Windows 95――その成功の光と影(2/2 ページ)

» 2005年08月25日 20時32分 公開
[Larry Seltzer,eWEEK]
eWEEK
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 セキュリティに対する当時の認識からすれば、セキュリティというのはビジネスやネットワークにまつわる問題であり、セキュアにする必要があったのはWindows NTだったとMicrosoftは言いたかったのだろう。

 つまり、Windows 95は管理されたネットワークに組み込まれるものとして想定されていなかったので、セキュアなデザインにしなかったというわけだ。

 しかしこれは的外れな主張だ。最大のセキュリティ問題は、システムを適切に使用するかどうかではなく、デザインおよび実装における欠陥が外部の人間によって悪用されることによってもたらされたからだ。

 しかしMicrosoftが未来を覗く水晶玉を持っていて、Windows 9xをもっとセキュアなデザインにしようと考えていたとしたらどうだろう。

 当時、スタックのオーバーフローを引き起こすプログラムの脆弱性に重大な懸念を抱いていた人は極めて少なく、ましてや権限昇格につながるヒープ問題(バグ)を心配していた人など皆無に近かった(もちろん、最高権限がだれにも与えられるWindows 9xには権限昇格というようなものはなかった)。

 当初からこういった問題に対処するのは、非常に難しかっただろう。インターネットがコンピュータセキュリティに悪夢をもたらすとMicrosoftが主張したところで、人々には信じてもらえなかっただろう。

 こういった予測は、セキュリティソフトウェアを売り込むための作り話だと受け止められたことだろう。それに、Win32やAPIをはじめとするOSの主要部分は、それまで何年もかけて開発されてきたのだ。

 当時はどのベンダーもそうだったが、Microsoftも当然、アプリケーションをセキュアにすることよりも、アプリケーションを開発することに主眼を置いていた。本格的なITブームが始まるのはそれから2年ほどしてからだが、既にその兆しは明らかに存在し、だれもセキュリティに構っている余裕などなかったのだ。

 人々はセキュリティ問題の存在を信じようとしなかった。Y2Kの悪夢のシナリオは容易に信じ込んだのだが。結局、Y2K問題は新しいハードウェア/ソフトウェアの販売促進に役立っただけである。

 そしてこの新しいハードウェア/ソフトウェアのほとんどは、Windows 95およびその後継版によって登場可能になったのだ。これらのOSの表面のすぐ下に潜んでいた問題も然りである。

 筆者の記憶では、セキュリティが最初に大きく報じられたのは、ActiveX対Javaの論争やJava全般をめぐる議論が起きたときだった。

 このときも、議論は全般的に大きく的を外れていた。ActiveXは実際、深刻なセキュリティ問題とはならなかった。また、Javaが非常にセキュアな技術であることを認めるにせよ、登場するのが早すぎたために、システムのパフォーマンスがそれに追いつけなかった。

 今日でも、大規模なアプリケーションでは、Javaはパフォーマンスという点でなかなか受け入れられていない(SunがStarOfficeでJavaを使わない理由を考えてもらいたい)。

 筆者は1992年7月、サンフランシスコのWin32 PDC(Professional Developers Conference)に参加し、Windows NTのベースとしてWin32 SDKに関する最初の評価記事をホテルの一室で書いた。

 このプログラムの開発は、その何年も前から進められていたものだ。その開発当初から、MicrosoftがIRCbotsやフィッシング詐欺などを想像できて当然だったと言えるだろうか。

 確かに、彼らは状況が当時より悪化することを予見できただろうし、その後に出現した多くの問題を予見できたかもしれない。

 しかし10年前にはPC業界の前に大きな成長の可能性が開けており、Microsoftの能力はその成長を促進することにあり、理論的な問題に対する予防手段を編み出すことにはなかった。こういった問題に対処することは、製品開発を遅らせる結果にしかならなかっただろう。

 たとえMicrosoftが、その後の10年間がどんな展開になるかを予見できたとしても、セキュリティという点から見れば、それほど結果は変わらなかったのではないかと筆者は考えている。

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