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» 2012年08月23日 14時30分 公開

ほぼ全文書き起こし:電子書籍時代に出版社は必要か――創造のサイクルと出版者の権利をめぐって (5/7)

[ITmedia]

出版社への隣接権付与には賛成? 反対?

福井 深まってますよね議論。すごい深まってますね。ちょっと1回止めましょうか。1回みなさんクールダウンです。

 ここでね、そういうマネタイズのあり方とか、もう議論が散らかったのは充分承知です。でも今後の収益モデルのさまざまなヒントが出ました。それらは散らかったままでお伺いします。その中で、海賊版対策とか、あるいは収益の確保のために、出版社は隣接権を今求めています。出版社に隣接権、権利を与える、版面の利用に対してNoと言える権利を与えることに対して、賛成か、反対かをここでは1回お伺いしたいと思います。

 ここでフリップ皆さん使ってください。賛成反対他何を書いて頂いても結構ですけども、どうしてそう思うのか、権利の内容がどうだったら、その結論は変わるのか、例えば賛成だけどこの結論だったら反対に回るよ、反対だけどこの結論だったら賛成してもいいよ、というものがあれば、それは口頭で補足しください。はい、では三田さんから。

三田 賛成です。

福井 賛成、はい、賛成1票。

植村 じゃあ次に続いて、賛成。

福井 賛成2票。

植村 それだけしか言わなくていい?

福井 いえいえ理由を補足してください(笑)。

植村 さっき言ったように、僕は制度設計によって、ビジネスとかは守られたり、成長するってのは絶対あると思ってる。歴史を振り返っても。例えば、いろいろ言われるかもしれないけど、日本の取次って機能がもたらした結果によって、僕は世界で最も多くね、人口、国民人口当たりの書店があったり、小さな出版社がある日本の出版文化システムって凄くいいと思ってるの。文化産業システムって。ただそれが、いまいろいろなところで問題があってほころび出ているかもしれないけど、かつて果たしてきた役割はあって、実は極めて意図的にGHQによって制度が作られたところってありますよね。

 僕は、ある種の社会制度ってのは、それは行政がやるか誰がやるか分からないけど必要だと思っていて、当面、そしてさっきも言ったように汗かいたことに対価を得るっていう枠組みを維持するには、やっぱり隣接権って方法がいま一番いい方法だろうなって思ってるってこと。

三田 私はね、出版社に何か権利をあげるということではないと思うんです。何か問題が生じたときに出版社が責任をもって対応をするということなんで、責任だけ負ってもらうということであります。

福井 あらー(笑)。

三田 米国などでは著作権を出版社に預けてしまうんですね。出版社が著作権を持っていますから例えば出版社がApp Storeにアップできるわけですね。日本の出版社が同じことをしようとしたら、「あなた著作権持ってますか? 持ってませーん」ということでアップできないということがあります。

 でも作家としてはね、何か怪しいから、著作権は出したくないんですね。だから、隣の権利をあげましょうと。その代わり、ものすごい大きな責任を負ってくださいと。何か権利を出版社にあげるのではなくて、もしも何か、海賊版が違法に流通するとか、問題が起こったときに、出版社が責任をもってそれに対応してくれるということなんで、われわれは、何かを切り取られて(出版社に)あげるという感じはまったく持ってないんですね。

福井 なるほど、シビアなバーター取引ということですね。要するに、じゃあちょっと隣の権利をあげるから、その分、出版社の責任増やしますよっていうことですか。はい。あ、きましたね、じゃあ岡田さん。

岡田 はい。僕は与えません。これは賛成か反対かってことではなくて、僕はしませんっていうことです。でもしそんな法律が法制化されたら、それ以降、出版社から本は出しません。

 というか、こんな権利を要求してそれが成功するってことは、出版社が保護産業になった証だと思います。つまり、歌舞伎や文楽と同じく、保護してあげなければ存在できない存在にまで成り下がってしまった状態っていうのがコレだと思うんです。これが必要になるんだったら、もうこの産業は国家の保護なり何なりを受けてください。僕はそこに対して、何か助けたりはしようと思いませんから、そこから本は出しません。

福井 歌舞伎・文楽的なものに対してコミットする気はないと。

岡田 はい。で、三田先生がおっしゃった、“巨大な責任”というのを出版社がかぶってくれないのも僕知ってます。僕、今まで2件訴訟がありましたけども、光文社も新潮社も途中で逃げました。

(会場笑い)

岡田 ということは恐らく、その作家から得られる売上と、その作家から得られる評価とを加味した上で、出版協会とかペンクラブとかの偉い人だから三田先生には手厚く、偉くないから岡田斗司夫には薄くということをやるのは、ビジネスとして当たり前だと思うんですね。だから、超メジャーじゃない人が、こういうものを与えても何のメリットもないと僕は思います。

