最新の電子書籍端末を求めて香港を行く香港電脳訪問記(2/2 ページ)

» 2010年12月24日 10時30分 公開
[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]
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携帯電話を買いに行こう

旺角駅から歩いて2ブロックの場所にある「先達廣場」。アパート下層部の商業エリアに携帯ショップが所狭しと並ぶ携帯販売のメッカだ

 香港の繁華街では、至る所に携帯ショップが存在する。携帯キャリア系列の正規店の場合もあれば、個人ショップの延長みたいなショップまでさまざまだ。一昔前は並行輸入品などを扱う少し怪しげなショップや、手持ちの携帯電話を好みにデコレーションしてくれる着せ替えショップのような店が多かった印象だが、最近ではこうした店は少なくなり、正規店に近い装いのショップが増えた気がする。かつての香港ならではのカオスな雰囲気は、後述の「先達廣場」のような場所に集まっている印象だ。

 現在香港で携帯電話の購入といえば、九龍半島にある「旺角(モンコク、Mong Kok)」というエリアが有名だ。九龍半島先端の「尖沙咀(チムシャツイ、Tsim Sha Tsui)」から目抜き通りである「彌敦道(ネイザンロード、Nathan Road)」を北上した一角にある。香港地下鉄のMTRでいえば「セン湾線(赤色)」「観塘線(緑色)」の2つの路線が旺角駅に停車する。

一般の観光客には携帯のメッカではなく、「女人街」などの女性向け買い物スポットとして旺角は認知されているだろう。女人街以外にも、近所にはブランドショップが多数入った高層ビルの商業スペースが多数存在する

 旺角は「女人街」と呼ばれる土産物や、生活雑貨などを販売するテント風のアーケード街が連なる香港でも有数の繁華街だ。偽ブランドも含めて香港らしい商品が数多く集まった名所としても知られていたが、現在ではそうしたものを見つけるのは少し難しいようだ。携帯ショップが数多く集まっていることで知られる先達廣場も、こうした旺角の繁華街の一角にある。

 先達廣場は旺角駅を出て「亞皆老街(Argyle St)」を東に2ブロックほど行った場所にある。上層部がアパート、下層部が商業テナントというちょっと古ぼけた印象のビルだ。

こんな感じで大量に携帯電話が陳列され、ユーザーは希望する端末や価格を調べながら商談を行う。値段が出ていないことも多いので、逐次お店の人に価格を問い合わせてみよう

 先達廣場のすごいところは、商業エリアに当たるビル内部の1階と2階のテナントがほぼすべて携帯関連のショップだという点にある。しかも正規店というよりも、各種携帯やアクセサリを扱う個人ショップに始まり、明らかに違法品と思えるような改造品や横流し品なども売られている。秋葉原でいうラジオデパートをほうふつとさせるような店舗面積のショップが所狭しと並んでおり、ここを徘徊して目的の品を見つけることになる。先達廣場の通りを挟んで向かいには携帯キャリアの正規店が数軒並んでおり、非常に対照的だ。

 筆者は今回ここで、電子書籍アプリ検証用のAndroidデバイスとしてSamsungの「Galaxy S」を購入した。16GバイトモデルでSIMロックフリーの端末がバッテリー×2本付きで4900HKD(約5万2000円)だった(11月中旬ごろ)。正規店では同じ製品が5200〜5400HKDで販売されていたので、若干安い。

 今回選んだ店は比較的“きちんとした”製品を扱っていたが、中には極端に安い、あるいは出所が分からない怪しい製品も数多い。例えば、本来は販売されていない白モデルのiPhone 4が売られていたり、米国直輸入というSIMロックフリー版のWindows Phone 7携帯が売られていたという情報もある。どちらも改造品と思われるが、もし興味があれば、自己責任でチャレンジしてほしい。


先達廣場内部はこんな感じ。まだ販売されていない白モデルのiPhone 4があったり(恐らく改造品)、どこかの国の版権キャラクタがプリントされたケースカバーが販売されていたりする
道には屋台のように携帯ショップの出張所が出現し、道行く人に携帯の販売を行っている姿をよく見かける。香港で携帯が花盛りという印象を受ける瞬間だ

