RHEL 4の年間サブスクリプションが無料に? ある企業の挑戦(2/2 ページ)

» 2005年04月04日 09時11分 公開
[西尾泰三,ITmedia]
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日本企業初のアドバンストホスティングパートナーに

 一方、この話を持ちかけられたRed Hatからするとat+linkとのパートナー契約には歓迎すべき部分が多かった。at+linkにフルサポートをコミットすれば、エンドユーザーの1次サポートとしてat+linkが機能することになる。at+linkはこの9年間ほどんとの問題を自社でサポートしてきた実績もあり、コミットメントラインに見合わない手間はかからない。

 加えて、RHELで中堅・中小企業の市場を開拓していくことが同社の戦略上重要であるため、多数のRed Hat LinuxユーザーをRHELに移行させてくれるだけでなく、相当数の新規ユーザーも獲得してくれるat+linkは魅力的だったことだろう。両社の思惑は合致し、2005年1月に日本企業としては初となるアドバンストホスティングパートナー契約が締結された。at+linkは月ベースで一定金額をコミットし、ある程度有利な条件でRHELを入手できることとなった。

「(コミットラインは)それほど楽に達成できる金額ではありません。簡単にクリアできるレベルであれば、競合他社もこの動きに追随してくるでしょう。相当根性を入れないと達成が難しいレベル」(眞神氏)

 ある程度有利な条件でRHELを入手できるようになったことで、他社と比べて有利にビジネスを進められる基盤が整った。ここでat+linkが冒頭の発表を仕掛ける。RHELの年間サブスクリプション費用を無料とすることで、新規ユーザーの獲得増を狙ったのである。

 「無料」という分かりやすいキーワードを掲げたことで、サポート期間が終了したRed Hat Linuxのユーザーだけでなく、新規ユーザーも「無料ならば」と積極的にRHELを検討する。そう考えると、無料にしたことでかぶるコストは、販促費・広告費と考えることもできる。

 「今回の発表はインパクトのあるものだとは思うが、当然他社もサービスの拡充などで手を打ってくるはず。無風状態を弾が飛ぶようなことにはなりません。いずれにしてもユーザーにはうれしいことでしょうね」(眞神氏)

 現在5000台超の契約サーバのうち、かなりの割合がRed Hat Linuxであるという。同社は今回の発表で新規申込みの20%増を狙っており、見込みどおりにいけば3年後には契約台数1万、RHELで動くサーバも9000台前後に達することが予想される。

あくまでユーザーニーズに沿ったビジネスを

 ユーザーニーズに沿ったマルチベンディングスタイルを志向しているとはいえ、今回の発表で、少なくともOSについてはAT-LINKはRed Hatと運命共同体となったといえる。今後、ユーザーが渇望した場合SUSE LINUXやMiracle Linuxなどをメニューに加えることはあるのだろうか。

 「わたしたちはディストリビューターではないので、OSに関する戦略というものは持ちにくい。また、今回の契約は現時点で最良の選択だと思うが、技術革新が早い業界において、Red Hatが数年後も成功しているかを予想するのは難しい。もし市場が大きく変化するなら、新しいニーズに対応していく。(Red Hatとの)契約書に記されたコミットラインを守りつつね(笑い)。Red Hatとの関係はもちろん大切だが、ある時点で選択したOSに縛られることもできない」(岡田氏)

 実際、ほかのディストリビューターからも担いでほしい、といった要望も少なくないようだ。しかし「利用拘束なし」「月間利用料形式」の2つをクリアしてもらうことが前提となるほか、また、at+linkに対する24時間サポートもコミットする必要があるという。それがクリアでき、かつユーザーのニーズがあるのなら、どんなOSでもサポートするつもりであるという。

 「実は2004年の秋にはSUSE LINUXもメニューに載せることも考えていて、そのための作業は進めていました。しかし、当時はノベル側の販売体制も固まりきっておらず、現時点ではまだメニューに載せていません。」(永井氏)

「無料」より価値のあるもの

 ユーザーにとってOSの移行作業は相当にエネルギーのいる作業である。加えて、出たばかりのOSに飛びつく安易な行為は考えにくい。このため、国内発表からしばらくの間はRHEL 4への移行が急激には進まない。at+linkでは7月を目処にRHEL 4を選択可能にする予定としており、現在検証作業や管理ツールの開発などを行っているところだ。

 しかし、ユーザーには「無料」ばかりに目を奪われず、別のポイントもしっかりと理解してほしいようだ。

 「RHELの無償提供がアピールとなっていることは否定しませんが、それよりも知ってもらいたいのはサポート。こればかりは使ってもらわないと分からない。1カ月で解約しても違約金が発生するような条文などはありません。ぜひ試用して、サポートにリクエストを投げてみてほしい」(岡田氏)

 at+linkでは、「eBusiness インキュベータ」という初期費用と6カ月間の利用料金が必要ないメニューも存在している。こうしたメニューを活用し、RHELとat+linkのサポートを吟味しつつ、7月のRHEL 4を狙うのが賢い選択なのかもしれない。

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