それはヤボというものだ――リコー「GXR」(3):矢野渉の「金属魂」的、デジカメ試用記
カメラマン・矢野渉氏が被写体への愛を120%語り尽くす連載「金属魂」。プライベートで長く「GX100」を愛用する矢野氏が「GXR」へ施すカスタマイズとは。いまさらデジカメに単体露出計が必要? それはヤボというもの。
実は、僕はリコーのGX100を愛用している。その理由は24ミリからのズームレンズが使えることと、質感の良さ、この2点に尽きる。24ミリは僕の最も好きな画角で、スナップはほとんどこれだ。ノーファインダーでの撮影もしやすい。
GXRのS10 24-72ミリレンズユニット「RICOH LENS S10 24-72mm F2.5-4.4 VC」がこのGXシリーズの後継となるようなので、体はちょっと大ぶりだが、僕がいつもGX100で遊んでいるカスタマイズをGXRにも施してみようと思う。
キャンディッドフォトと称される、何気ない写真を切り取るには、カメラをなるべく目立たせないことが必要である。
不思議なもので、人間は視界に目立つ文字があると本能的に読みに行ってしまう。カメラのエンブレムなどは特に目立つので、カメラを向けたときに被写体が怪訝(けげん)な表情になってしまうのだ。
だから僕のGX100は、レンズや本体の刻印を、黒のパーマセルテープを貼りつけて消してある。フロントの印象が引き締まり、一回り小ぶりに見えるのでお勧めだ。GXRにも試してみる価値はあるだろう。
人によっては細かい紙ヤスリでこすって消してしまったりもするが、僕はそこまでやるのはあまり好きではない。何かの意図をもって作られたモノを傷つけるのは、作った人間に対して失礼に当たると考えるからである。
道具をキレイに使いたいと思う人にとって、ケースは必需品だ。しかし、純正で用意されるセミハードケースやソフトケースは概して肉厚のものが多く、せっかくハンドリングのいいカメラが分厚い感じになってしまう。
いろいろと試行錯誤した末、僕は写真にあるソフトケースを愛用している。これは富士フイルムの高級コンパクトカメラ「KLASSE」が発売された時に初回ロットにのみ添付されたケースだ。皮の厚みが絶妙で、ナメシもていねいにされているので手触りがいい。また大きさも、大きめのコンパクトデジカメが入るぐらいで使い回しがきく(ちなみにDSのケースにも使える)。GXR+S10のサイズだと少々キツイが、ぎりぎり使える。
このケースの良いところは、撮影までのタイムラグが短いことだ。ベロアをはがして下に引き抜けば、すぐに撮影に入れる。ケースは丸めてポケットへ突っ込めばOKだ。
中古カメラ店を気をつけてのぞいていると、ときどき出物があるので、ぜひ手に入れることをお勧めする。
外部ストロボは、なるべくかさばらないものがいい。GXRに取り付けるストロボが、本体並に大きいなどということがあってはならない、と僕は思う。バランスが悪いとせっかくのデザインが間抜けに見えるからだ。
リコー純正のクリップオンストロボはシリーズ汎用であり、特にデザインされているものではない。また、少しだけ大柄だ。そこで僕はLeica CFというストロボをGX100用に使っている。全体に薄く、軽く、GN(ガイドナンバー)は20あるからスナップには充分である。
このストロボはどう見てもパナソニックのPE-20Sという機種と同型だ。おそらくOEM生産品だろう。ただ、本家のデザインが全体に曲面のボディなのに対して、Leica CFは面取りしたような直線のデザインだ。これが少しレトロなデザインのカメラにベストマッチするのである。
GXRに取り付けてみると、果たしてこれ以上のバランスはないほどに似合う。GXRの角張ったボディと、CFの直線のデザインがリンクしている感じだ。
ただし、このストロボは照射角が35ミリまでしかカバーしない。PE-20S用のワイドパネルを手に入れて改造して取り付ければ24ミリまでカバーするようになるが、単体での販売はないようだ。僕は乳白色のビニールシートを切って発光部に貼りつけて使っている。これだけでも充分24ミリをカバーするようになる。
最後はフォクトレンダーのVCメーターである。反射光式で、75ミリレンズほどの角度で露出を計れるので、GXR&50ミリレンズにあわせて使えばベストだ。
撮像面で露出を正確に計っているデジカメに、なぜ反射光式の単体露出計が必要なのか、という疑問を持ったあなた、それは野暮というものだ。
これは「装飾」という意味での「アクセサリー」なのだ。見た目、カッコいいじゃない? ただそれだけのこと。緑と赤のLEDがチカチカするし、この2つのダイヤルもかなり思わせぶりに見えるだろう。現行のデジカメで、このVCメーターが似合う機種はGXRぐらいしかないのだ。
若い世代のカメラ好きは、こういう古いものは知らないから、注目を集めること請け合いだ。この状態でGXRを首から下げていれば、「それは何ですか?」の質問が飛んでくるだろう。
あなたは咳払いのひとつもした後、ゆっくりと蘊蓄(うんちく)を垂れたまえ。そして最後に「いやぁマニュアルじゃないと写真を撮った気がしなくてね」などとつぶやけば完ぺきである。
GXRは銀塩フィルム時代のテイストを、デザインにうまく残したデジカメだ。だから過去のさまざまなアクセサリーが現役で違和感なく使えるようになる。これは何よりうれしい発見だった。
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