寄って立つところを明確にして人間力を磨け(1/2 ページ)

Japan Enterprise Modeling User会の松本聰会長に聞く。(特集:顧客満足度ナンバーワンSEの条件)

» 2005年06月19日 03時02分 公開
[吉田育代,ITmedia]

 データモデリング分野で幅広い著作を持つベテランコンサルタントにして、メタジトリー取締役、松本聰氏は開口一番、「SEという言葉は嫌いだ」と言った。

 その理由は、あまりにも曖昧で漠然としているからである。ハードウェアを専門にしている技術者もSEなら、ネットワークを守備範囲にしている技術者もSE、ソフトウェアが本業の技術者もSE、何から何まで十把ひとからげでSEと呼ばれている状況が気に食わないのだという。

松本聰氏

 さらに同氏は、「顧客という言葉もよくわからない」とたたみかけた。一口に顧客と言っても、技術者が向き合う顧客は状況によって異なる。情報システム部門のこともあれば、エンドユーザー(この言葉も松本氏は嫌いだそうだが)のこともあり、ことによっては直属の上司が決裁権を持っていることもある。単に顧客という言葉ではだれに対して責任を果たすのかがはっきりしないというのがその論理だ。

 では、どうすればいいのか。松本氏の提言は「まず自分の寄って立つところをはっきりさせよ」だ。ハードウェアか、OSか、ネットワークか、システム設計か、データか、アプリケーションか。そして、自分がその分野で責任を果たすべき相手はだれなのか。すべてはそこを明確にするところから始まるという。

 松本氏がこう発言する裏には、米国のIT業界の構造を長く見てきたということがある。彼の国の同業界は、それは見事なまでのスペシャリストの集団である。ネットワークならネットワーク、データならデータ、たいてい一つの分野に特化し、専門家としての深い知識と経験を蓄積し、それを矜持として生きている。ところが日本では、すべてにおいて中途半端な知識と経験しかない技術者がSEを名乗っている。それが腹立たしいのだ。

 近年さらに、スペシャリストよりゼネラリストを求める傾向が高まっているが、これについて松本氏は「全員に天才になれといっているようなもので、しょせん無理な要求」と話す。

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