日本の4ブランドとコラボレーションし、フェアトレードとモードの融合を実現。 |
「フェアトレードの思想からも、現地で豊富に採れる天然素材と手工業や刺繍などの伝統技術をマッチングさせながらトレンドを取り入れ、できるだけ長く大切に使って頂けるモノづくりをしていくのがブランドポリシーですので、商品開発から実際のその商品が店頭に並ぶまでのスパンも9〜10カ月と、他のアパレルメーカーさんより長いと思います。長年のパートナーシップのおかげで、現地の職人の方々も日本人が好む縫製やデザインの繊細さを理解してくれるようになり、技術もレベルアップしてきました」(髙井さん) とはいえ、途上国との直接貿易は、災害やインフラの不備、政情不安定による遅配や作業のストップなど、不安要素も多い。それでも、いや、だからこそ、フェアトレードブランドの魅力は「商品の向こうにある、作り手の顔や生活が想像できること」と髙井さんは語る。 |
「当店のお客様の約8割は女性です。カップルで訪れたり、男性へのプレゼントとして購入していかれる方も多いです」 女性の方が認知度が高いというフェアトレードブランド。ライフスタイルの彩りに取り入れたり、彼女へのプレゼントに選択すれば、社会貢献に参加できるほかに、ふたりの距離がより縮まる話題づくりとしても一役買うことができるに違いない。 |
|
|
トップス/何度も染めの工程を繰り返して深い色合いに仕上げた、手織りの風合いが素敵なクルタ。コットン100%。インドより。メンズ・藍染め半袖クルタ 6900円 パンツ/手織りのストライプ生地が心地よい、ゆったりとしたシルエットのパンツ。コットン100%。ネパールより。メンズ・サッカーストライプ・イージーパンツ 6900円。 |
取材・文/似鳥 陽子
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング