それいけ! デジコレ探索部「第10回 シュールすぎる日本のグリム童話」まだ見ぬお宝を求めて

日本の貴重なデジタル化資料を公開している国立国会図書館デジタルコレクション(デジコレ)。本連載では、デジコレで見ることができるデジタル化資料の中からコレは! というものを探し出し、紹介していきます。

» 2014年08月29日 17時00分 公開
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 早いもので、デジコレ企画も今回で第10回となりました。

ほんと早いわねー。わざわざそれをいうってことは、何か特別な企画でも用意しているわけ?

 いえ、特には。

さらっというわね……。それで、今回は何を見せてくれるのかしら?

 今回お見せするのは、こちら。

『おほかみ』(訳:上田萬年/出版人:吉川半七)

!? え、ヤギ……えっ?

 後ろでパイプふかしてるのがオオカミですね。私たちのよく知る『狼と七匹の子山羊』を日本語訳した『おほかみ』という作品です。ちなみにこちらはヤギではなくヒツジだったりします。

ネタとかじゃなく……?

 何をおっしゃる。日本語訳されたグリム童話の中では最初期の作品ですよ。それから、こちらがグリム童話初の日本語訳作品といわれている『八ツ山羊』です。

『八ツ山羊』(訳:呉文聡/弘文社)

分かったわ……。続けてちょうだい。

 では、『八ツ山羊』から。こちらは明治20年、西暦でいうと1887年に弘文社から出版されました。訳者は貴族院の議員で、日本における「国勢調査」の原型を作り出したといわれている呉文聰。英語を得意としていたようですが、なぜ童話を訳すことになったのかは私の調べた限りでは謎です。七ではなく八としたのは末広がりの意味を込めたのか、それとも「ヤツヤギ」と韻を踏む形にしたのかどちらかではないでしょうか。

ストーリーは私たちが知っているものとほぼ同じです
母ヤギが外出している隙を狙ってやってくるオオカミ
前のページを見ると分かると思いますが、扉の部分に薄い紙が貼られていて、めくると子山羊が現れる仕掛けになっています。この仕掛けは江戸時代にもあったようです
足をペンキで白く塗り、声色を変えて母ヤギになりすますオオカミ
無表情でオオカミの腹をさばく母ヤギ。匠のオーラを感じる
このシーンにも仕掛けが
あとはご存じの通り、お腹に石を入れられたオオカミは池の水を飲もうとしておぼれてしまいます

細かいところは違ったけど、本筋は今ある絵本と変わらないわね。

 挿絵を手がけたのは、狩野派の浮世絵師の小林永濯ではないかといわれています。では、次に『おほかみ』を見ていきましょう。こちらは先程の作品と比べるとやけに和風ですね。日本人が物語に入り込みやすいようにアレンジしたのでしょう。登場するのもヤギではなく、ヒツジになっています。

母ヒツジ「それでは行って参ります」子ヒツジ「はい、お気をつけて」

ものすごくツッコミたい……。

オオカミ「子ヒツジいますかー」
足に粉を塗らせるため店員を脅すオオカミの図
オオカミ「お土産を持ってきましたよ」
オオカミ「お土産を持ってきたといったな、あれはうそだ」
子ヒツジメタボすぎるだろと思ったら、オオカミの腹から顔を出している絵のようです
完全にリンチだこれ

 それでは、感想をどうぞ。

なんというか、すごくシュールだったわ……。特に『おほかみ』の絵が。

 「ボケて」とかに使わてしまいそうな予感がします。それでは今回はこの辺で。

(出典=国立国会図書館)

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