GNU Free Documentation Licenseとしてリリースされるマテリアルが、Debian Free Software Guidelinesと両立できることにDebianの開発陣が賛成票を投じたことは、GFDLの関連プロジェクト内部で燻り続けていた従来からの懸案事項に決着をつけることになるだろう。
誰もが驚かされたのは、GNU Free Documentation License(GFDL)としてリリースされるマテリアルが、Debian Free Software Guidelines(DFSG)と両立できることにDebianの開発陣が賛成票を投じたことだ。最も変更不可部分を含まないという条件付きではあったが。この決定は、GFDLの関連プロジェクト内部で燻り続けていた従来からの懸案事項に決着をつけることになるだろう。今回の決定では、その大部分が無条件にGFDLを受けて入れているほかのフリーおよびオープン・ソース・ソフトウェア(FOSS)プロジェクトに対し、Debianの位置づけについては依然として明確な一線を引いてはいるものの、将来バージョンのライセンスによってはDebianが完全に受け入れる可能性を残したものである。
この決定が衝撃的だったのは、多くのDebian陣営の主要メンバー、というか口うるさいメンバーたちは、ディストリビューションの正式リリースに何を同梱すべきかの基準としてDebianが採用しているDFSGはGFDLと相容れない存在である、と長年にわたって主張し続けてきたという経緯があるからだ。
実際これまで同プロジェクトは、GFDLライセンス下にあるマテリアルを排除するための準備を、半ば公的に進めてきた。問題のマテリアルの中には、FSF、KDE、GNOMEプロジェクトのマニュアルおよびオンラインヘルプの大部分が含まれている。例えばDebianの最新リリースであるバージョン3.1(Sarge)にはGFDLのマテリアルが含まれているが、Debianプロジェクト・リーダを務めるブランデン・ロビンソン氏は、次回リリースからはDebianリポジトリのメインセクションから取り除かれることになるだろう、と発言していたのは昨年夏の話である。通常こうした変更は、GFDLに属すパッケージをリポジトリのnon-freeセクションに移すことで行われるはずである。ところがパッケージ・メンテナーたちはこの意味を、メインセクションにパッケージを維持するためドキュメントを削除することもありうる、と独自に判断した。
2003年にDebianプロジェクト書記を務めるマノジュ・スリバスタバ氏により準備され、Debian開発陣により注釈付けされたポジションステートメント草案によると、GFDLとDFSGは後記の主要な3点において相容れない存在であるとされている。
今回の投票結果からは、DebianによるGFDLの拒絶は不変マテリアルの存在こそが主要な原因であったことが伺える。開発者の中には、GFDL とGNU General Public License(GPL)の両者を相容れないものにしたのは不変セクションというコンセプトのせいだ、とまで極論する者も多い。
Free Software Foundation(FSF)をめぐるDebian側の議論は、すでに3年にわたっている。その一方で、プロジェクトの多くのメンバーはこうした経過に関心を失ってしまっているのも事実だ。なぜこの問題は最終的に投票にかけられるようになったのかという質問に対して、スリバスタバ氏は「しびれを切らしたんですね。というのも……、当初はせいぜいが数週間から数カ月で決着するだろうと思っていた問題に対して、状況は進展しつつあるのでしばらく待機していてくれと言うリポートが入るだけで、何らの目に見える成果が上がらない状況が続くというのは、フラストレーションが溜まるもんですよ」と答えた。さらにスリバスタバ氏は、多くのDebian側のメンバーが到達した意見として、討論は続けられている一方で、GFDLを起草したリチャード・ストールマン氏がライセンスの変更問題に対して何らの寄与もしていない、と考えが広まったと言う。
スリバスタバ氏によると、今回の件は大部分のDebian開発者にとって「FSFの人間に遠慮して譲歩するために、一方の原則をいつまで曲げ続けなければならないのか、ということが問題の本質なんですよ。リチャード(ストールマン)氏は原則に則しているんでしょうけど、それはDebianプロジェクトも同じです。たまたま両者は、GFDLのフリー性をどう見るかという点で意見を異にしているだけです」とのことである。
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