先達廣場の道路向かいにある「3」の正規店

 なお、今回筆者は「Galaxy Tab」の購入にもチャレンジしてみた。さすがに発売直後なだけはあり、筆者が先達廣場を訪れた際はほとんど見かけなかった(空港のショップでも未入荷だった)が、先達廣場前の携帯キャリアの正規店では販売しており、SIMロックフリーの端末が5000HKD前後だった。ただし、正規店の扱いは1年または2年の契約時のみということで、端末のみの販売ではなかった。恐らく、注文が集中するような新機種はSIMロックフリーで販売したとしても、年契約で一定期間は縛るケースが多いのかもしれない。ただし、Galaxy Tabは米国でも発売1カ月を経たずに値崩れが始まっており、この数週間後には香港でも縛りなしで簡単に買えていた可能性がある。


香港の秋葉原、「深水ホ」にも潜入

 いまでこそ香港のITガジェット買い物スポットとしては旺角の名前が挙がるが、かつての香港でのITスポットといえば「深水ホ(シャンシュイポー、Sham Shui Po)」の「黄金電脳商場」だ。先達廣場が携帯のメッカだとすれば、こちらはPCショップのメッカで、PC周辺機器、PC本体、PCパーツ、ゲーム機、ソフトウェアのショップが所狭しと並んでいる。

 深水ホは旺角からセン湾線で2駅の距離にある。黄金電脳商場は深水ホ駅を出てすぐの場所にあり、先達廣場同様に上層階がアパート、下層階が商業エリアで構成される地下1階・地上2階のテナントビルが並ぶ(内容的には同じだが、上層部は『高登電脳中心」となっている)。

駅を出るとすぐに「黄金電脳商場」と「高登電脳中心」の建物が見える。黄金電脳商場はかつて、海賊版販売が普通に行われていた場所としても知られている。古き時代の香港電脳中心だ

 黄金電脳商場をかつて有名にしていたのは、海賊版ソフトの扱いにある。かつて黄金電脳商場の地下では、PC・ゲームソフトから音楽・映像ソフトまで、あらゆるソフトの海賊版が堂々と販売されていた。例えば10年ほど前はVCD形式でCDに収められた映画などが販売されていたのだが、当時からすでに取り締まりが厳しくなっていたようで、かつて地下フロア全体を占めていたといわれた違法ショップは、現在では完全に消滅し、周辺機器ショップに入れ替わっている。音楽CDも、日本で売っているようなものがそのまま輸入されて販売されているだけだ。

現在の黄金電脳商場の地下フロアはこんな感じ。普通のPC周辺機器ショップだ

 日本では秋葉原のようなスポットがあるため、わざわざ黄金電脳商場を訪問して、そこならではの買い物や見所があるかといえば難しいが、国外のIT事情を眺めるのには適した場所だと思う。かつてのような雰囲気はないが、ITスポット目当てに香港を訪問する方がいれば、旺角だけでなくぜひ深水ホにも足を伸ばしてみてほしい。


 今回、筆者は約10年ぶりに香港を訪問した(前回の訪問は2002年初)。さすがに10年も経つと街もかなり様変わりしており、これまでなかった新界向けの鉄道が整備されて往来が簡単になり、「八達通(オクトパス)」と呼ばれる非接触型ICカード乗車券は交通機関だけでなく、セブンイレブンなどのコンビニ店舗での決済にも使えるようになっていた。

香港の移動には欠かせない「八達通(オクトパス)」。以前までは乗り物専用という感じだったが、いまでは普通の電子マネーカードとしても利用でき、例えばセブンイレブンのほか、写真のようにスターバックスの店舗などで使えた。やがてはNFCを搭載したスマートフォンに置き換わっていくのだろうか?

 また上述のように、当時は音声通話中心だったコミュニケーションが変化し、電車や街中でもメールにSNS、Webサーフィンと、2002年当時に日本で日常的に見かけていたような光景が香港でも一般的になっていた。また機種は不明ながら、地下鉄などで電子書籍リーダーを手に読書している人が少なくなく、こうしたデジタルガジェットが一般にもよく普及している印象を受けた。

 一方で、街中に数多くあった小さな店舗はショップからレストランまでかなりの数が店じまいしてしまったようで、代わりに入っていたのはマクドナルドやセブンイレブンといった大手チェーンなど。筆者が宿をとっていた「灣仔(ワンチャイ、Wan Chai)」周辺の様子はかなり様変わりしてしまった。

 筆者が日米の各都市をまわっていて過去10年近くに感じた変化がそのまま香港でも起きているような感じだ。黄金電脳商場がかつてのカオスさを完全に失ったように、先達廣場もまた数年後には違ったものになってしまっているのかもしれないが、その辺りの変化も含めて香港のいまを感じられれば面白いと思う。

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