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» 2005年06月19日 03時02分 公開

寄って立つところを明確にして人間力を磨け (2/2)

[吉田育代,ITmedia]
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 一人の人間が複数の分野に秀でるのはよほどの才能がないかぎり不可能で、そんな人間はそうそういない。自分に足りない技術は他の人間に補ってもらえばいい。それが同氏の論である。インターネットの発達によりネットワーク型社会が形成しやすくなったのだから、そのメリットを最大限に活用しようというわけだ。

 「別にゼネラリストをめざさなくていい」と技術者にやさしい同氏だが、どんな分野を専門にするにしても必ず持っていたい資質が一つだけあるという。それは概念の抽象化がきちんと行えることだ。現実のビジネスや情報システムというヴァーチャルな世界で表現していく中で、概念の抽象化はあらゆる場面で顔を出す。これがうまく展開できるかどうかは、技術者として生きていく上で最も重要な問題らしい。

 自分の専門性と責任範囲を自覚し、概念の抽象化力を身につけたらそれで一人前の技術者かというと、そういうわけではない。松本氏は「最近の若い技術者は人間としての力が足りない。とにかく人間力を磨いてほしい」と訴える。

 たとえば、松本氏が会議に同席した若い技術者で、最初から最後まで一言も発しない人物がいた。何か不服があるのかというとそういうわけではない。会議の内容がわからないのかというとそういうわけでもない。それなのに、積極的に議論の輪に加わって、コミュニケーションを図ろうという意志がまったく見られないのだ。

 また、あるシステム開発プロジェクトで進行遅れが明白になってきた案件があった。そこで当事者に事情を探ることにしたのだが、最前線で仕事をしている若い技術者に「問題は?」と聞くと、「別にありません」という。何かを隠しているわけではなく、ほんとうに何も問題はないと思っている風なのだという。それを聞いて松本氏は、彼らは問題意識が希薄なのだと思ったそうだ。

 日本の製造業が世界的に強みを誇る理由の一つに、徹底したTQC(Total Quolity Control)があるが、松本氏は「システム開発の世界でも、技術者の新人教育でTQCを教えるべきだ」と訴える。日々の活動の陰にひそむ問題を探り出す力、改善の上にも改善をめざす姿勢を身につけることが、技術者の人間力を磨く上でも役に立つはずで、下手にプログラミング言語をいくつも教えるよりよほど有益だ、と力説した。

松本聰


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