Windows 95がリリースされた10年前、業界の関心はセキュリティにはなかった。重要なのはPC業界全体の成長だった。
Microsoftは10年前、セキュリティが欠如した将来が到来するのを予見できたかもしれない。しかしそうだとしても、方針を変えることはなかったかだろう。
今からちょうど10年前の1995年8月24日、米国の軍事力と16ビットOSが支配していた世界に、MicrosoftはWindows 95を投入した。
このOSは本当に世界を変えた。そしてその過程において、われわれはセキュリティが欠如したコンピューティングの世界に入ることを運命づけられたのだ。もはやこの世界から逃れるのは不可能なように見える。
Microsoftは当時、セキュリティに関してはほんの形だけの関心しか示さなかった。公平を期すために言えば、デスクトップ分野で有力な競合企業(当時はAppleとIBM)も、セキュリティという観念を持ち合わせてはいなかった。
それよりもMicrosoftが関心を抱いていたのは成長だった。つまりWindows 95をテコとしてPC業界全体を成長させることであり、この目標に関しては同社は見事な成功を収めた。
数年後には、それまでコンピュータとは無縁だった何千万人もの人々がWindows 95あるいはWindows 98が動作するコンピュータを使うようになった。
インターネットが破壊者や泥棒にとって安全な無法地帯になった最大の理由の1つもそこにある――犠牲者はそこかしこにいる。
10年間にわたるWin32時代を通じてユーザーが獲得した経験も、あまり役に立ってはいない。
Microsoft、そして(特に)Appleが望んだ通り、多くの人々は自分のコンピュータの中で何が起きているのか知ろうともしない。こういったユーザーは、何か調子がおかしくなると、それを直す方法を学ぼうとはせず、じっと座ったままコンピュータをののしるだけなのだ。
業界にとってさらに都合の良いことに、ソフトウェア構成に起因する問題に対して、新しいコンピュータを購入することで解決するユーザーもいる。筆者もそういったユーザーを見たことがある。
あの時期に業界が急成長したのは、単なる偶然ではない。Windows 95が登場した時期とコンピューティングベースの拡大期がたまたま重なったのではない。Windows 95/98のおかげで業界が拡大したのだ。Windows 95/98では、高機能なソフトウェアを開発したり、広範な新デバイスをサポートしたりするのがずっと容易になり、よりパワフルなコンピュータもサポートされたからだ。それに加え、それまで主流だったWin16の世界との互換性のレベルもかなり高かった。
しかしMicrosoftはWindows 95で数々の成果を達成しながらも、上で述べたように、セキュリティ問題に対しては無頓着だった。とはいえ、Windows 95の登場で従来のDOSウイルスの多くが消滅したのも確かだが。
Windows 95が出荷された当時は、Microsoftがインターネットの重要性にようやく目覚め始めたという段階であり、インターネットのセキュリティ問題などに気づく由もなかったということを忘れてはならない。
同社がInternet Explorerの開発のベースとするためにSpyglassのMosaicブラウザをライセンスしたのは、その少し前のことだ。
Windows 95の小売り版のディスクにはIEは含まれていなかった(OEM版のディスクには最初から含まれていた)。
ほとんどのユーザーは、IEのことを、だれにも使われることのなかった、あの役立たずの「Imaging」アプリケーションと同じようなものだと思っていたのではないだろうか。Webブラウザとはどういうものかを知っているユーザーであれば、Netscapeブラウザをダウンロードしたものと思われる(関連記事)。
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