第14回 単焦点ワイドレンズで撮る都会の曲線美――富士フイルム「XF14mmF2.8 R」:デジタル一眼レンズの楽しみ(2/2 ページ)
富士フイルム「XF14mmF2.8 R」は、同社のミラーレスカメラ「X」シリーズ用の超広角レンズです。ボディと同じく、アナログテイストに満ちたこのレンズを使って、街中の巨大構造物を撮ってみましょう。
マニュアルの操作感を高める2つの指標
前述した絞りリングに加えて、このレンズには、もうひとつ操作面に大きな特長があります。それは「距離指標」が付いたフォーカスリングを備えること。距離指標とは、大まかにいうと、カメラからピントを合わせた被写体までの距離を示す目盛りのことです。
ほとんどのミラーレス用のレンズは、フォーカスリングとフォーカス駆動用のレンズが機械的に連動していないこともあり、距離指標は省かれています。「XF14mmF2.8 R」の場合も、機械的な連動ではなく電子的な制御ですが、フォーカスリングを引き付けるようにスライドさせるとリングの縁に指標が現れ、その指標を見ながらリング回転によるマニュアルフォーカス(MF)の操作が可能になります。オリンパス製の一部のレンズが採用するスナップショットフォーカス機構と似た仕組みと考えていいでしょう。
距離指標のメリットは、MFで撮る際、目盛りを見てピントの位置を設定・確認できることです。前もってピント位置を固定する「置きピン」での撮影や、夜景や星空を無限遠で撮る際などに役立ちます。
しかも、距離指標の上には「被写界深度指標」があり、撮影距離と絞り値に応じた被写界深度の目安が一目瞭然です。例えば、F11まで絞り込んだ上で距離指標を1メートルの位置にセットすれば、約50センチから無限遠までの範囲が被写界深度内に収まる、ということが分かります。シャッターチャンス重視でスナップを撮る際などに生かせます。
上の2枚は、距離指標を見ながらMFで撮影したもの。AFでもMFでも、写りそのものには違いはありませんが、こうした三脚撮影ではAFよりもMFのほうが明らかに楽です。手前の標識から無限遠までを被写界深度内に入れ、パンフォーカスによるシャープな描写を狙いました。撮影地は西新宿ジャンクション。F16まで絞り込んだため、7枚羽根による14本の鋭い光芒が光源から生じています。
一方で、AFの操作感も悪くはありません。フォーカスリングを逆方向にスライドするとAFに切り変わり、シャッターボタンの半押しによって、ほぼ無音でスムーズにAFが作動します。被写体に応じて、AFとMFを使い分けるといいでしょう。
注意したいのは、「XF60mmF2.4 R Macro」「XF35mmF1.4 R」「XF18mmF2 R」と既に販売されている3本の単焦点XFレンズと同じく、手ブレ補正には非対応なこと。望遠に比べてブレが目立たない超広角レンズだからといって、薄暗いシーンでラフな撮り方をしていると、カメラの液晶上では分かりにくい小さな手ブレが生じがちです。上の写真は、シャッター速度1/30秒で撮影したもの。家に帰ってから、PC上でブレた写真を見てショックを受けないためには、最低でも1/30秒は確保したいところ。痛い目にあった経験者の弁です。
最後のカットは、最短撮影距離の18センチ付近で撮影したもの。開放値のF2.8を使ってここまで寄ると、背景にはきれいな丸ボケが生じます。撮影地は、よこはまコスモワールド。毒々しい緑に着色されたファンタメロンソーダも、このレンズで撮るとなぜかファンタスティックに見えてきます。
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