福井 岡田さん、アニメと違ってここは、実名ありなんですか(笑)。

岡田 ここは、ありです。ここはありにしないと、僕が言ってることがただ単に、空虚な話になっちゃう。やっぱここは、実体験で語らないと。あーあーあーあーやだ、さっき新潮社の社長から名刺貰ったのに(笑)。

福井 ……もう手遅れですかね(笑)。 はい、ありがとございました。赤松さん、もうご用意できてますかね。じゃあ赤松さんからどうぞ。

赤松 本当は反対なんです。でもまあ少しなら、っていうツンデレですけど(笑)。

福井 ツンデレなんだ(笑)。あ、ほんとだ、小さく書いてありますね。でもまあ少しなら、と。

赤松 あのねー、プロセスがちょっと気に入らないんですよ。だいたいいいんですけど。今回、三田先生と植村先生、中川勉強会に出てらっしゃったんですよね。(勉強会に)漫画家呼ばなかったのは何でですか?(笑)

岡田 偉くないからですよ。

植村 いや、そんなことはないですよ。そんなことはなくて、わりとこう、ほら、えーっと、最初っからガチっとみんなでやるんじゃなくて、どんどん声かけをね、っていうところで、あったはずですよ、すっと。

赤松 それで4回までずっとやられて、最後、最終回の5回目だけ里中先生(編注:里中満智子さん)1人呼んだ(笑)。あのプロセスが気に入らない。それでいて議員立法でやっちゃおうとか、漫画家の稼ぎって出版社にとって大きいのに何で無視するってのがチョー気に入らなかったってのがあるんです。内容に関してはね、そこそこいいとこもあるのでいいですけど、そういうことやってると反対ですよっていうのが漫画家の意見ですよね。

福井 プロセスを、ちゃんと改善してくださいと。

赤松 そうです。違法ダウンロードに刑事罰を導入したのもそうですけど、プロセスが酷いと、賛成の人も反対しますよそれは。

福井 ダウンロード刑罰化はプロセスが大間違いでしたね、あれはね。うん。なるほど。今後、それは気をつけなきゃいかん。

植村 だからプロセスに関しては、例えば中川勉強会はすぐに、何だっけな、記者会見だけじゃなくて資料上げるとか、わりとQ&Aも一生懸命書くとかですね、あるいは、その前段としてヒアリングはさせて頂いたと思うんですよ。で、ヒアリングに関して資料を上げたりとか……

赤松 呼べばいいんでしょ? あのね、出版社の人がね、「呼ばなくていいよ」って言ったていう噂はあるんです。

植村 それ僕は関与してませんよー(笑)。いちおう言うけど。

(会場笑い)

赤松 個人名出しませんけど(笑)。

福井 えー(笑)。

岡田 そういう時個人名出さないと俺信用しないもん。俺みたいにリスク負って言ってよ。はい。卑怯だなー。

赤松 私ちょっとリスク負うの嫌いなんで。嫌いなんです、リスク負うの(笑)。

福井 今のやり取りのところ、カットでお願いしますね、カットで。

(会場笑い)

福井 冗談はともかく。分かりました。赤松さんは以前かなり危惧を抱いてたと思うんですけども、プロセスを除けはまあいいかという考えになった決め手は何ですか?

赤松 あのですね、私が知ってるやつはですね、2002年当時の出版社の権利について書かれたものなんですけど、これを見るとね、凄いんですよ。出版社はアイデアとかね、そういうのも全部権利も欲しいし、期間もあと50年欲しいし、など作者と同じ力が欲しいんだよってことを10年前は言ってたんですけど、その後いろいろ叩かれたりして、今の形になったんですが、その凋落ぶりがかなり凄いんですよ。

福井 うはははは(笑)。

赤松 ちょっと可哀想な感じがするくらい落ちちゃってて、で、運用ガイドラインとか、紛争処理機関ってのがちゃんとできてれば、まあ、いいんじゃないの? って里中先生もおっしゃってるし……。ちょっとプロセスが気に入らないけど、中身はまあまあかな、という感じがしますよね。

福井 確かに植村さんがさっきおっしゃったのは事実で、中川勉強会は確かに情報公開はしてきてますよね。事後ではあるけども、情報公開は早かった。で、だんだん縮小してきたのは事実ですよね。

赤松 だって、50年だったんですよ? 本当は。

福井 そうね。

植村 1つ言っておくと、何か縮小してきた議論っていうか、中川勉強会の中では、むしろなるたけフラットで始めようよっていうんで、前々(2002年)のでかいとことから縮めたっていうプロセスは全然とってないですよ。

福井 ああ、勉強会の中で言うとそうかもしれませんね。

植村 ええ、それで僕もちょっと参加してたってのはあるし。あと、そのときの問題はむしろ海賊版。僕はさっきから言うように、海賊版は許さないから。海賊版に対して、すぐ、それを止めるってことにおいては、やっぱり(出版社への権利付与が)必要だよねってのが1つと、もう1つすごくこれは出版社の人に強く言うけど、そもそも出版社ちゃんとやってきたか? ということに関して僕はやっぱ疑問があって。

