オトナ都市「香港」、世界遺産の街「マカオ」特集 香港・マカオ(2/3 ページ)

» 2009年03月25日 20時00分 公開
[ITmedia]
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  • 西洋と東洋が出会った街マカオの世界遺産を訪ねる
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西洋と東洋が出会った街マカオの世界遺産を訪ねる
ギア要塞の絶景とモンテ砦の美少女

 何度来ても飽きない、奥深い魅力をもった街・マカオ。そんな魅力の中から今回は“マカオの世界遺産”に注目してみたい。

 マカオは東京の品川区とほぼ同じ面積の小さな街だが、その中になんと30カ所もの世界遺産がある。ユネスコ登録が2005年と比較的新しいため、意外と知らない人もいるかもしれない。しかも、世界遺産に登録された「歴史市街地区」は端から端まで約2キロメートルしかなく、1日で30カ所のすべてを巡ることもできる。

 筆者が最初に訪れたのは、マカオの街全体が見渡せる、海抜92メートルの高台にある「ギア要塞」だ。アニメファンや軍事おたくなら“要塞”という言葉にときめくだろうが、そういう意味での期待は裏切られる。ギア要塞は、まるで地中海にあるような、美しい西洋風の灯台と教会である。青空をバックにして、こぢんまりと建つ灯台の曲線とその横の三角形の教会のバランスは絶妙。雑然とした大都会香港とはうってかわって、すがすがしい気分にさせてくれる。

ギア要塞の東望洋燈塔と聖母雪地殿教堂。西洋式灯台としては中国で最も古い
ギア要塞の東望洋燈塔と聖母雪地殿教堂。
西洋式灯台としては中国で最も古い
ギア要塞から見たマカオのフェリーターミナル
ギア要塞から見たマカオのフェリーターミナル

 といっても、やはり要塞である。付近には大砲や防空壕跡があり、地下トンネル内にはポルトガル軍の軍服や当時の写真の展示もある。さらに教会の内部では、約300年前のフレスコ壁画を堪能できる。

ふもとの防空壕には兵器や迷彩服、写真などが展示 聖母雪地殿教堂では祭壇のほかフレスコ画を見られる
ふもとの防空壕には兵器や迷彩服、写真などが展示 聖母雪地殿教堂では祭壇のほかフレスコ画を見られる

 ギア要塞の高台を降りて約500メートル西に進むと「モンテの砦」に到着する。こちらも17世紀初頭にポルトガル軍が作った軍事施設で、城壁で囲まれた小高い丘のあちこちには大砲が残っている。そして砦からは、マカオ世界遺産の代表でありランドマークともいえる「聖ポール天主堂跡(大三巴牌坊)」を眺められる。

モンテの砦にある中央大炮台 聖ポール天主堂跡(大三巴牌坊)
モンテの砦にある中央大炮台 聖ポール天主堂跡(大三巴牌坊)

 聖ポール天主堂は1637年に建てられたキリスト教会だ。ただし、火災によって教会のほとんどが焼け落ち、建物正面のファサード部分しか残っていない。横から見ると非常に薄く、まるで映画や舞台セットの書き割りのようである。その奇妙なたたずまいが逆にひと目を引き付け、ファサードに施された彫刻を際立たせている。

7つの頭を持つ龍
7つの頭を持つ龍
女性の肉体をした悪魔
女性の肉体をした悪魔

 ギア要塞の高台を降りて約500メートル西に進むと「モンテの砦」に到着する。こちらも17世紀初頭にポルトガル軍が作った軍事施設で、城壁で囲まれた小高い丘のあちこちには大砲が残っている。そして砦からは、マカオ世界遺産の代表でありランドマークともいえる「聖ポール天主堂跡(大三巴牌坊)」を眺められる。

モンテの砦から見た大三巴牌坊。薄い! 大三巴牌坊からの眺め
モンテの砦から見た大三巴牌坊。薄い! 大三巴牌坊からの眺め
モンテの砦で香港美人に遭遇 大三巴牌坊のすぐそばイエズス会記念広場も世界遺産だ
モンテの砦で香港美人に遭遇 大三巴牌坊のすぐそばイエズス会記念広場も世界遺産だ

