「20世紀少年」+D Style 最新シネマ情報

» 2008年09月02日 16時23分 公開
[本山由樹子,ITmedia]
photo (C)2008映画「20世紀少年」製作委員会

 全巻の累計発行部数が2000万部を超える浦沢直樹の長編コミック「20世紀少年」を、日本映画としては破格の総製作費60億円、全3部作で実写化した大河SFの第1弾。子供たちの単なる“空想のいたずら書き”が、人類破滅の大事件へと発展するプロセスを追いかける。大役を担ったのは「自虐の詩」「ケイゾク」「トリック」などで知られる堤幸彦監督。脚本には原作者の浦沢直樹自らが参加している。主人公・ケンヂを演じる唐沢寿明をはじめ、常盤貴子、豊川悦司、石塚英彦、香川照之らキャラクター完全踏襲のそっくりキャスティングも話題。

photo 謎に包まれた“ともだち”(C)2008映画「20世紀少年」製作委員会

 1997年、ロックスターになる夢を諦めて実家の酒屋を継いだケンヂは、失踪した姉の娘カンナを育てながら、今はコンビニのしがない店主となっていた。だが、事件は突然起きた。得意先の一家が失踪し、幼なじみのドンキーが謎の死を遂げ、世界では細菌テロが発生。ケンヂは、その裏に“ともだち”と呼ばれる謎の覆面教祖が率いる怪しい教団がいることを知る。

 さらに、幼いころ原っぱの秘密基地で、仲間たちと遊びで書いた「よげんの書」の通りに、事件が起きているのに気づく。そこには悪の組織の世界征服計画が書かれ、このまま進めば、人類は2000年の大晦日に細菌兵器を撒き散らす巨大ロボットによって滅ぼされてしまう。「ケンヂくん、あそびましょ」と挑発する“ともだち”の正体とは? ケンヂは原っぱの仲間たちを招集し、人類の存亡を賭けた闘いに身を投じていく。


photophoto (C)2008映画「20世紀少年」製作委員会

 相当なプレッシャーを背負っていたと思われる堤監督は「原作を忠実に」をモットーに、ストーリーはもちろん、コマのアングルまで似せて撮ったらしい。忠実に再現したのを歓迎する派と、原作を大事にし過ぎて面白みがないと否定する派と、原作ファンによって好き嫌いが分かれそうだ。個人的には、せっかくなら、もう少しハジけて、映画化の妙技を味わいたかったと思う。だが、堤節を封印した安定感のある演出は最後まで飽きさせず、国会議事堂や羽田空港の爆破など、CG映像もリアルそのものなので、それだけ十分に見応えはある。

 あくまで3部作の序章なので、シリーズ全体を語るのは早計というもの。原作とは違うラストが用意されているとのことなので、2009年1月31日の第2章、2009年秋公開予定の最終章を期待して待ちたい。

20世紀少年

監督:堤幸彦/原作・脚本:浦沢直樹/脚本:福田靖

出演:唐沢寿明、豊川悦司、常盤貴子、香川照之、石塚英彦、宇梶剛士、佐々木蔵之介、生瀬勝久、石橋蓮司、宮迫博之、黒木瞳

配給:東宝

8月30日より全国東宝系ロードショー



筆者プロフィール

本山由樹子

ビデオ業界誌の編集を経て、現在はフリーランスのエディター&ライターとして、のんべんだらりと奮闘中。アクションからラブコメ、ホラーにゲテモノまで、好き嫌いは特にナシ。映画・DVDベッタリの毎日なので、運動不足が悩みの種。と言いつつ、お酒も甘いものも止められない……。


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