スタローンの無名時代の出演作としても知られるカルトムービー「デス・レース2000年」(1975年)は、とんでもないカーアクションだった。製作は当時人気絶頂期にあったB級映画界の神様、ロジャー・コーマン。近未来のアメリカで大陸横断レースが行われ、人をひき殺すとボーナス得点、しかも大人よりも子供や老人といった弱い者をひいた方が点数が高いという、何とも不謹慎で倫理観ゼロの作品だった。「バイオハザード」「エイリアンVS.プレデター」のポール・W.S.アンダーソン監督と、「トランスポーター」「アドレナリン」のジェイソン・ステイサムがそのリメイクに挑んだのが、この「デス・レース」だ。
「デス・レース2000」を忠実にリメイクするのは、今では当然不可能(当時作られたのがむしろ奇跡)。ということで舞台は刑務所内。凶悪犯罪が増えすぎて政府の手には負えず、今や刑務所は民間人の経営に委ねられていた。その中でも極悪犯ばかりを収容しているのが孤島の刑務所ターミナル・アイランド。そこでは全世界の人々を熱狂させているカーレースが開催されている。そのレースの模様はリアルタイムで中継され、高い視聴率を誇っていた。
そこに投獄されたのが元スゴ腕レーサーのエイムズ(ジェイソン・ステイサム)。貧乏ながらも妻と子供と幸せに暮らしていたが、何者かにハメられ、妻殺しのぬれぎぬを着せられてしまう。そんな彼に冷酷な女刑務署長ヘネシー(ジョアン・アレン)は釈放=自由というエサをちらつかせ、レース参加を強要する。
囚人たちがTVショーに参加させられて生死を賭けた殺人ゲームを行うといえば、シュワちゃんの「バトルランナー」。本作も似たようなもんなのでストーリーに新鮮味はないが、この際それはどうでもいい。アンダーソン監督はアナログのカークラッシュこそが映画の華と心得ていて、マシンガンやら追尾ロケットやらを搭載したモンスター改造車が、あっちでもこっちでも激突し、破壊され、爆破のオンパレード。視聴者をつなぎとめるために、女刑務署長もさまざまな罠を仕掛けてくる。
レーサーの隣にはナビゲーターと称して色っぽいお姉ちゃん(女囚)が無意味に同乗するという、B級映画お約束のサービスシーンもある。評論家からはボロボロに言われそうだが、これでもか、というくらいのカークラッシュの痛快さと高揚感が味わえる1本。それに徹底したアンダーソン監督の潔さにも拍手。たまにはこんなB級映画の楽しさに触れてみるのもいかがでしょうかね。
監督・脚本・原案:ポール・W.S.アンダーソン/製作総指揮:ロジャー・コーマン、デニス・E・ジョーンズ、ドン・グレンジャー、ライアン・カヴァノー
出演:ジェイソン・ステイサム、ジョアン・アレン、イアン・マクシェーン
配給:東宝東和
11月29日より有楽座ほか全国ロードショー
本山由樹子
ビデオ業界誌の編集を経て、現在はフリーランスのエディター&ライターとして、のんべんだらりと奮闘中。アクションからラブコメ、ホラーにゲテモノまで、好き嫌いは特にナシ。映画・DVDベッタリの毎日なので、運動不足が悩みの種。と言いつつ、お酒も甘いものも止められない……。
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