 ちなみに、モンテの砦のそばには観光バスが乗りつけ、この付近一帯はふだんから世界中の観光客でにぎわっている。上の左の写真は、香港から遊びに来たという女性。大砲の前でこころよく写真撮影に応じてくれた。香港のような都会では見知らぬ人とコミュニケーションを取るのはなかなか難しいが、こうした観光地なら気楽に会話を楽しめる。もちろん英語または中国語が必須だが、単なる遺産巡りだけでなく、人との触れ合いこそが旅の醍醐味である。

マカオ世界遺産のとっておきの楽しみ方

 聖ポール天主堂跡から歩いて南に進むと、イエズス会記念広場や聖ドミニコ教会、盧家屋敷、カテドラル広場、セナド広場(議事亭前地)、三街會館などの世界遺産が続々と現れる。世界遺産の周りには、土産物屋や露天商、カフェなどがひしめき、さながら世界遺産の竹下通りといった状態だ。

バロック様式の聖ドミニコ教会 柱のデザインが美しい大堂(主教座堂)
バロック様式の聖ドミニコ教会 柱のデザインが美しい大堂(主教座堂)

 さらにメインストリートの新馬路を越えると、民政総署や聖オーガスティン広場、ロバート・ホー・トン図書館、ドン・ペトロ劇場、鄭家屋敷、媽閣廟などなど、世界遺産は延々と続く。そのほとんどは拝観料はかからず、一部の建物の内部以外は見学や撮影が自由にできる。スタンプラリーの感覚で全遺産を制覇するのもいいし、あらかじめ下調べをして興味のある範囲をまわるのもいいだろう。

大堂の内部には白壁とステンドグラス 南欧スタイルの民政総署とセナド広場
大堂の内部には白壁とステンドグラス 南欧スタイルの民政総署とセナド広場

ネオクラシック+マヌエル様式の仁慈堂大楼
ネオクラシック+マヌエル様式の仁慈堂大楼

 中でもお勧めのひとつは、セナド広場内にある「仁慈堂大楼」だ。ここは16世紀に慈善福祉施設として作られた新古典様式の建物。現在の1階は公証役場となっているため見学は不可だが、2階の仁慈堂博物館は入館料5パタカで一般開放されている。

 館内には肖像画や宗教画、古文書、陶磁器などが展示され、ポルトガルの大航海時代の歴史を目で楽しめる。受付のおじさんはやたらと親切で、ここから撮れと言わんばかりに館内や展示品の見栄えのいい撮影アングルまでご指示いただける。

セナド広場のモザイク状カルサーダス(石畳) 仁慈堂の2階にある博物館 落ち着いた雰囲気を味わえる穴場
セナド広場のモザイク状カルサーダス(石畳) 仁慈堂の2階にある博物館 落ち着いた雰囲気を味わえる穴場

またベランダからはセナド広場を一望でき、モザイク模様にタイルを敷き詰めた広場の石畳を眺める場所としても絶好だ。入り口はやや奥まった場所にあるため、意外と入館者は少なく、竹下通りの喧騒から一息付くための穴場ともいえる。

 もうひとつお勧めの楽しみ方は、これらの世界遺産エリアを昼間ではなく夜に訪れることだ。夕方を過ぎると建物の内部には入れなくなるが、その代わりに鮮やかにライトアップされた世界遺産群を満喫できる。多くの観光客は日帰りで香港に帰ってしまうのか、あるいはカジノなどのナイトスポットに繰り出すためか、夜の世界遺産近辺は、昼間に比べてめっきり人の数が少なくなる。ゆったりした気持ちで壮大な建築物を鑑賞し、歴史に思いをはせるには、夜の世界遺産こそ狙い目だ。

夜のセナド広場 ライトアップされた仁慈堂
夜のセナド広場 ライトアップされた仁慈堂
聖ポール天主堂跡 イエズス会記念広場 大堂(カテドラル)広場
聖ポール天主堂跡 イエズス会記念広場 大堂(カテドラル)広場

取材・文・撮影/永山昌克

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