多様化するデバイスソフト開発にWind Riverの解「DSO」のその後

ここ数年で、家電やPC周辺機器などコンシューマ向けの機器にVxWorksやLinux採用デバイスが増えている。一見してハードウェア機器に分類されるものでも、実は統合開発環境採用でソフト開発がオープンスタンダード化しているのだ。

» 2005年08月31日 15時36分 公開
[木田佳克,ITmedia]

 家電やケータイ、PC周辺機器、車載コンピュータ、産業用ロボットなどに搭載する組み込みソフトウェア開発は、比較的スクラッチの側面が強かった分野だといえる。しかし、主にコンシューマの目に触れるデジタル機器は多様性が増す一途であり、トレンド追従のためには開発環境の効率化が急務の1つとなっている。

 また、標準化、統合化が局所ではミドルウェアにまで及んでいるソフトウェア業界だが、デバイスソフトウェア開発でもWebアプリケーション開発環境と同じような波が訪れている。

DSOの現状についてを報告した米Wind River Systems、ケン・クライン会長兼社長兼CEO

 「デバイス機器であっても、差別化はソフトウェアで図る時代となった」。8月31日、米Wind River Systemsから来日したケン・クライン会長兼社長兼CEOからのコメントだ。

 ウインドリバーは組み込み系ソフトウェアベンダーとして知られているが、クライン氏は10か月ぶりに来日し、会見を行った狙いについてデバイスソフトウェアの業界動向と、「DSO」(Device Software Optimization)戦略について報告するためだと語った。

 DSO戦略は1年前に発表されているが(関連記事)、米国を始めワールドワイドでパートナーシップを築き、ガートナーのパイプサイクル予測にも「DSO」のキーワードが登場するにまで周知された、とクライン氏は強調する。

 ウインドリバーのこれまでのシェアについてクライン氏は、ワールドワイドに見れば主にネットワークデバイスに37%、航空宇宙分野へ24%、家電などデジタル機器では19%という割合だという。一方、日本では異なる傾向を見せ、デジタル機器が45%と抜きん出ているという。

 デバイスソフトウェア開発の課題についても触れ、現在でもまだ開発環境が分断されており、オープンスタンダードベースにはなっていない点を指摘した。その要因には、デバイス開発特有の、採用OSやチップの多様性があり、これらを吸収し統合開発環境を提供することで効率化を狙うべきだと語る。

 一方、開発の現場では、54%がスケジュール遅延、66%が予算超過、33%が要求仕様を満たせないという課題も抱えていると言い、今後も増え続けるデバイス機器のソフトウェア開発には、競争力維持に開発環境のスタンダード化が欠かせないものだと強調した。

 「従来は一から開発していたが、ソフトウェア基盤は購入する時代となった。これがDSOの要」とクライン氏

 ウインドリバーがオープンスタンダードを語るその根底には、同社がEclipse Embedded Marketing Workgroupのリーダーであり、Deveice Software Development Platform(DSDP)プロジェクトに8人が参画するほどのEclipseコミッターであることも理由だ。

 同社では、2つの大きなエディションラインVxWorksとLinuxをラインアップしているが、共通の「Workbench」と呼ぶEclipseフレームワークをベースとした開発環境を提供している。それぞれは、比較的応答性を重視するデバイスにVxWorksを、ネットワークを始め多様な周辺デバイスをサポートする向きにLinuxを、と位置づけている。それでも開発環境のインタフェースは基本的にいっしょだ。

 さらにクライン氏からは、採用事例として車載向けプラットフォームについても触れられた。これまでに日産やBMWなどへの提供事例があり、これらの車載コンピュータでは、最適化が重視されているという。すぐにでも開発に取りかかれるよう搭載環境のデバイスサポートも欠かせないものだという。

 VxWorksで先行した同社であったが、Linuxをサポートしたことにより、VxWorksの出荷数も伸びていると語る。「6.1の出荷数は150%延びた」とクライン氏。この分析について同氏は、Workbenchによる統合開発環境の実現が理由の1つだろう、と語った。

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