スクリプトの過去と未来

Tech・Ed Learning DayでのMSのテクノロジーを振り返るセッションでは、さまざまな過去のトピックが紹介されている。それらは単に古くて忘れ去られたといったものばかりではなく、現在でもアプリケーション作りに欠かせないマインドを思い起こしてくれるものがある。

» 2004年09月07日 23時03分 公開
[ITmedia]

 マイクロソフトのテクノロジーを振り返る一連のセッションは、当時を知る人々にとって、懐かしさとほろ苦さの混じり合う、そんな何とも言えない雰囲気が漂う。あえてそれを狙った感もある。

 デベロッパーマーケティング本部 デベロッパーエバンジェリストの西谷 亮氏による「マイクロソフトにおけるユーザインターフェイステクノロジの今昔」セッションでは、1999年当時に提唱されていたWindows DNAと、それにまつわるテクノロジーであるScripting Technologyから始まった。

デベロッパーマーケティング本部 デベロッパーエバンジェリストの西谷 亮氏。

 Scripting Technologyを語る前に、Windows DNAの説明が必要かもしれない。開発者の方々はご記憶だろうが、Windows DNA(Windows Distributed Application)はマイクロソフトがインターネットを標準技術としてWindowsへ統合し、アプリケーション開発・連携のための基盤として提唱したモデルである。3階層構造モデル(3-Tier)のクライアント/サーバアーキテクチャで、WebをベースにCOM+の分散アプリケーションを基盤とする。1998年ごろから2000年にかけて、次世代Windowsとアプリケーションのための標準として推進した「用語」である。今で言ういわゆるWebアプリケーションの初期の考え方といったところだろうか。

 その3階層アーキテクチャーであるWindows DNAにおけるスクリプトといえば、クライアントサイドとサーバサイドという2つの性格を備えており、それぞれは独立性を持っていた。つまり、クライアントサイドにおいてはUIを構築してユーザビリティを高めるために利用されるものであり、一方のサーバサイドでは処理をして結果を返すビジネスロジックを構成するという役割を持っていた。

 Webアプリケーションにおける操作性の悪さは、1999年当時から多くの人々が気付いていた。そのため、クライアントサイドにおけるスクリプトの利用、DHTMLやActiveXコントロール、果てはWin32sアプリケーションの利用までが当然のように考えられていた。しかしながら、スクリプトでそれらをやってしまうと、当然ながらクライアント環境を選んでしまう。またスクリプトは確かに便利だが、単一ページにクライアント用とサーバ用が混在することでデメリットがあることも否めない。

 こういった問題は、技術が進歩した今なお解消されていない。

安易なスクリプト利用の問題点は?

 その問題点とは、さまざまな拡張・変更に対応できないといったことである。UIの変更要求への柔軟な対応、ビジネスロジック上の変更への対応、DBスキーマの拡張や変更への対応などなど……。

 こうした問題点は現在なお、開発者の悩みとなっている。マイクロソフトはこの後、Windows DNA 2000を発表し、UIとビジネスロジックの分離をより明確化するように図っているが、この「DNA」というマーケティング用語はその後、使われなくなる。

 スクリプトを利用するにあたって実装してはいけないもの、それはデータベースへのアクセス制御や、あるコンポーネントに対する強い依存コードなどで、その点は現在のASP.NETになっても変わらない。

 デザインとロジックの明確な分離。これは開発者が常に配慮しなければならないことであり、それは同社の開発環境の最新盤であるVisual Studio 2005でも変わらないと西谷氏は言う。こうした流れは同社の現在の開発者向けキーワード「スマートクライアント」に受け継がれており、操作性の高いUIの実現というメッセージとしては効果が高い。しかしながら、「これも将来的にマーケティング用語になり、本質が見えなくなる恐れがある」と西谷氏。

 「1999年当時に問題視されていた部分はいま現在も問題であり、テクノロジー的には回避可能になっているにも関わらず、それができないのは開発者の意識によるところが大きい」。こう西谷氏は指摘する。満員の会場で、熱心に聞き入っていた開発者たちの姿が印象的だった。

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