株式会社が作成すべき営業報告書の記載内容企業が知っておくべき法律知識(2/2 ページ)

» 2006年01月18日 11時56分 公開
[第一法規]
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1.営業の概況

(1)営業の成果および経過

 日本経済ないしは世界経済の動向などの概括的な経済状況から記載を始めることが多く、その後会社が属している業界、業種の動向、その中での会社の販売の状況などに論点を掘り下げていきます。営業が部門別に分かれている会社は、部門別に売上高、受注高などを記載します。

(2)資金調達の状況

 重要な増資や社債発行、借入の状況などがあれば記載します。

(3)設備投資の状況

 重要な設備投資があれば記載します。

(4)対処すべき課題

 会社が取り組むべき主要課題があれば記載します。

(5)営業成績および財産の状況の推移

 表形式で過去3年以上(実務上は多くの会社が過去3年です)の営業収益、経常利益、当期純利益、一株当たり当期純利益、総資産、純資産などについて記載していきます。記載している項目が著しく変動している場合は「その説明」を脚注に記載します。

2.会社の概況

(1)主要な事業など

 会社の事業内容について部門別に記載します。従来は定款に記載している会社の目的と同様の極めて簡潔な記載も目立ちましたが、主要な製品やサービスと関連づけて分かりやすく説明している事例も見受けられます。

(2)主要な事業所および工場

 主要な事業所について所在地別に記載していきます。

(3)株式の状況

 株式や大株主の状況について記載していきます。「自己株式の取得、処分などおよび保有」や「新株予約権に関する事項」について該当する項目を記載すべき会社は、この株式の状況に併せて記載すると良いでしょう。

(4)従業員の状況

 期末の従業員の状況(人数、前期末比増減、平均年齢、平均勤続年数など)について記載します。

(5)企業結合の状況

 重要な子会社の状況について、その名称や資本金、議決権比率、主な事業内容などについて記載します。企業結合の経過として、親会社の交代、他社との合併、重要な子会社の設立や買収などがあれば記載します。また、企業結合の成果として、連結ベースの売上高や当期純利益の状況などを記載します。連結数値が間に合わない場合は、単純合算ベースや未確定数値によることも認められますが、実務的にはこれらの数値を記載する会社は少なくなってきています。

(6)主要な借入先

 銀行などからの借入れがあれば記載します。

(7)取締役および監査役

 営業年度末の取締役および監査役の地位や氏名、担当または主な職業について記載します。表形式で記載する会社も多く、当営業年度中の異動について脚注に記載します。

(8)決算期後に生じた会社の状況に関する重要な事実

 決算期後に生じた重要な後発事象があれば記載します。なお、この項目については、該当する項目がない場合も記載を省略するのではなく、該当事項がない旨(つまり重要な後発事象がない旨)を記載している事例が多く見受けられます。

●参考法令など
商法281条(計算書類・附属明細書の作成・監査)
商法施行規則103条(営業報告書)
商法施行規則104条(特例会社の特例)
商法施行規則105条(連結特例規定適用会社等の特例)


ワンポイント:会社区分などに応じた営業報告書の記載内容

 従来、商法上は株式会社は大中小の3区分しかありませんでしたが、ここ数年で商法改正が続いて行われており、その3区分に加えて、米国型とも言われる委員会など設置会社の制度が創設されるとともに、みなし大会社や大会社連結特例規定の適用会社などと会社区分が細分化されました。また、取締役や社外取締役の責任軽減の制度が導入されたことなども併せて、営業報告書の記載内容もそれぞれの会社区分別などに応じて規定が置かれるようになりました。例えば、取締役の責任軽減の制度を導入した会社は取締役などに支払った報酬などを営業報告書に記載しなければなりませんし、連結特例規定の適用を受ける会社は会計監査人などに対する報酬などを記載しなければならなくなりました。委員会など設置会社においては、監査委員会の職務遂行のために必要な事項や取締役・執行役の個人別報酬の内容の決定に関する方針を記載しなければなりません。したがって、それぞれの会社区分などに応じた記載がなされているか留意が必要です。

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