 だってそれこそ赤松さんとか、作家の不満を聞いてくとさ、出版社ってやっぱりちょっと問題あったんじゃないの? いや、3月までなら(僕は出版社の人間でしたから)俺達って言ってもいいんだけど、それは凄く認めるの。そのときに、そういう出版社と作家の関係のすごく不透明な慣行みたいなものを全部はっきりさせようって。出版社が権利を得たらはるかに強い義務をちゃーんとこれからやらなきゃいけないんだから。で、この義務は、結構しんどいですよ、皆さん。本当に権利が手に入ったら。これからはむしろ作家から「お前らなんだ」って言えるようにしっかり作ろうよっていうことをしなければ、それができない出版社辞めなさいって。

福井 さっきの三田さんの議論に繋がりますね。

植村 ええ。

福井 なるほど。分かりました。恐らくまだまだ皆さんお話しされたいことがあろうと思うんですよ。ただね、今日はこれだけの方が会場にいらっしゃってますから、会場とのやり取りも、ちょっといきたいなと思うんですね。

岡田 ちょっといいですか、まとめだけいいですか。

福井 どうぞ。

岡田 はい、すいません。僕、出版社を守りたい、で、今日のシンポジウムで話、考え方変わるかも判んないって言ったんですけど、だいたい結論出まして……。

福井 あ、最後にはもう1回結論は言ってもらいますよ。

岡田 はい。今、小さな政府ってみんな言ってると思うんですよ、つまり、政府が巨大になり過ぎて税金が多すぎて、何やってるか分からない。だから政府を小さくしようと。で、これは、個人責任が逆にどんどん増える。そういう悪いこともある。その結果、市民ボランティアがだんだん増えてきた、政府に頼れないから。同じことだと思います。

 基本的にこれからは、小さな出版社になるべきであろう、それしかない。ということは、作家責任が自動的に増えてくる。つまり、出版社が、もうすべての責任とか、催促とか、助言とかをしてくれる時代はほぼ終わりに近づきつつある、イコール、読者による、読書ボランティアとか読者ボランティアですね、そういうようなサポートが必要になってくると。

 例えば、タダで読めるからといって、図書館を全部利用しないとかですね、ちゃんと紙の本、余裕ある奴は出して買えっていうような形に、この、小さな政府だったら個人責任と市民ボランティアが出る。同じように、ボランティアまったくやらない人いますよね。それと同じように、小さな出版社にこれからなっていくんだったら、こういう潮流になっていくんじゃないかなと僕は思いました。

福井 なるほど。これは機能するかどうか……

三田 いまのね、ちょっと待ってくださいね。いまの考えだとね、作家が1人1人がね、弁護士雇わないといけなくなるんですね。弁護士が儲かってしょうがない。で、私は出版社にお世話になってるんで……

(会場笑い)

福井 ちょーーーっと待ってください。ちょっと論理がおかしくありませんか? だって、さっき、コンテンツ産業にはお金流れなくなるって言ったでしょ? お金あんまり儲かんないんでしょ? 弁護士がその儲かんない人から、稼げますか?

三田 だから、出版社に1人弁護士がいれば、すべての問題は解決できるんでね。作家1人1人が責任を持たされたら、やってけないな、と。

岡田 でも同人作家1人1人責任持ってますよ。

福井 確かに、出版社中抜き論には、その裏の形として、じゃあ、作家やそれを支える制度はちゃんと別にあるんだね、自律してそれを支えていけるんだねってことは問われますよね。それがうまく機能するかってのは、議論としてはあるんだと思う。

植村 でも、そんなに人って自律的に、自分を律して仕事できてますか? さっき岡田さんはね、「僕が子どものころだったらこれは俺のチャンスだって思う」って言ったかもしれないけど、僕は親に怒られたり尻叩かれしながら、やっとここまでやってきたタイプだから、やっぱり、誰かのサポートとか、そういうのが必要だと思うんですよ。

 だけど、時にはね、「このやろー」ってムッとして反逆起こすとか、若い人間が謀反を起こすってのと、何となくそれなりに、世の枠組みの中から、新人育成って言ってもいいけど、っていうようなやりとりがずっとあったと思うの。僕の最近の不満は、いまの若い人がはるかにパワーがないっていうかさ。やっぱ、70年闘争とかちょっと上の方見てきた人間からするとさ、若い連中革命起こして欲しいよなって。年取りゃ保守になるんだから。

福井 革命ね。

植村 だから、そういう意味において、いま、こうドラスティックに社会がこうぐるぐる回るんだとしたらさ、やっぱもちろんそれはITを使った革命を起こしてもらっていいと思うから。もうウェルカムだし。こないだ、ボイジャーの萩野さんと話したんだけど、そもそも電子書籍って、俺達こんな年になってずっとやってちゃいけないよねって。やっぱりそこは、こんなに面白い電子書籍が出たんなら、チャンスだと思って若い人どんどん来て革命起こしてよって思いますよね。

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