筆者的には妙にツボにはまったArgus C3だが、写りの方はどうだろうか。早速撮影に出かけた。一応距離計連動ではあるが、フォーカス用の二重像はそれほど見やすくはない。丹念に合わせていかないと、そこで合っているのかどうか迷う作りである。
そもそも距離計とは言っても、レンズそのものがスクリューマウントで、回しきったところでネジをはめるだけという作りなので、近距離は正確なところはあまり当てにならない。一応の目安と考えて、絞り気味で撮った方が無難だろう。
いや実はフィルム一本絞り開け気味で撮ったのだが、フォーカスが全然合ってなくてダメだった。一応距離計は無限遠で合っていることを確認したのだが、近距離は後ピンの傾向があるようだ。あとでもう少しちゃんと調整してみよう。
2本目は比較的絞って撮ったので、そこそこの写真が撮れた。あいにくの雨上がりだったが、空気感も良く出ている。ただめいっぱい絞ってもF8までしかないので、深度はそれなりにある。廉価な大衆モデルということもあり、絵に味はあるもののキレはなく、どことなく甘い感じもある。
露出は、シャッタースピードがちゃんと書いてなくて分からないのだが、一応実写した限りでは、8、7、6、5の順で、1/300秒、1/200秒、1/100秒、1/50秒となっているようだ。それ以下に関しては手持ちでは無理そうなので、撮影していない。露出計を見ながら適当に案分して撮ったが、それほど外してはいなかった。
撮れた絵を見ると、なんとなく現在のArgus C3の立ち位置が分かる。一世を風靡したということで資料性はあるが、無理に手に入れるほどでもない、という微妙なところなのである。
若干ブレた感じにも見えるのは、やはり実際にブレているのだと思う。というのも、やはり真四角で重量も相当あるので、シャッタースピードが遅くなると手ブレの影響も増える。1/100秒より遅くなると、ちょっと手持ちでは難しくなるようだ。また、深く握ると、シャッターを押した瞬間チャージレバーに指を弾かれるので、よりブレることになる。いずれ三脚を使って、ぎっちり勝負せねばなるまい。
巻き上げはセルフコッキングではないので、撮影したあと巻き上げておく必要があるわけだが、撮影しているうちに「あれ? 今巻き上げたかな」と不安になる。さすがにブローニー判ほどにはフィルムは高くないのが救いだが、27枚で1回巻き上げ忘れの多重露光、2回巻き上げすぎの空白コマがあった。アメリカではフィルムは相当安いと聞くが、日本人的にはもったいない気がする。
そういうところも含めて、日本人的なデリカシーからはもっとも対極的なところに位置するカメラなのだなぁと思う。
映像系エンジニア/アナリスト。テレビ番組の編集者としてバラエティ、報道、コマーシャルなどを手がけたのち、CGアーティストとして独立。そのユニークな文章と鋭いツッコミが人気を博し、さまざまな媒体で執筆活動を行っている。最新著作はITmedia +D LifeStyleでのコラムをまとめた「メディア進化社会」(洋泉社 amazonで購入)。
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